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おまけ
懸念と相性
しおりを挟む菫と真澄が、交際を始めたばかりの頃。
「真澄くんって、なんで事務方なの?」
菫はぼんやり抱いていた疑念を真澄にぶつける。
真澄は人当たりが良く対応が丁寧で、見た目も爽やかな好青年である。
売り場に出せば人が群がりそうなものを、と菫は疑問に思っていた。
というのも、菫はかつて都落ちのような形で事務へ異動している。
営業が向かなかったために事務へ、という配置換えであった。
適性に沿ったと言えば聞こえは良いが、花形の営業と比べると給与も下がるし島流しのように感じる者もいるのは確かだ。
有能な真澄が事務方にいるなんて、何か余程のことでもやらかしたのかと…そう菫は勘繰ってしまった。
「あー、もちろん最初は売り場だったよ。でも2年目くらいでパートさんの不祥事があって、横領みたいなの。必ず正社員を置いて回すことに決まっちゃって。一番若い僕が入った感じ」
「じゃあ、売り場はそんなに?」
「そうだね。ある程度のことは経験したけど、稼ぎ頭にはなれてなかったね。中規模店は人員も少ないでしょ、だからベテランを売り場から外せなかったみたい」
本人の不祥事ではなくて良かった、菫はこっそり安堵する。
そして単純に不適材として売り場を追われた自分が恥ずかしくなった。
「…そっか、私は売り場が向かなかったから降りて来たんだけど…真澄くんなら、どこでも活躍できそうだね」
「どうなんだろ…機会があれば、また営業もしてみたいね。菫ちゃんは?」
「わ、たしは事務が合ってると思う…うん、」
「…そうだね、だからこそ僕らは出逢えたんだもんね、運命的な人員配置に感謝だね」
妙な含みを感じるも、真澄はそれ以上は掘り下げなかった。
ここから二人は時間をかけてさらに仲良くなり、真澄は菫が経験したことの詳細を知る。
そこを励ます目的が全てではないが、真澄は菫の声質や話し方をより褒めるようになった。
実は真澄も、菫の表情や声色を無愛想と感じる時はあったりする。
しかしそれは無闇にではなく、菫本人が確かに不機嫌である時なのだ。
つまりは本意を理解できている、心理を読めている。
こうした部分もつくづく相性なのだなと、真澄は感慨深く思うのだった。
おわり
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