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6…胸を張る
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しおりを挟む衣装室では係の方々が笑顔で迎えてくれて、しかしその全身に疲れが滲んでいた。
おそらく、澤條さんへの対応で満身創痍なのだろう。
しかし待たせてしまった負い目で私にもすごく気を遣ってくれる。
「エクステとか付けてみます?」
「いえ、このままで良いですよ」
「気に入ったドレス、全部着てみましょう」
「1着で大丈夫です」
あくまで試着だし、待ち時間が長くてちょっと萎えてしまった。
たぶん澤條さんはここでも自撮りやら何やらを繰り返したのではなかろうか、試着室のひとつからはみ出るようにこんもりと選外ドレスが盛ってある。
じいっと眺めていると、衣装係さんは「前の方は沢山試されたんですよ、お客さまもいかがですか」と勧めてくれた。
澤條さんは着せ替えをしては自撮りを楽しんだのだろう、SNSにでも投稿するのかもしれない。
「カラードレスもお試しいただけますよ」
「白いので良いです」
「お写真、お客さまのスマホでもお撮りしますからね」
「私は自分の写真はあまり撮りませんので…」
スタッフさんはこんなことで顧客を逃してなるものかと奮起してくれるが、やはり婚約者の元カノとの遭遇は気分の良いものではない。
元々が本命の会場じゃないしな、やる気に関してはこちらの問題なので最低限の礼を払い終わらせてしまいたかった。
「ホルターネックの、エンパイアタイプが良いんですけど」
私とて不勉強ではない。
胸の小ささをカバーするスタイルは心得ている。
スレンダーで長めの手足を美しく魅せる縦長のラインを強調、胸元を気にしないホルターネックが私にはピッタリだ。
デコルテを隠す代わりに背中は出して構わない、朋也くんも「これが良いっす」と太鼓判を押してくれたし。
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