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Complex
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しおりを挟むそしてまた後日のデート。
「ラムさん、今日の撮影も良かったよ。あといいアイデアもありがとう、自社で作るなんて考えてなかったよ…僕たちのあのスーツもよく売れてるし、本当ラムさんは神様みたいだ」
「持ち上げ過ぎですよ」
「いいじゃない、ねぇ、副業じゃなくてこっちを本業にしない?モデルメインでたまに事務とかデザインとアイデア出し、今と同じかそれ以上あげられるよ」
夜景の綺麗なレストランで彼はそう言い生ハムをもくもくと噛んで味わう。
今夜は雲が月にかかって夜空はいまいち、ガラスに反射した自分の顔を横目で確認しつつ
「魅力的な話ですけど、パソコン教室の講師も嫌いじゃないので…私これでも、教えるの上手らしいんです…最近生徒さんも増えちゃったし」
と向き直れば咲也さんは目尻を下げて可愛らしく微笑んだ。
SNSの効果は馬鹿にならない。
誰かが『ライムちゃん、ムラタのパソコン教室で働いてる』なんて情報をコメント欄に書き込んだものだからじわじわと受講者が増えて来ている。物見に来るだけの人も居ればお試し入校の人も居る。中には定期コースを契約してくれる人も居たりして…こちらの手当も増えて本部が「また何かした?」と探りを入れて来たりもした。
なぜかと言えば私が過去に合コン相手などに声を掛けて手当たり次第に男性客ばかり増やしたせい、その時は肌を露出して色仕掛けなんかもしていて、受講者を増やして所長の鼻を明かしてやろうと躍起になっていたのだ。結果的に誰かが私の所業を本部にチクったらしく注意を受け…所長にも「危ないから止めようね」と言われ、以来通常営業に戻っている。
思えばあれも承認欲求からくる愚行、仕事のできる女だと所長に認めて欲しくての暴挙だった。
今となっては本当に恥ずかしいし穴があるなら埋まりたい的なやつだった。
「そう、なら来たくなったらいつでも言ってね、なんなら僕専属の秘書とかでも良いよ♡」
「はいはい」
この後はまたホテルに行くことになっていて、あの旅行からふた月経った今では彼は日付を指定して私の予定を押さえて事に臨んでいる。
なんでもデート前数日の禁欲生活からセックスの流れが堪らなく快感らしく、毎回並々ならぬ意気込みで来るので私は若干引き気味で食事を心からは楽しみきれない。
「…ラムさん、ごめん、がっつき過ぎかな」
「いえ、求められるのは嬉しいんですけど…」
「忙しい時期って全く会えなくなるからさ、その日が来るまではみっちり会っておきたいんだよね…できればいつも、傍にいて欲しい」
「んー…」
手をにぎにぎと包まれてももうあんまりときめかない。
それは嫌いとか飽きたとかではなくて気持ちがついて来ないというか…叙情的な映画を早送りで観て「盛り上がりどころはどこだったんだろう」みたいな、風情や情緒を置いてけぼりにしているような感覚である。
愛されている実感はあるし抱かれて気持ち良いし彼にもそれは伝わってるはず、よく言えば『馴染んだ仲』、悪く言えば『倦怠期突入』。
恵まれているはずなのにそれ故か感覚が麻痺してしまいそうだ。
「(気持ち良い、過去の彼氏とかとは違う、優しくって、朗らかでお金持ちで)」
「ラム、エッチに集中してない、悪い子だねッ」
「ひアっ♡」
もしかしてもしかしなくても毎度平均3時間の長尺セックスに体が疲れて文字通り『倦怠』しているということもあろう。
とは言えこの夜も私は彼に鳴かされて大いなる自信と満足感を与えた。
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