わかりあえない、わかれたい・6

茜琉ぴーたん

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後日談

相性ってある

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 僕の趣味は、セックスの分析だ。
 日時から相手のスペック、プレイ環境や内容などを細かく書き記してじるのだ。
 目的は相性の良い女性と結婚するためだったが、収集自体も楽しくて好きなので「良い趣味を見つけたなぁ」なんて充実した日々を送っていた。

 ところが先日、美人局つつもたせに遭い、「なんだコレ」と大切な資料を燃やされてしまった。
 また一から集め直さねばな、僕の探究心までは灰になることはなかった。

 そうして出逢ってはセックスしてを繰り返していたある夜…僕の運命が回り始めた。
「…ゼェ…ハァ…す、素晴らしい…記録せねば…」
「ハァ…なぁに?それ…」
 下半身の相性がバッチリ、かつ社会的なスペックも僕に適した女性を見つけたのだ。
「今の、この興奮を…」
 忘れる前に書き残さねばと二代目ノートを開いて、カリカリ書き留めた。本来は隠して書くべきなのだが、僕はあまりの興奮にそれさえも我慢することができなかったのだ。
 普通、事後にこんなことをすれば相手は気持ち悪がるか怒り出すかなのだが、彼女は興味津々で付き合ってくれた。
「…わぁ、これ、貴方の戦歴ってこと?すごーい」
「……引かない?」
「え、目の前で書くってことは、受け入れられると思ってるからなんじゃないの?それとも別れて元々ってこと?」
「いや、相性が最高だから、とにかく書かなきゃと思って…趣味なんだ、変態なんだよ。悪いとも思ってないから謝れない」

 そう、僕には悪気が無い。
 セックスは同意でホテルに来ている訳だし、女性側には「酷い」なんて言う資格は無いと思っている。もちろん流出させるつもりもないからそこは説明するけど、どうせ記録は残るのだからどこで書こうが同じだろうと思う。
「だから、悪いとは思わないよ。私のこと、気に入ったから急いで書いてるんでしょ?良いよ」
 驚いた、体の相性が良くてもこの趣味のせいで別れることがほとんどだったから。バラさずに付き合っていても、毎回記録しているとどこかでバレる。僕はデジタルではなくアナログでの記録を主義としているから、しかも本棚に立てる主義なのでいずれバレる。
「い、良いの?これからも記録するけど」
「うん、比較とか改善のため?何でも良いけど、セックスにアグレッシブな人は好きだから気にしないよ」
「……け、結婚しよう!」

 こうして、僕は一生涯の伴侶を見つけた。
 妻が許してくれたので映像での記録も開始、性生活も新婚生活も充実している。

 会社に結婚報告をしたら、僕の趣味を知っている元カノは眉間に青筋を立てて固まり…すぐにトイレに駆け込んでいた。彼女にとって僕は気持ち悪い存在なのだろう。

 まぁ、僕は生来鈍感というか人心を鑑みることが下手なのでこんな趣味が出来るのだ。
 ともあれパートナーをゲットした僕は気力もみなぎり…仕事でも無事昇進を決めるのだった。



おわり
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