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調査・内偵指示
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しおりを挟むさて、復讐なんて恐ろしいことは出来ないし許されないが、それに準ずることはしてやりたい。
しかし不用意に悪評を広めるのは名誉毀損になるし、したとしても浜田本人が女遊びを大っぴらにしているから本人へのダメージは薄そうだ。
本人に直接会って「きみが何股もして捨てた葵の父です」と告げてヒヤヒヤさせてやろうか。
しかし、浜田は葵が本社所属の僕の娘だと知らなかったのだろうか。
嬉野なんて苗字は珍しい方だし、ただでさえ同じ苗字が近場に2人居れば「血縁者かな」と思い付いても不思議無い。
もし知っていたなら、不誠実な交際をしなかっただろうしそもそも手を付けなかったように思う。
本社所属は経営側というか『偉い人』なイメージが付きやすいから、皆畏るしペコペコしがちだ。
しかも僕は人事係だから、報復で不当な異動をさせられるとか考えなかったのだろうか。
いや、僕は人事考査に私情を挟んだりは決してしないけども。
「誰彼構わず、なんだろうなぁ」
調査してみて分かったが、各人それぞれに「大人しそうな子」「隙がありそうな子」「割り切って遊べそうな子」を浜田が狙うと証言していた。
しかし実際にはマドンナ的存在の強気な美人たちにも粉をかけていたらしい。
要は、女性なら誰でもという…歪んだ博愛主義なのかもしれない。
だから葵のことももしかすると、「偉い人の娘を寝取ってやった」みたいな支配感を得るために手出ししたのでは、なんて妄想も働く。
「だとしたら…ネチネチと、いやらしく絡んでやるかな…」
あくまで紳士的に、私的なことでの制裁を。
非常識なやり方だって、やろうと思えばいくらでもやりようはあるのだ。
例えば関東の人事担当に掛け合って賄賂でも渡して浜田の人事評価を下げるとか。
あることに尾ひれを付けて無いことまで仕立て上げたりとか。
もちろんしないけども、「そんなことも出来るんだぞ」と脅したりとか。
「…大人気ないかな…そうだ、内偵してもらおうかな」
味気ない食事をしてシャワーを済ませて、僕はスマートフォンの連絡先からかつての舎弟とも言うべき後輩へと電話を掛けた。
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