海の彼方のトティアス 〜船員さん、異世界へゆく。海に沈んだ世界で絆を育み生き抜く、普通の男の物語~

万年ぼんく

文字の大きさ
90 / 463
第二章

第九十話 魔力? わかりません①

しおりを挟む

「クリス! 甲種、乙種の材料を使用し、AからE素材の試験板を精製せよ!」
「はい……! ホヅミさま……! お任せください……!」

 クリスは瞬時にパパっと計十枚の板を造った。

(発動速度が凄いことになってないか?)

 しかも、それぞれ異なる分子構造を持つ五つの素材を、二種類の材料を使って同時に製作している。明らかなチート性能だった。

(これは、クリスも自衛手段を持った方がいいかも……。帝国にバレたら捕まって弄られるって言うし……)

 クリスの精製魔法は完全に古代魔法の領域、にも関わらず戦闘能力は無い。自分の身を守る程度の戦う力はあった方がいいだろう。

(ビクトリアに相談してみるか……)

 できあがった試験板は、甲種を使って造ったものはすべて白色。クリスと同じ純白の素材だった。そして、乙種を使ったものは――。

「おお! クリスぅ! やったなぁ!」
「すごい……! ホントに透明です……!」

 それぞれ透明度は異なるものの、どれも向こう側が透けて見えていた。

「わっはははははぁ! これで皇帝ゼトに除かれずに日を浴びて風呂に入れるぞ!」
「はい……。ホヅミさま……。一緒に入ろ……?」

(うわぁ! かわゆす! クリスっ! 天使か!?)

 どんどん可愛くなっていくクリスに、穂積の貞操観念はズタボロになっていた。早く成人しないかと待ち望んでいる自分がいるのだ。

 トティアスの成人年齢は十五歳。日本なら完全にアウトだが、クリスの可愛らしさには異世界の常識など消し飛ばす破壊力があった。

 EDによって、すべては無にしてしまったが。

「ふむ。透明度の高い順に、C、E、B、A、D素材だな。日光を取り入れつつ、エロオヤジの視線を遮るなら……、AかBのどちらかだな」
「そうですね……。Bでいいと思いますが、念のため硬度も確認しますか……?」
「それはいいな。やっておくべきだ。今までに造った素材との違いも確認しておきたい」
「はい……。一通りの対照実験をしておきます……。お任せください……」
「クリスは本当に、優秀で、可愛くて、いい子で助かるよ。ずっとそのままでいてくれ」
「もちろんです……。ボクはずっとお傍に……」
「うん……。俺のEDが億が一にも治ったらね……はぁ」
「ボクに……! ナニもかも、お任せいただければ……!」

(ははっ。なんかもう……、お任せしちゃおっかなぁ……はぁ)

 それから、予め決めておいた船首側の木甲板の一画に穴を開け、楼内の脱衣所へと続く階段を新設した。

 浴場へと至る階段の出口には雨水の侵入を避けるための小部屋を設けて、浴場側から鍵を掛けられる扉を取り付ける。これで入浴中のプライバシーは守られるだろう。

 甲種、乙種材料から造った新素材は予想を超えて優秀だった。

「ホズミさま……! この材料すごいです……! すべての面で今までの素材を上回る実験結果でした……!」
「ほう! 素晴らしい! …………なるほど。AからEの性質は変わらないが、全体的に安定した結果が出てるな。材料にムラが無くなったからか?」
「はい……。手が足りなかったり、余ったりしなくなりました……」 
「よしっ。海賊船から引っぺがしてきた資材が山ほどある。船尾楼内に保管できる分は、甲乙丙の材料に精製して取り置いておこう」

 穂積は既存の外階段を撤去するため、『ムラマサ』を手に後部甲板へ向かい、クリスは甲乙丙種材料の量産を開始した。精製した材料のストックは船尾楼内の一画にタライで保管することにしている。

(ふふふっ。モノなら切れないものはない! 壊すのってどうしてこんなに楽しいんだろ。覗きは許さん! 俺は一緒に入って謝罪しないといけないけど……)

 親の仇のように外階段を細切れにしていく。これらもすべて新素材の材料になるので形を残す必要はない。何かを造るという作業において、クリスの精製魔法ほど優秀な技能はないだろう。

「俺もEDヒモ男っぷりに磨きがかかってきたな。せめて……はぁ」

 クリスには、ビクトリアやゼクシィのような謝罪ができないのが心苦しい。たっぷりと可愛がり、涎を出させてやることくらいしかできない。

「クリス。外階段の残骸だ。これも使ってくれ。天井には軽い梁を渡して、乙種B素材の板を乗せて接合していくからそのつもりでな」
「わかりました……。板は1㎡でいいですか……?」
「うん。それでいい。俺は船首楼に行ってくる。脚立を借りないと」
「肩車ですか……?」
「ホントは危ないから、やりたくないんだけどな。クリスを一人で登らせるわけにもいかん」
「ボクは大歓迎です……。また、チュウしてもいい……?」

(ぐぅわぁああ! クリス! クリティカルぅ~! 萌やし殺す気か!?)

