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2010…母親学級バトル

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「どうやって?」

『スーツ着て、良い靴履いて、威厳とか放っちゃえば?』

「姉ちゃんも知ってると思うけど、俺、不機嫌顔だぞ」

『まぁ知ってるけど』

 眼鏡だがものを見る時に目を細める癖、荒れた眉毛、仏頂面。

 不細工ではないと自負しているが、美晴と並んで美男美女と称される様な見た目ではない。

 これは影武者でも雇うしかないか、職場のイケメンを見繕っていると姉はさらに情報をくれる。

『眉毛整えて小綺麗にして行きな。嘘つくことは無いけどさ、そういう人を落として上に立った気になってる奴ってさ、何か満たされてないことが多いんだよ。コンプレックスを自白してたりするもんよ』

「自己紹介ってやつか」

『あくまで可能性のひとつだけどね。後期の母親学級って産後の生活プランとかでしょ、浩史がやってきた育児とか美晴ちゃんのケアとか、多少盛って良きパパアピールしちゃいなよ』

「大金持ちで何でも持ってる奴かもよ?」

『それで人を虐めるならどうしようもない真正クレイジーだよ。なおさら相手にせず無視しちゃえば良い。同じ土俵に立ってやることないよ』

「そうか」

確かに根からおかしい人と関わればこちらが疲弊し削られていくだけだ、対抗せず逃げるのも美晴の安全のためか。


 礼を言い電話を切った俺は同級生が経営する理容院・『バーバーやつい』へと赴いて、「おい、やっつん、イケメンにしてくれ」と頼み込んだ。

「いつもは揃えるだけなのに、なんかあったの?」

「…嫁さんに釣り合うようになりてぇんだよ」

「べっぴんの美晴ちゃんに?なーにトチ狂ってんだよ、不機嫌顔が」

「いいから、爽やかにしてくれ!」


 「そんなオーダーねぇだろ」と言いつつ店主・やっつんはいつもより時間をかけて短く散髪してくれた。

 雰囲気も顔色も明るくなればまだ俺も捨てたもんじゃないなと思わせてくれる。

 眉は短く切り揃えて要らない所を抜いて、キリッと尖った感じの良い眉にしてもらうと顔全体もシャープに締まった気がした。

 「何かイベントでもあるのか」と問われれば「ママ友退治だよ」と答える。

 やっつんは腑に落ちない顔をしていたが俺は本当にそれくらいのつもりで準備をしている。


 それからついでに眼鏡屋へ走り、軽くて流行りのフレームに買い替えた。

 お袋に弾き飛ばされた拍子に傷付いたしちょうど良い機会なのだ。

 最近のレンズは度数が高くても薄く軽いから非常に助かる。
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