負けないふたり、勝てないふたり〜最強剣士の弱いとこ〜

茜琉ぴーたん

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2・めぐめぐプロポーズ

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「他意は無いよ、でもおっぱいちゅっちゅされると母性みたいなの湧いちゃって、愛しいなって」

「誰が赤ん坊だよ、マジで母乳噴くようにしてあげようか」

「まだ早いって」

「くっそ…覚えてなよ」

 周はどんなに盛っても避妊は欠かさない。

 それが今回は少し揺らいだのだろうか、冗談でも妊娠を匂わせたのは彼の性格からすると意外だった。

 周は身を引いて、いつも通り丁寧にスキンを装着する。

 私を大切にしてくれている、私はこの時間も含めて周とのセックスが好きだ。

 話し合いをして営みの改善を図り、我慢をやめて正直に向き合って。

 自由に吠えて、体液を垂れ流し、汚れても二人で片付ける。


「(結婚しても、変わらずにいたいなぁ)」

「僕以外のこと、考えてる?」

 視界にずいっと、赤黒い棒が立ち塞がる。

 割れた腹筋とチリチリの毛、そして立派な彼の刀。

 今日は勝てるだろうか、私はこれにはめっぽう弱い。

「ううん、周との生活が楽しいなって」

「ふーん?そういや、アレ、まだだったね」

「なに?」

 今日は急いているからか、前戯は胸だけらしい。

 私はされるがままに脚を開き、彼の逞しい胴を迎え入れる。

「挿れるよ、良い?」

「うん……ッあ‼︎」

アレって何だっけ、仄かな疑問は脳を揺らす衝撃で吹き飛んで行った。

 奥まで届くのはもう慣れた、しかし毎度のゾクゾク感と恐さは消え切らない。

 痛かったらどうしよう、数回のストロークを経て馴染むまでは安心できない。

「萌、剣道着みたいで良いな、可愛い」

「ぐふッ…う…」

「ごめんね、すっごいパンパンで…痛くない?」

「らいじょぶ、ふぅ…ゔ♡」

 胸をはだけたドレスは腹巻きのように腰に溜まり、ツルツルの裏地が愛液で湿っていく。

 どうせクリーニングには出すけども、一張羅の汚れは気になるものである。

「髪も、可愛くしてもらってたよね、後で写真見よ、めぐ、かぁいい、」

「あ、りがとぉ、周も、カッコ良かったよ、」

「んー♡」

最早キャラ変の域、ハイテンションな周は楽しげに腰を振りペロペロと私の顔や肩を舐める。

 アルコールが抜けたら忘れてるのかも、でも無邪気な周も悪くない。


「あ、さっき、アレがまだって言ってた、アレって?なに?」

迫る波を感じつつ、周に尋ねる。

 私もイってしまうと頭が真っ白になり前後のことを忘れてしまうため、疑問自体が無かったことになってしまう。

 なのでセックスへの関連は不明だが、鳴きながら聞いた。

「んあ、あー、プロポーズ、萌に」

「あ、そ、だね、そか、」

「既成事実ばっかでね、ちゃんと告白もしなくてね、」

「昔から、ね、」

 交際の始まりもフワッとしていたし、居心地の良さに明言化を避けてしまっていた。

 だから周が同棲を切り出してくれた時は新鮮だったっけ、思い出がブワッと蘇る。

「(あれ、でも、せっかくのプロポーズがこれで良いの?)」

 将来子供に聞かれたら答えたいのにな、このままでは嘘をつくかぼかして伝えなければならない。

 けれど

「萌、結婚、するよ」

と、さも当然とばかりに周が微笑んで…私は

「ゔんッ♡」

とすぐさま歓び返事した。


 同棲しているから入籍しても生活は大きく変わらないだろう。

 苗字が変わるだけ、肩書きが変わるだけ。

 さらりと淡々と過ごして行くんだろう、いちゃいちゃは激しく励んでいくのだろう。

「萌、キッツい」

「待ッで、あッ…♡イっ、ぐぅッ…♡♡♡」

「ふへッ…すげぇ、萌、あー…最高」

「もぉッ、抜いッ…イっでる、イっでるってばぁッ…あ、あー…」

これは周がやりたがってたやつだ、ぴちぴちと魚が跳ねるように私は彼の腕の中で暴れる。

 退けてと胸を押してみるも、その手を掴まれベッドに貼り付けられた。

「まだまだよ、めぐ♡」

「らめ、おッがしぐッ、なるッ」

「んじゃあ、また、僕の、勝ちってことで、ん、」

 コンスタントに絶頂を見せられるようになり、このところ周は調子に乗っている。

 自信を付けるのは良いことだが、元来負けず嫌いな私にとっては狂おしく苦痛である。

 けれど体は気持ち良く、心身のジレンマはちょっとしたストレスにもなっている。

 なのに

「萌、ほら、言って、ん、めぇぐ♡」

と艶っぽく誘導されると私の唇は嫌々ながら降伏の言葉を吐いてしまう。

「参り、まじだあッ…もォ、無理ッ…めぐ、る、の、かぢィっ…♡♡♡」

「ん、あー、僕も出る、んー…」

「(ぴくぴく、してるッ…痙攣、止まんないッ…)」

「……ん、動かないでね、拭くから待ってて」

「う、ん…」

「最近、萌の降伏宣言聞かないと射精しづらくなってんだよね…不便、」

「…ざまぁ」

 負け確の試合なんて挑みたくない。

 でも求められて悦ばれるなら、そして私も恩恵を受けられるなら…戦って散っても痛手は少ない。

「びしゃびしゃだ、ごめんね、無茶して…酔いはさすがに抜けた」

「(事後のこの冷静さ、好きなんだよねー)」

「シーツ洗お、良い天気だから」

「うん、クリーニングにも持って行かなきゃ」


 最中は周の目バキバキに燃えていて荒々しくて、もっと若い頃から見たかったと思うようになった。

 同棲する前の私はマグロ状態で周にお任せしきっており、もっと目を開けて彼を見ていればと後悔している。

 どんな我慢顔をしていたんだろう、大学生の頃のあの髪型の時はどんな感じだったのだろう、思い出せなくて歯痒い。

 でも、男として勢いのあるうちに解放できて良かった、話し合えて良かった。

 これからの長い人生、色んな周が見ていられる。
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