負けないふたり、勝てないふたり〜最強剣士の弱いとこ〜

茜琉ぴーたん

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2・めぐめぐプロポーズ

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「萌、可愛い…マジ袴みたいだな、これは脱がさずシよう」

「破れたら、やだなぁ…」

「気を付けるから…おっぱい見して」

 口では「やだぁ」なんて言いつつも、袖から腕を抜くために肩をベッドから浮かせる。

 滑稽な姿だなぁと自嘲しながら乳を吸われた。

「(こういうの、可愛いんだよなぁ)」

 ガルガルと私を欲する周が、赤ちゃんのように乳に吸い付く姿は愛らしくていけない。

 私の手はついつい周の頭を撫でてしまい、うっとり顔の彼に睨まれてしまう。

「あんだよ」

「ううん、気持ち良いなって」

「おっぱい吸って、悪いかよ」

「悪くない悪くない、可愛いって思っちゃっただけ、」


 照れ隠しにわざと大きな音を立てて乳首を舐められる。

 悲鳴をあげる直前くらいの痛さで乳頭を噛まれる。

 凶暴性に腰は引ける、でも女の乳房に齧り付いている大の男が可愛らしくて…愛しくて仕方ない。

「男に可愛いはやめてよね…男は誰しも、こうなるよ…きっとタケ兄だってこんななってる」

「…どうだろうね」

 セックス中に他の男性像を描かされ、興が冷める。

 確かにおっぱいを前にしたら誰しもそうなるのかもしれないが、私の中で猛さんは無骨でムッツリなイメージなので頭がぐちゃぐちゃになった。


 私と周は幼馴染みではあるが、学区は別だったので彼の兄弟たちとはそこまで打ち解けてはいない。

 学生からの付き合いだし家にお邪魔した際に会ってはいるが、猛さんは我々が高校生の時には東京にいた。

 女性慣れしていないらしく、今でも私は挨拶程度の仲である。

 なので私は猛さんを異性としてどうこうなんて考えたことも無い。

「あ、駄目、僕に抱かれてんのにタケ兄のこと考えないで」

「周が言い出したんじゃん…安心して、想像もつかないから」

「ん…やだよ、兄弟間で寝取られとか」

「私だって想像したくないよ……あ、周は…菜穂さんについてはどうなの?」

人に聞くくらいだから自分も思い当たるのでは、胸を弄られながら他の女性の話題を出してみる。


 周のことだから「興味無い」で済むかと思いきや、彼は乳首から口を離して

「細い、あれじゃ戦えない」

と首を振った。

「…一般の人は戦わないよ」

「とにかく細過ぎ。体質だろうけど、僕は健康的な萌の体つきが好み」

「そういう守りたい感じが、猛さんに刺さったのかもよ?」

「まぁ、タケ兄が盾になれば大抵の矢は貫通しないだろうね」

「…敵は飛び道具なんだ」

「当たり前じゃん、タケ兄の間合い広いんだから!僕は剣で互角…いや、構えが遅れたらやられちゃうね」

「確かにね」

 長身の兄弟の中でも、猛さんは横幅もあり恰幅が良い。

 華奢な菜穂さんの前に立てば、すっぽり収まりあらゆる敵から彼女を守れることだろう。


「…萌は、ちぃ兄のことはどう思う?」

かけるさん?は…私とは合わないよ」

 翔さんは次兄で、190センチと兄弟の中でも最高身長を誇る。

 細身で物腰は柔らかく、現在は我々も勤める熊学園の附属大学の事務をされている。

 つまりは私の直属の先輩職員に当たる。

 翔さんは既に結婚されており、お相手・多香子たかこさんは大学の学友の方で、翔さんが一目惚れして猛アタックしたとかなんとか。

 滅多に会うことは無いが、2年前の身内だけの結婚披露パーティーには私も参列させてもらった。

 とにかく賢くて博士号まで取得した才女、未来の日本を担う研究者であり一児の母でもある。

 翔さんは奥さまを溺愛しているし、そうでなくとも穏やか過ぎて勝気な私とは合いそうにない。

「そ、っか…いや、聞いたこと無かったから」

「気にしてたの?」

「ううん、奥さんにぞっこんだから寝取られる心配はしてないけど」

「ついでだから全部言っとこうか、すぐるくんもタイプじゃないよ」

 傑くんは末の弟さんで、なんと前橋から東京の大学へと通っている。

 こちらに彼女がいるから離れたくないのだと、そう聞いている。

 兄弟の中では最も接触機会が多かったが、周の弟としか思ったことは無い。

 ちなみに翔さんも傑くんも、いずれは学校の運営に携わる予定なのだとか。

 周は教員として採用されているが、経験を積んで学内で上り詰めて学校長になったりするのかもしれない。


「ふーん…別に、ヤキモチとかじゃないんだけどね」

「嫌なら聞かなきゃ良いのに」

「一気に親族に会ったから、なんか意識の中にあったんだよ…兄貴の奥さんたちも充分綺麗だったけど、やっぱ萌が一番可愛い。すげぇ…勃つ」

「知ってる、」


 話が済めば、周の頭はスススと下に戻って行く。

 ちぱちぱと乳を吸い、満足気だ。

 そして右手はこっそりと自身を扱いている。

 マルチタスクが苦手だから、胸は疎かになってきた。


「(この人、私のこと好きなんだなぁ)」

 私しか知らず、私で興奮して私に尽くしてくれる。

 強くて守ってくれて、たまに負けてもくれる。

 そんな彼がやはり愛しくて、癖っ毛の髪を撫でてしまう。

「…可愛がんなって」

「お礼、誠意だよ…愛しくて」

「…もー挿れる、ナデナデなんてさせない」

「うん、抱かれてあげる」

「…ん?強気じゃん」

若干の上から態度が気に障ったのか、周は目を細めて不遜に笑う。
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