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2010…母親学級バトル

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「親父もお袋も孫の誕生を楽しみにしてる。姉ちゃんもな…関係無い奴の言葉なんか知るもんか、んなことで美晴が悩むことねぇよ」

「……ありがと、浩史くん…話して良かった」

「他には無いか?言われたこと」

「んー、髪型、『お洒落に手が回らないのね、可哀想。私なら…』って。その日は浩史くんがくれたお気に入りのシュシュだったんだけどなぁ」

「…容姿に言及するとはけしからんな」

 絶対可愛いだろうが。

 場違いなファンシーショップの店先で子供を抱っこして長考して吟味したシュシュだぞ。

 美晴の小さな頭に大ぶりなフリルが似合うと思ったし実際似合うんだ。

 毛量の豊かな黒髪に映えるカメリアピンク、『気取らない優美さ』を花言葉に持つ椿の名を冠する色だ。

「ひとつくくりが野暮ったかったのかな、楽で良いんだけどな」

「…ほ、他には無いか?」

「服も言われたかな、『世帯じみてるわね、私の服はどこどこのブランドの~』って」

 最近の美晴はもっぱらファストファッションで、しかし余計な飾りが付いておらず肌触りの良いものを選んで着ている。

 抱っこしても子供の顔を傷付けないシンプルなデザイン、万が一汚しても普通の洗濯で良いしサイズも豊富なので俺もペアで同じものを揃えている。

 照れるので外では着ないが。

 そのママさんの指す服はマタニティ専門の洋服ブランドなのだろうか、それこそ「お好きにどうぞ」というものだ。


「あー、下品だなぁ」

「かーくんと遊んだりご飯のお世話してると汚れるし、気兼ねなく洗えて助かるんだけど…好みはそれぞれだよね」

「そんだけか?あるなら吐き出しとけよ」

「んー……お化粧が素っ気ないとか。そりゃね、昔みたいにケバケバしたお化粧はもうしないよ。かーくんが触るしね、ネイルもしないし、浩史くんと出掛けるならそれなりにするけど…検診の日は顔色も見たいって言われてて、日焼け止めと眉毛描くだけにしてたから、余計に質素だったかもね」

「ふん。正解だよ、TPOに見合った格好をするのが大人だ。化粧品の匂いで他のママさんが体調悪くするかもしれないしな…美晴は間違ってない。まぁ派手な化粧をしたいママさんはすりゃ良いさ、してない人にわざわざ言うのが間違ってる…もうこれだけか?」


 もう聞くだけ馬鹿馬鹿しい、これでは美晴が黙っていたのも頷ける。

 ひとつひとつは小さなモヤモヤだしトピックとして取り上げても「そんなことか」といなしてしまいそうだ。

 しかしここまで重なれば相手さんの悪意を確かに感じる。

 そしてまだ秘めたものがあるみたいだ。

 美晴はしゅんとなり俺のパジャマの脇の下に鼻先を挿してため息を吐いた。
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