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2010…母親学級バトル
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翌日。
産前産後は俺の実家にお世話になることに勝手に決めた俺は、仕事帰りに訪ねてお袋に不手際を詫びつつも頭を下げた。
家賃プラス手間賃はもちろん払うし出産祝いも要らない。その代わり仕事で不在の間の美晴を助けて欲しいと言えばお袋は「まぁやれる範囲でね」とため息を吐く。
お袋はシャキシャキ家事も仕事もこなすできた主婦で、正直ゆるゆる家事の美晴とは相性が悪いのだ。しかしそれはあくまでこと家事に関する部分だけ、美晴は困ればすぐお袋を頼るし「すごい、お母さん!」と何でも褒めて尊敬しているし、関係自体は悪くない。
けれどもたもたしてお気に入りの鍋を焦がしたり溢してマットにシミを作ったりされるのが苦痛で、同居時はお袋だけがストレスを溜めてしまっていたようだ。もちろんその点は後で聞いて謝罪したし反省した。
人間の好き嫌いではなく、生きるリズムやスピードが異なるのだ。それはお袋も分かっているから美晴を責めたり無理に改善させようとしたり強いたりはしなかった。
今回もまた同じことになるかもしれないが、美晴にはもう実家の台所には立たなくて良いと取り決めてある。かーくんも乳離れして大人とほぼ同じ材料の食事で事足りているから工程を分ける手間もそう要らない。もし一時同居が無理なら週末に料理の作り置きストックを作ったり衛生面のチェックをしにうちに来て欲しい。出張費も出すからとペコペコお願いした。
それでも「他所様の家事に口出ししたくないわよ」と渋るので最後の一手、
「お袋、シーツが汚れるくらい噴くんだってな」
と過去に垣間見た親父との情事後の一面を暴露したら瞬間張り手が飛んできて俺の眼鏡が宙を舞った。
「阿呆!何言ってんの!」
「お願い、人にバラされたくなかったら」
「誰が私のそんなこと知りたがるのよ」
「世の中には熟女マニアとかいるんだぜ」
「こんのド阿呆が…」
胸倉を掴まれて恥辱に満ちた母親の顔を親父譲りの顔で睨んでやる。眼鏡が無ければ面影が濃くなるらしいから効果はあると踏んでいた。
「親父は尋ねればホイホイ話すぞ、酒を呑ませりゃ特に喋る。お袋と親父の初夜の感想なんか聴きつつ呑む酒はどんな味がするだろうな?」
「あんた、聴きたいの?」
「聴きたかねぇよ、でも親父は簡単に話すぞ、っつってんだよ」
「どいつもこいつも下衆だね」
そして「ネット掲示板に顔写真付きで書き込むぞ」「美晴に話して気まずくさせるぞ」などと揺さぶって非道の限りを尽くして…なんとか「分かったわよ」のひと言を頂きひと安心する。
「ストレスを溜めたら俺を殴ってくれ、これだけ条件があるんだから殴ることに罪悪感を持たないだろ…悪いと思ってる、でも俺も美晴を守りたいんだ」
「…闘い方が間違ってるよ」
「俺はこんなことしか出来ねぇ…お袋から提案した体にしてくれ。俺が頭下げたなんて絶対言うなよ」
「あんたも私に弱みを見せんの?」
「俺のは最悪バレたって構わん。お袋の初夜話に比べれば……あ、」
ばちんと歴戦の手相に頬を打たれる、帰宅した俺の頬を見た美晴は蒼白になり驚いて、救急車を呼びそうなくらい慌てふためいていた。
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