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しおりを挟む「ふぅ」
「ミサ、頑張れ」
「はふ…成昭さん、見ないで」
「見ずに、どうやって当てるんだよ…ほら、」
キスをやめて、ヘソの下をちょいちょいと突く。
「ひゃア」
ぐにゃっと腹が捩れて、水面が揺らぐ。
そこにチョロチョロと、水流が落ち始めた。
「ん、ここにな、当てて………キャップして、水平にして置く、と。ここ置いとくから、後で見よう」
「なんで、そんなに冷静でいられんの」
「は?お前の小便なんか何度も見てるわ」
「違う、検査して…陽性だったら堕ろさなきゃいけないんだよ?慌てたり…しないの?」
「だから、そうするんだろ?話はついただろ」
トイレットペーパーを数巻き出してミサに渡す。
ミサはそれでトントンと陰部を拭いて、下着を引き上げまた座り直した。
「…残酷とか、思わない?」
「……思うよ、でも育てられねぇなら産んじゃダメだろ」
「成昭さんが、中絶を、何とも思わない人だったら、それはそれで、ショックっていうか、」
「ワガママだな」
はらはらと泣き出したミサの、腰を抱き締める。
この中に居るのか、新しい命が。
本音を言えば、どっちでも良いんだ。
まだ見ぬ子供に愛着を持てるほど、俺は慈愛に満ちた人間じゃない。
それでミサが悩むなら俺の敵だし、ミサが喜ぶなら俺の家族だ。
冷血に感じるだろうが、実感も無いのだから仕方ない。
現に、目の前のミサが苦悩してるんだから居ない方が良い…人道にもとる思考だということは自覚している。
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