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15章…まるで人間
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しおりを挟むさらにそれから5年経って…和臣さんは国会議員選挙に出馬し、入れ替わりに伸夫先生は地盤と支持者を引き継がせて早めに政界を引退なさった。
私もよく見知っている秘書を和臣さんに付けてサポートさせて、私はただ妻として後援会事務所に顔を出したり食事会をしたりと懇親に努めた。
その甲斐あってか和臣さんは無事当選、しかして地元を離れる訳にもいかず彼だけ永田町へ単身赴任だ。
『聖良、寂しい』
「そうですわね、私も寂しいです」
『また子供たちとこっちに遊びに来てくれ』
「えぇ」
私は城廻家にてご両親と共に子育てに追われて、たまに支援者の方とお茶会を開いたりしては有意義に過ごしている。
伸夫先生は自宅の一部を開放して書道教室を始め、僭越ながら段位の高い私が筆頭として子供たちに毛筆や硬筆の手ほどきをさせて頂いている。
奥さまは月に何回か料理サークルみたいな集まりを開催、調理師資格を持つ私もサポートとして入って…要は何かと役立ててもらっていた。
「聖良ちゃん、次は何を作ろうかしら」
「聖良さん、段位試験、何人か受けさせようかな」
「お母さん、明日の試合、お弁当は唐揚げとおにぎりにしてよ」
「おかあさーん、みて、ツルおれた」
「はいはい、あ、凄いのね、うん、唐揚げにおにぎりね、お母さん、お素麺の変わり汁とかどうでしょう、お父さん、名簿に予定を貼ってありますわ」
頼られて必要とされる喜びは私をより生き生きとさせてくれる。
昔は秘書としての活躍を思い描いていたけれどこっちの人生も悪くない。
いや、悪くないどころか実に望ましくて…失うのが恐いくらいに幸福を感じる。
たまに帰って来る和臣さんとそんなことを話してはきつく抱き締めてもらって、
「聖良はうちの大将だね」
なんて褒めて?もらうのもお決まりの流れだ。
応援ありがとうございます!
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