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Capitolo1…Cigno
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しおりを挟む1学期が終わって高校最後の夏休み。
僕は市内の甕倉産業大学…通称『カメサン』のオープンキャンパスへと出掛けた。
近場の大学の中では割と古株というか歴史もそこそこ長くてネームバリューもある、県内で就職する分には充分な学歴になる。
長い坂を登って門を入れば青々とした芝生が広がっていて、学祭の時にはそこにステージを設営してイベントなど催すらしい。
貰った構内マップを見ながら一番近い建物へ、少し無謀だがこの広い敷地内で僕は人探しをする。
目当ては姉の彼氏、『イマイズミタイキ』くんという熊のような大男だ。
大学名と学年の情報は入手したものの学部も顔も漢字も不明、姉はどうしてもそれ以上教えてくれない。
まぁ何で知りたいかって興味本位でしかないから教えてくれないんだろう。
でも兄弟の恋人を見てみたいってそこまで変わった欲求じゃないと思うんだ。
姉は奥手だから変な男に捕まって食い物にされてしまうと可哀想、美しい見た目を売りにアクセサリーみたいな扱いをされたりなんて考えると哀しい気持ちになってくる。
だからどんな男か見ておきたいんだ。
姉の話ではレディーファーストが出来て優しくて謙遜屋で男前だと聞いている。
先に会った父は「古臭い顔」とも言っていたが、要は日本人らしい顔ということなんだろう。
僕はとりあえず在学生に『イマイズミタイキ』を知らないか尋ねてみたが、オープンキャンパスに係員として出ているのは主に1年や2年生で4年生の情報は詳しくないみたいだった。
まぁ学生数もそれなりだし名前だけでは無理か。
ならばと「金髪美女を連れている男を知らないか」とも聞いてみたが結果は同じで…姉も数回ここに出入りしているらしいしデートの目撃談などあるかと思ったのだが有力な情報は得られない。
これは考えが甘かったな、3学科回って暑さが辛くなってきた僕は、芝生広場の真ん中にある学食へと向かった。
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