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Void and vainness
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しおりを挟む慌ただしく年末は過ぎて年明け、遂に古湊さんとの旅行日。体調は万全、生理予測もズレは無さそうだし生理前で妙にムラムラと気分が高まっている。
交際を開始した私たちだけどその生活ぶりはあまり変わらなくて、お互い仕事をしては撮影で会ってディナーをして帰宅する、あるいは休日に待ち合わせてお出掛けするというデートを重ねていた。
変わったことがあるとすれば1つ、これまでオフィスからひとりで来ていた古湊さんに副社長の女性が同行してくるようになったのだ。
スタッフさんは気軽に挨拶をしているし私が出しゃばって尋ねるのもおかしいと思い名前などは知らないのだけど、私は何となく…彼女が『エミルダ』さんなのではないかと予想している。なんせ私がセットに入っている時にスカートスーツの彼女はカメラの後ろで私と鏡合わせで同じポージングをして見せるのだ。ヒールが無くても170センチありそうな彼女のそれは、私への宣戦布告と見て良いのだろうと思う。
そしてスタッフさんたちの腫れ物に触るような態度も気になる。どことなく私と接触しないよう気を配ってくれている気がした。
気にはなるけど古湊さんの反応が怖くて聞けやしない…旅行日の今日の今日まで私は僅かな不信感を持って過ごしている。
「(そろそろ時間……お?)」
「ラムさん、お待たせ」
「あ、車…変えたんですか」
待ち合わせ場所に古湊さんが乗り付けたのは以前の大きなセダンではなく小型普通車だった。これも輸入車のようだがあまりにかけ離れているので私はぽかんと立ち尽くす。
「うん、前にラムさんが『可愛い』って言ってたのと同じやつ」
「え、それだけで決めちゃったんですか⁉︎」
「それだけじゃないけど…とりあえず乗って」
「はぁ、お邪魔します…」
鼻をつくのは新品の自動車独特の内装の匂い、見た目は小さいけれど私には充分な広さのある助手席に腰掛ける。
「出発進行ー……いい車だよね、小回り利くし軽よりは大きくて広い」
「そう、ですね。乗りやすそう」
「足も届くし…あんまり気にしないで、本当に買い替え時期だったんだ。ラムさんがお勧めしてくれたのもあるけど、元々乗りたい車だったんだ…センスが合うってこういう事だね」
革のシートは初対面の私の体をしっとり受け止めてくれる。メーターのグラフィックはカラフルで…詳しくないけれど最新機能の車なんだろうなと思った。
「お似合いだと思います」
「うん、自信持って…可愛い車に乗ってくよ」
「ところで、今日の行き先は?」
「あー、2泊3日の有馬温泉。1時間半くらいかかるよ、休憩しながら行こうね」
「はい」
いきなり温泉か、体を許す覚悟は出来ているのだがすっぴんまで明かさねばならないか。少々覚悟が揺らいで拳をぎゅうと握り込む。
でも年上の男性としっぽり温泉旅行なんて、初めての経験に心と胎がじゅんと熱くなってきた。
「…どうかした?」
「…いえ?ちょっと…緊張しちゃった」
「きん…あ、いや、そんな気にしないで、あの……普通にしてて、ごめん…いや…そうだよね…エロ親父みたいでごめん」
「そんな歳じゃないでしょう…変なの」
確かに小さな私を従えて浴衣で歩く姿はちょっと危険な匂いがするのかもね、けれど古湊さんは充分若く見えるし実際まだ若い。
「んー…そうだ、その…折角だから…僕のことも名前で…咲也って呼んで欲しい」
「咲也…さん」
「いいね」
そう言いサムズアップして笑う横顔はやはり若々しくて可愛かった。
数回のデートをしてみて私は自分の気持ちに気付いていて、告白を受けた時よりも彼への感情はより桃色で柔らかくふわふわしたものになっている。
ただの撮影の空気マジックではなかった、なんとなくで流された訳ではなかった。仕事に対する姿勢も無邪気な笑顔も魅力を感じて…私は今夜、彼への好意に自信を持って抱かれたい。
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