自己評価低めの彼女には俺の褒め言葉が効かない。

茜琉ぴーたん

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おまけ

パートさんは見た

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 とある商品管理室での話。
 私は家電量販店の1階にある事務室で伝票整理や登録の仕事をしている主婦である。社員ではなくパートで、宅配便の受け取りや入退店者の荷物チェックなどもさせてもらっている。
 スタッフは他に3名、在庫を収める力仕事メインの男性が1人と、私同様に事務作業を行う女性が1人、そして暫定室長扱いの男性が1人。男女ペアで1日を回すのが通常で、日によって2人だったり3人だったり偏りはある。
 女性スタッフ…宗近むねちかさんとは私的な話をするほど特別仲が良い訳ではなく、同室で作業をしていてもポツリポツリと他愛無い世間話をする程度だった。
 宗近さんは大人しい人で、当たり前だが仕事中はあまり私語もしないし派手に笑ったりしない。親しい社員と交流する時にその表情を崩すくらいで、気難しい訳ではないが浮いた話など無さそうだと失礼ながら勝手に思っていた。

 それがこの秋から何かが変わった。
 隣の配送工事センターに新しい男性スタッフが現れるようになり、二人が交流を持ち始めたのだ。
 その男性は言っては悪いが人相が悪く、伸ばしっぱなしの頭髪を肩に垂らしてギョロ目で、一見不審者として足止めされても不思議無い見た目をしていた。
 彼は窓越しに宗近さんに話しかけるようになり、伝票回収から戻って二人がそうしていると私が入室を躊躇ってしまうほどに良い雰囲気になっていった。
 宗近さんは最初こそ落ち着かない風だったが満更でもない様子で、食べ物をあげたり笑顔を見せたりとその表情が日に日に華やいでいく。
 少し腹が立つのは、宗近さんが休みで私が作業している日、彼はチラと覗いてあからさまにガッカリした顔をすることだ。別に私に落胆しているのではないと分かっているけど、ハズレ扱いされることにはムカついてしまう。


「ねぇ、最近新しい配送の人入ったでしょ?髪の長い人」
「あー、ウツミ興業の千早ちはやさんね」
「あの人さ、うちの宗近さんにご執心みたいなんだけど、大丈夫かな?」
「いい大人なんだから大丈夫でしょ、宗近さん、そういやキレイになった気がしたよ」
 会話の相手はうちの主人、配送工事センターの山乃やまのセンター長である。
 私は主人のツテで店舗の事務パートに入っているわけだが、主人も宗近さんの変化に気付いていたとは驚きであった。
「わかる、よく笑うようになったよね…あの人も悪い人じゃないんだね」
「ちょっと悪そうに見えるだけだよ。売り場のスタッフと仲良くなる人もいるし、出入りのメーカーさんと付き合う人もいるし。配送員とそうなっても不思議はないね」
「良い話になればいいね」
「じっくりウォッチしてな、はは」


 今日も夕方になれば私は仕事を見つけて席を外す。
 ホールの掃除などしながら、宗近さんと、彼女を見つけて喜びを隠し近寄る彼の睦じい触れ合いをただ見守るのだ。
 彼女のシフト表をこっそり撮影しているのも目撃したし、彼が去った後の何とも言えない彼女の恥らう表情も見てしまった。
 これはビッグウェーブが起こる日も近い…私は事務室へ戻ろうと配送工事センターの前を通り、室内の主人と目が合ったのでグッと親指を立てて笑う。



おわり
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