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1・負けず嫌いのめぐとめぐ
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しおりを挟むさて後日、私たちは同棲するべく不動産屋に行き、数軒の内覧をして相応しい物件を契約した。
親同士も旧知の仲だし反対もされず、事実上の婚約という形で同棲が始まった。
それぞれにデスクを持ち、寝室は同じに。
家事は分担しながら、入籍はいつにしようかなんて相談している。
トントン拍子にことが進んで、幸福感が置いてけぼりになっている気もする。
しかし毎日周とひとつ屋根の下で顔を合わせ、共に暮らし、親密度はグッと増して…愛される量も桁違いに増えた。
「ぐッ…もォ、入んな…い…」
「へばんなよ、入るだろ」
ほぼ毎晩セックスするようになり、周は少し言葉遣いが荒くなった。
元々が男ばかり4兄弟で大人しくはないのだが、普段は努めて良い子そうに振る舞っていたそうだ。周は三男坊で、上2人と過ごすうちに要領の良い立ち回りを覚えてしまったらしい。兄の失敗から学び、兄の叱られから悟り。弟が生まれてからは愛される行動を覚え、遠慮を身に付け。言い方が悪いが狡賢く、上手に生きて来たのだという。
一人称もそうで、長兄は「俺」、次兄は「私」だから周は「僕」に意図的に変えたのだそう。耳で個人を識別しやすいように、そして職業柄柔らかい口調を心掛けているらしい。
でも学生時代から周は物静かで激しさと穏やかさのバランスは取れていたように思う。なので無理をして人格を作っている訳ではなさそうだ。
しかしその立ち回りをセックス中には吹っ飛ばしてしまうようになり…
「萌、子宮口虐めてやっからな、ん、すげぇ締めんじゃん、エロま◯こ、萌、かぁいい、撮ってい?撮るよ?ん、嘘、イカせてやっから許して、おラっ、な、チョロい、萌ま◯こ、すーぐイく、ひひッ♡」
と無邪気に性を解放するようになった。
本心では「対等なんかクソ食らえ」と思っていたりして、でもそれ以外では上に立とうとはしない。
単純な嗜虐心ではなさそうなので安心か、都合が悪ければ私も反撃するので問題は無い。
「萌、日に日に感度が上がってない?」
「そう?周が上達してるんじゃないの?鍛錬の賜物だね」
「…僕、萌にしか成果を発揮できないんだから、ちゃんと付き合ってよね。僕の技術を証明できるのは萌だけだよ」
「…うん」
セックスは前戯から感想戦までしっかりと…稽古好きな私たちは楽しんで取り組んでいる。新たなことへの挑戦もしたり、反復したり。
ただデロデロに甘い仲にはなれないが、これが自分たちのスタイルなのだと割り切った。
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