胸に手を置かれたら、朋也くんのことしか考えられないじゃん。ー無気力系後輩がグイグイ来るのは想定外でしたー

茜琉ぴーたん

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6…胸を張る

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「これ、見て下さいよ。アイツのSNS」

 夕飯後、朋也くんが私にスマートフォンを差し出す。

「…アカウント、知ってたの?」

「いえ、本名で探したら、すぐ出て来ましたよ」

「あー、すごい度胸………うわぁ…」


 澤條さんの最新投稿には、今日の式場で撮った写真が載せられていた。

 彼氏と手繋ぎで移動、食事、式場の玄関、チャペル…まるで本物のカップルの結婚式場レポートみたいに、しっかり詳細まで書かれている。

 ここだけ見れば澤條さんは婚約中の恋人と来たんだな、と誰もが疑わないだろう。

 実際にはお情けで付き合ってくれたレンタル彼氏を振り回し、会場へ無理を通したワガママ女だった訳だが。


「レンタル彼氏さんも少し…見切れてますね」

「うん…あ、顔は隠してあるけど全身写真も…これが撮影料ってやつか…本物の結婚前カップルに見えるね……あ、他の式場も既に見てるんだ」

「虚しいっすね…いや、幸せなのか」

「んー…でも朋也くん口説かれてたから、満たされてはないのかも」

 私を貶して優位に立とうとしたくらいだから、精神は満たされてないのだと思う。

 しかしあの感じでよく朋也くんは交際できてたな、ちょっと感心してしまった。

「アイツも色々と経験したんでしょうね…前はまだ可愛げがあったように思うんすけど…今となっては黒歴史っす」

「うん…」

「美紀さん、あの場でガツンと言い負かせなくてすみませんでした。ジブンは誰が何と言おうが、美紀さんが一番可愛くて素敵な女性だと思ってるんで」

「ありがと…比較的?」

「…絶対、っすよ」

 朋也くんは疲れた様子で、ソファーにごろんと横になる。

 私は隣に座り、借りたスマートフォンで彼女の結婚式場レポを遡っては読んでみた。


「(…澤條さん、筆記だと文章力が上がるんだな…フォロワー数も多いし、コメントもイイネも多い)」

 喋り言葉は壊滅的だった澤條さんだが、文学的なセンスはあるようだ。

 形式に沿った説明をしながらも、テンプレートなどは使わずに毎回異なる表現で式場なりブライダルエステなりを紹介している。

 結婚式場巡りの前は映えるデートスポットや景勝地をレポートしていたようで、どの投稿も『参考になりました!』『今度彼氏と行きます!』と可愛らしいコメントが付いていた。

 私もつい読み込んでしまったし、参考にせざるを得なかった。
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