彼女の欲望に寛容な彼

あかね

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 そして次の休みに隣市のデパートでシルバーのアタッシュケースを買い、そこにクッション材を詰めて彼女の宝物庫としてあげた。


 真波は以来それを開いて玩具コレクションを見せびらかし、

「どれでシてるのが見たい?」

と伊東に尋ねては

「どれでもええわい」

と塩対応されている。





「お前さぁ、親とかどうしとるん?」

 並んでテレビを観ながら過ごす午後、伊東がふとそんなことを尋ねれば

「んー、たまに連絡しとるよ」

と真波はサラリと答える。

「…突然娘が帰って来んなったら心配するじゃろ」

「そうでも…ない。元々放任でな、好きにしたら~って感じよ……てか今日まで聞かんかったね」

「ん…なんかあるんか思うて」

 ある日を境にいきなり外泊が増えて荷物を持ち出すようになれば普通は親だって気がかりになるだろう。

 一度挨拶でもとは思ったが真波は実家について何も言わないので怖くて聞けなかったのだ。

「ふふ…そんな深刻じゃないよ、ヒロアキの親は?てか実家は?」

「実家は愛媛よ。ギリ広島寄りの…なんとなくこっちに来て就職した」

「ふーん…あの日はなんで合コンに来たの?」

「…ぼちぼち彼女とか作ろうか思うて」

「性欲薄いのにぃ?」

「お前が強過ぎるんじゃ…」

 現に交際最初の1週間は自分主導で抱いてやった。

 今では月に一度有るか無いかくらいだがこれでも真波のことは好きだし「抱きたい」と強く思う夜だってある。

 そんな時に跨ろうとする彼女を制して組み伏せると真波の意外そうな顔が可愛いのだ。

 たまにそのリアクションが見たくて押し倒したりするのが楽しくていけない。





 交際5年を過ぎたある秋の日。

 既に帰宅後すぐ1発抜かれていたものの伊東は珍しく自分から真波を誘う。

 数分前の夕食時に伊東は真波へプロポーズをして、OKを貰い気分が高揚していたのだ。

 アラサーと呼ばれる歳になり1日に2回以上致すこと自体が最近では稀だったが、ここぞという時は男を見せたいと思った。

 プロポーズをした後から真波が機嫌良く家事をする姿が堪らなく愛しかった。


「マナ、来いや」

「なに…わ、どしたん?」

「抱かせろや…婚約初夜じゃ」

「え♡やだ嬉し…待って、まだ炊飯器仕掛けてない」

「ほんならそこで」


 シンク上の蛍光灯に照らされた真波のうなじが美しい。

 突く毎に釜の中がちゃぷちゃぷぱらぱらと踊って溢れそうになって、そこは無駄にしたくないと彼女は懸命に米を守る。
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