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2019…茶色い弁当
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しおりを挟むその夜。
俺は帰宅して弁当箱を美晴へ渡し、
「美味かったよ、詰め方が芸術的だった」
と妙な褒め方で笑わせる。
「えへ…次はもっとたくさん入れるね」
「…美晴、俺は3個がベストだと思うよ」
「あ、そうなんだ…ごめんなさい」
「良い…着替えて来る」
これが10代20代ならぺろりといけただろうに、もう油が胃にキツいのだ。
さらに言えば揚げたてならまだしも2日目のしんなりした衣がべちゃっとして辛かった。
美晴は量や時間が決まっていればその通り出来るのだ。
だからほぼ冷凍や業務用食品に頼っているカフェコーナーでも充分働けている。
細かいミスがあったり気が回らなかったりするがそこは皆でカバーしてもらってるみたいだ。
多少は『フロア長の妻』という肩書きに助けられているようだが致し方ない。
着替えて戻るとオーブントースターがチンと鳴っていて、美晴があちあちとコロッケを皿へ出しているところだった。
「(またコロッケだ…)」
ちなみに揚げ物をトースターで焼くというのはかつて「こうしてくれ」と俺が教えたからで、各人の好みや趣向は習慣付いているので美晴も難なくこなして失敗もしない。
少し焦げ目の付いたコロッケを載せて「はい、」と食卓に置く嫁の可愛いこと。
この感情は直接伝えたりしないが家庭はそれなりに円満なのであった。
「いただきます…ん?とうもろこしだ」
「そう、とうもろこし入りもあったみたい」
「みたい、って…うん、美味い」
「良かったぁ…」
はてランダムに封入されているのか種類の違うものも買ってしまったのか。
しかし俺にとってはそんなことはもうどうでも良くてただ風味の変わったコロッケに舌鼓を打つ。
昨日のコロッケはこれで品切れだろうか、また次にコロッケパーティーを催す時はお隣さんにあげたりしよう。
翌日の弁当に期待を抱いて晩ごはんを平らげた。
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