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 紹介後はカップル毎に分かれる算段だったのだが、歩夢嬢が浦船さんに懐いてしまい自然と男チームと女チームに分かれてしまった。

「今年はいけそうですね」

「ええ、ベテランが上手く若手を引っ張っている感じがします」

 議員先生となんて何を話せばと案じていたが、そんな不安は和臣氏の「橘さんもヨコハマがお好きなんですよね!」のひと言で吹っ飛んだ。

 俺も彼も地元球団・ヨコハマシーサイドドリームスのファンで、美術品もそっちのけで会話が弾んだ。

 とはいえここは美術館、俺たちはさもアートに関しての所感を述べるように真剣な面持ちで開幕からこの夏までの激闘を振り返る。


 この美術館は近現代作品がメインで、特に県内・市内出身のアーティストの作品を多く展示している。

 彫像や絵画に陶芸など、シュールとか前衛的と呼ばれるものもあり正直俺は素晴らしさが理解できなかった。

 通常よりは早足でサクサクと回って、ロビーの椅子で女性陣を待つことになった。

「いや、橘さんは随分と話せる方ですね。今度観戦もご一緒しましょう」

「恐れ入ります」

「うちの妻も…元々は父の秘書をしていたんですが、ヨコハマのファンで、野球の話で意気投合したのが馴れ初めというか、最初なんです」

「そうでしたか…」

 俺は知らないが、議員と秘書のカップルというのは一般的なのだろうか。

 一般的でないから、和臣氏は強行突破を…つまりはできちゃった婚を画策したということなのだろうか。

 だって、彼は最初の会話で「念願叶って」などと言っていたし。

「……」

 俺がふよふよと目を泳がせると、和臣氏は簡単にことのあらましを教えてくれた。


 彼は秘書の浦船さんと恋仲になり、しかし元大臣の祖父・太郎たろう大先生は家柄なども加味した上で相手を決めねばと躍起になっていたそうだ。

 そこで和臣氏は先に子を授かることで強引に押し切って、懐妊が確定するまで歩夢嬢との見合いを続行しようと考えていたらしい。


「城廻さま、失礼ですが…今回の計画、もし歩夢さまが貴方に本気で惚れてしまっていたらどうなさるおつもりだったんですか」

連敗続きの歩夢嬢ならそれもあり得るだろうから、俺は疑問を解消するために尋ねておいた。

 しかし和臣氏はしれっと

「その場合は、普通にお見合いをしますよ。惚れて下さればこういう風にデートをして時間を稼いだまでのことです」

と、歩夢嬢を駒のように言い放つ。
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