21 / 72
4…くだけた声
21
しおりを挟むちなみにだが女性もののワイシャツには胸ポケットが付いていないものがほとんどで、それは言わずもがな「胸が邪魔になるから物なんか入らない」という前提で作られているためである。
飾りポケットなんてものがあるが制服のベストを着てしまえばそこは見えない、お洒落なブラウスでも付いていないのが当たり前だ。
そんな中で私のシャツに胸ポケットが付いているかと言えば、それはこれがメンズシャツだから、なのである。
男性用のスリムタイプがちょうどいい感じで、丈も長いので動き回っても腰周りに融通が利くので重宝している。
「……」
「(めっちゃ見られてる…)」
先ほどから栄さんは、私がパーカーの胸元を開きレコーダーを取り出し戻すという作業を胸に穴が開きそうなくらい凝視していた。
ここに物が入ることにそこまで違和感は感じないだろう、男性ならばこのポケットはあって当たり前のものなのだから。
しかしまぁ違和感があったとしても口には出さない、出せないだろう。
身体に関わることは店とか関係無く話題にすべきではない、軽い知り合い程度の仲だし異性ならば特にだ。
「…じゃあね、また何かあれば聞きにおいで」
「堂々と聞いて良いんですか?」
「いや、まずいけど…また遊びにおいで」
「仕事なんですけど…では、また」
「またね」
パーカーのフードと裾を翻して帰路に着く。
貧相な胸でも目の前にあれば視線を持っていかれるのは男性の性というものなのだろうか。
そう、あまり明かしたくはないが私の胸部は膨らみが些か足りないというか成人女性の平均的なそれに達してないというか、つまりは貧乳である。
具体的に言うとAカップ無いくらい、ホルモンバランスによって多少の差はあるが見逃せる誤差みたいなもので…ブラジャーは過分な隙間を持て余していて役不足といった感じだ。
なので胸ポケットに存分に物を挿せる訳で、ペンだって手帳だって思いのままである。
別に悩んじゃいない、小さくて困ることなど無いし大きかったからといって胸元を露出するタイプではないし。
でもまぁ男性からすると物足りなくはあるのだろう。
初めてのセックスで服を脱いだ時の元カレのガッカリした顔と言ったら…あれはなかなかに自尊心を抉られた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
36
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる