胸に手を置かれたら、朋也くんのことしか考えられないじゃん。ー無気力系後輩がグイグイ来るのは想定外でしたー

茜琉ぴーたん

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6…胸を張る

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 順調に同棲は続いて1年。

 私たちはひとつ歳をとって、お互い結婚への意識が高まっていると感じる。

 お互い、というか朋也ともやくんからその兆しをヒシヒシと感じるのだ。

 故郷へ私を連れて行きたがったり、私の実家に行きたがったり。

 「夜景は好きっすか」「サプライズってどう思います」などと直接私に尋ねてみたり。

 私はいつその日が来るんだろうと、ただのデートでも気が抜けない。

 
 そんな冬の休日の午後。

美紀みのりさん、年も明けたしそろそろ入籍しませんか」

 ホットコーヒーをひと口含んで、朋也くんが尋ねる。

「…『醤油取って』みたいな感覚でプロポーズしたね」

「気取らない方が良いのかと思って。どうでしょうか」

「サプライズはどうしたの」

「苦手って言ったからやめましたよ。ジブンが洒落たことしたら笑うでしょ、絶対」

「うん、たぶん笑う」

「ほらね」

 朋也くんは不本意そうに、戸棚から紙の封筒を抜き取ってテーブルへと置いた。

 中身は言わずもがなの婚姻届、書き損じを恐れて3枚も同じものが入っている。

「…良いの?私で」

「美紀さんが良いっすね」

「癒しパワーも無い、ムードも無い女だよ?」

「ジブンは一緒に居て楽しいんすけど」


 同棲を始めた時点で覚悟はしていたけど。

 なんだかんだ過ごしやすくて、でも女性扱いしてくれて嬉しいけれど。

 一応これも言っておいた方が私らしいかな、

「胸も小さいけど、良いの?」

 と付け足すと朋也くんは無視して婚姻届を記入し始める。
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