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「すみません、始めましょう」

「おかえりー…さっきの間に解いたから見て」

「はい…」

ノートを受け取ろうと近付けば、歩夢嬢の香水の隙間にほんのりメントール系の涼やかな匂いが混じる。


「…高梁さんは、制汗剤を多用してらっしゃるんですか?」

「え、スプレーとかしてたかも…どうして?」

「貴女から…香ったので」

「えっ……や、やだぁ、そ、そんな移るほどくっ付いた訳じゃ…」

 裸で密着したなら移っても不思議無いさ、先に抜いておいたからここはそれほど興奮せずに済んだ。

「今さら誤魔化さなくても」

「…彼の方にも、私の匂いが付いちゃってるのかな」

「そうでしょうね…」

 歩夢嬢が照れ隠しに下敷きでパタパタ自身を扇ぐもんだから、高梁くんの残り香がまたふわり俺の鼻腔に侵入する。

 俺の身体にも入り込む気かまったくしゃくだ。

 マーキング行為をまざまざ見せつけられて気分が悪い。


「(マーキング……この感じ…あ、そうか、)」

 彼女、彼氏、俺…忘れかけていた思い出の扉が開いて、懐かしい情景がぶわっと走馬灯の如く駆け巡る。
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