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2019…茶色い弁当
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しおりを挟む「(よーし…午後からも頑張ろ…)」
大きく伸びをしてカラカラとキャスター付きの椅子をデスクに収め売り場へと降りる。
すると少し前に降りたはずの宮前がバックヤードの入口で俺を待ち構えていた。
「津久井フロア長、さっきの、バイトの鐸木さんに向けて言ってました?」
「もろにそうね、さすが店長は勘が良い」
「…奥さんが言われたってことですか?」
「言った通りよ。弁当の茶色さを馬鹿にされたんだとよ…人に言うみたいな形で間接的にね、だから俺も間接的に返してやったんだ…巻き込んで申し訳ない」
「いえ、それは構いません……はぁー、学生バイトさんは重宝するんですけど、ハズレも引いちゃうんですよねー」
「学生気分でグループ組んじゃうのな、まったくガキは……なぁ、俺、さっきのハラスメントになるかな?」
「なりませんよ、特定の人に言ったわけじゃ…ないでしょう?」
「もちのろんよ」
「なら、大丈夫でしょ」
ごにょごにょと話をしつつ売り場への扉を抜けて、その後店内巡回でレジに居る鐸木を見たが、俺を確認すると目線を逸らしていたので効果はあったのだろう。
嫁の仇を夫が討つ、美晴はそんなことを望んではいないだろうが…こうして妻のモヤモヤをこっそり解消してやるのを俺はヒーローみたいでカッコいいと思っていた。
この件に関しては嫁に報告もするつもりは無い。
数日後に「最近どうだ」と聞いてやって問題ないようであればそれで良いのだ。
過保護だと笑われるだろうし嫁の喧嘩に夫がしゃしゃり出るのはみっともない。
しかし美晴に非が無いことなら俺は持てる力の範囲で叩き潰す覚悟がある。
これが俺なりの愛情表現のひとつ、達成感を胸に持ち場へと戻った。
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