わかりあえない、わかれたい・6

茜琉ぴーたん

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後日談

育てる愛

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 かつて短期間交際していたあの主任が昇進して課長になった。それどころか結婚までしてしまった。

「解せない、解せない」
 軽く病みそうである。
 私とのセックスを酷評して、記録を付けていたあの男。悔しい、そして気持ちが悪い。
 だって、結婚したということはあの趣味を理解する女性がいたということなのだから。それとも秘密にしているのか、いやあの男のことだからきっと明かしていると思う。

「(私はいまだに引きずってるのに)」
 合コンに行って、「趣味は写真です」と言われても警戒してしまう。何かの収集癖があると不審がってしまう。
 消えないトラウマを植え付けやがって、誠に許せない。
 いや、許さないほど縁を続けたい訳じゃないんだけど、近くで幸せを見せつけられるのが我慢ならない。これを乗り越えるには自分が幸せになるしかないんでしょう、分かってる。分かってるけど…男性が怖くなってしまった。


 ならばいっそ転職でもして奴から離れようかな、なんて考え出した頃。友人に付き添われて参加した街コンにて、のちの夫となる男性に出逢った。
 彼はオタク趣味があってフィギュアの収集などもしているのだが、話が面白くて引き込まれた。
 コレクション棚の写真を見せてもらうと美少女ではなく動物ばかり、ミニチュアとかカプセルトイなどを中心に集めているらしい。
 彼は彼女いない歴イコール年齢の非モテ男子で、純朴というか飾らないところが気に入った。
 私は過去の男性遍歴を明かすつもりが無いし、彼も気にならなかったみたいだ。それどころか人生で初めて出来た恋人の私を、一家総出で大切に扱ってくれた。
 そしてトントン拍子に結婚、退職、彼の家に移り住んだ。

「(定職に就いてて高収入で貯金たんまり。長男だけど分譲マンションで義両親別居。自立してて家族仲良好…ドッキリじゃないよね⁉︎)」
 地獄からの反動が大きくて、たまに「これ夢だっけ?」と思い直すことがある。
 因果応報なんて課長には降りかからなかったけど、辛い目に遭った分も報われるのだとしたら…私も充分に幸せになる資格はあるのだろう。

 夫は女性経験は無くて私が初めて。
 処女信仰のそれみたいで我ながら気色悪いが、夫が私しか知らないというのが純粋に嬉しい。
 「ここはこうしないで」とか「ここはもっとこうして」とか、頼めば改善してくれるから私好みにアップデートしていける。
 闇雲に人数を試して見つかる愛もあるのだろうが…それは私の答えとは違う。

「(だってセックスだけが愛じゃないもんね)」
 朗らかな夫の笑顔に癒される休日、そんなことを実感して優雅にお茶を淹れる私だった。



おわり
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