胸に手を置かれたら、朋也くんのことしか考えられないじゃん。ー無気力系後輩がグイグイ来るのは想定外でしたー

茜琉ぴーたん

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4…胸が高鳴る

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 ドクドク、心臓が高鳴る。

 バスマットに水滴が落ちて、両足を揃え洗面所の鏡に自身を映す。

 化粧っ気の無い顔、小ぶりな胸、細い体。

 私は女だから分からないけど、本当に矢向くんは私に欲情してくれるだろうか。

 抱き締めたいとか舐めたいとか挿れたいとか…欲してくれるだろうか。

「ふー」

ハードルが上がるのも困るしな、扉の無いベッドルームとの境目におずおず立つ。


「と、朋也ともやくん、次、シャワーどうぞ」

「うす…」

寝そべっていた矢向くん改め朋也くんはゆっくり起き上がり、私をチラと確認した。

「な、なにか」

「…いえ、案外…薄着は見慣れてたんで、新鮮味はそんなっすね」

「失礼だな…」

 確かにTシャツ短パン姿でヨガとかしてたもんね、これは私の日頃の行いが悪かったか。


 気張り過ぎをみっともなく感じて、壁沿いにベッドルームへ入る。

 通路を開けねば朋也くんが脱衣所に入れないと思ったからなのだが…彼はベッドから立ち上がりはしなかった。

 それどころかまたばふんと体を倒して、顔だけ持ち上げ私と目を合わせる。

「…なんすか、来て下さいよ」

「いや、朋也くんのシャワーが先だよ」

「美紀さん抱くのが先っすよ」

「何を言って…」

「美紀さん、」

朋也くんは、天井を向いたまま両腕を大きく広げた。

 そこに収まれってことなの、まるで罠みたいだ。


「……う、ん」

 美味しそうな花の蜜に惹かれるみたい、足がすすと動く。

 初めてでもないのに緊張しておかしい、でも焦らしたって仕方ない。


「……あったかいっすね」

押し倒すみたいに被さった私をギュッと捕まえて、朋也くんはそう呟く。

「お、重くないかな」

「全然。細いっすもん…あー、抱き心地良いな」

「…あ、抱くってそっちの抱く?抱き締めるって意味の」

「んな訳ないでしょ」

広いベッドを広く使い、朋也くんはごろんと体勢を入れ替えた。

「きゃ」

 シーツを見ていたはずなのに天井が現れて、前髪の垂れた新鮮な朋也くんに押し倒されている。

「ちゃんと、見せて下さいね」

 バスローブの腰紐を解いて、ご開帳とばかりに両手でそれぞれフチを掴む。

 そしてゆっくり開かれて…朋也くんは口の端だけ笑った。
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