 穂積はクリスには逆らえない。手を出さずにいるだけで精一杯だった。


**********


 船首楼、甲板部の休憩中――。

「ホヅミ? 船尾楼でクリスと何やってるの?」
「まだ、秘密だ……」
「ついに手ぇ出しちゃった……?」
「ロブく~ん? デリー姉さんが下品なこと言ってくるんだけど~?」
「ち、ちょっと……! やめてよ……! 嫌われたらどうしてくれんのよ……!?」
「いやぁ、クジラのキンタマで目の色を変えてる時点でどうかと思う」
「それは自分の嫁たちに言ってやりなよ……」

 なんとなく、デリーの元気がないように見える。女性にもED的な病気はあるのだろうか。

「デリーさん、どうかしたの? EDなの?」
「もう、振り切れちゃったの? 自分で言ってて悲しくならない?」
「……俺は受け入れて生きていくしかないんだ。EDである事実を……はぁ」
「まぁ、好きにすればいいけどさ。ちょっとねぇ……。キンタマ会議以来……ご無沙汰で……」
「捕鯨会議ね。そっかぁ、ロブくんも引いちゃったかぁ」

 キンタマに目が眩んだデリーにロブが尻込みしているらしい。

 ロブは捕鯨計画に反対の立場なのだが、船長命令とあらば従わざるを得ず、デリーとホヅミの手前、意見を言うこともできずに悩んでいるという。

 デリーが甲板部員から集めた情報を精査し統合した結果、そういうロブの本音が見えてきたらしい。情報通は秘匿された情報を集めることも得意なようだ。

「なるほどね。ロブくんの言う事は正論、というか普通はそれが当たり前だ。俺もそう思う」
「何よ! 誰のためのキンタマだと思ってるわけ?」
が為のキンタマって……。クジラのキンタマはクジラのためのモノでしょうに」
「アンタのためよ! 四人ともアンタのためにキンタマを探してるのよ?」
「デリーさんよ。ここだけの話、俺はクジラのキンタマにあまり期待していないんだ」

 トティアスのクジラと似たような生物の睾丸は日本でも珍味として出回っていたこと。それには精力剤としての効能などは無く、精のつく食べ物程度であったことを言って聞かせた。

 しかし、キンタマ女子であるデリーは納得しない。

「アンタの国のクジラは小っこいんでしょ。だからよ!」
「生き物としての基本的な構造は一緒だと思う。トビウオもデカいだけで、形も味も同じだったし」
「ノーマンの経験則から出てきた話よ? アズラちゃんも同じこと言ってたんでしょ? 信憑性は高い!」
「うーん。ノーマン一族は食べても食べなくても凄そうじゃない? アズラに至っては海獣だよ? ロブくんを同じ土俵で比べちゃ可哀想だ」
「ロブを舐めないで! 抜かずの四発よ! 若いのよ!」
「そりゃ、すごいです。正直びっくりした。だけど、ならこれ以上は必要なくない?」

 デリーは可能性は無限大だと力説する。ロブはまだまだ大きくなれると、彼を育て上げるのは自分の務めであると、スケベな笑いを浮かべながらのたまうのだ。

(自分が欲しいだけだよね?)

 きっとマリーも同じなのだろう。婚約者をクジラの鼻先に突入させるのだから、デリーよりも期待が大きいのかもしれない。

 チェスカは何を原動力にしているのかイマイチ分からないが、本船の女性陣は肉食系ばかりである。

「デリーさん。夕方、仕事が終わったら船尾楼にロブくんと来てみ? 陽があるうちにね」
「なんか造ってるんだっけ? なんなの? あのデカい壁は?」
「だから、秘密だって。騙されたと思って来てみ? ね?」
「……わかった」
「んじゃあ、脚立、お借りしまーす」

 恋人との関係改善に一役買うことで恩返しとする。

 夕日の沈む水平線を見ながら、二人でのんびりお風呂に入ってもらおう。


**********


 船尾楼に戻ると、クリスが十分な数の半透明パネルを準備して待っていた。

「お待たせ。早速やるか!」
「はい……! 天井ですね……!」

 四隅の柱の上端を繋げた梁から、1㎡の格子状に骨組みを渡して接合し、升目ますめを乙種B素材の半透明パネルで埋めていく。

 降り注ぐ陽光はりガラスのような半透明の板ににじんでやんわりと透過し、浴場の滑らかな床を照らした。

 自然光を利用した明るい空間にクリスと二人で笑みを交わす。

「いい感じだな……」
「はい……。落ち着いた雰囲気です……」
「よしっ! いよいよ本丸! 浴槽とシャワーを造るぞ!」
「はい……! まずは浴槽ですね……!」
「オーシャンビューを間近に望む露天風呂だ。トモの手摺り付近に設置する」
「大きさはどのくらいにしますか……?」
「大中小の三つの浴槽に分けて横に並べる。どれを使うかは人数と水タンクの残量次第で選んでもらおう」
「なるほど……! それは便利ですし経済的です……!」

 まず、最も断熱性に優れる甲種D素材で三種の四角い浴槽を船尾に配置し床に接合する。

 中央に十人でも余裕で入れる大型の浴槽。その左右に、お一人様用の小型のものと、四人用の中型の浴槽を並べた。それぞれ艫側の側面に水抜き孔を開ける。

「ホヅミさま……。プラグはへい種C素材でいいでしょうか……?」
「そうだな。耐水性のあるもので、若干柔らかい方がいいから。ただし、耐熱性に難があるから熱湯はダメだ。風呂を沸騰させる奴はいないと思うが……」
「わかりました……。念のため予備を何個か置いておきます……」

 丙種材料からは樹脂のような性質の素材が精製できた。ゴムのように柔らかくはないが、それなりのシール性能が期待できる。

 熱を加えると柔らかくなって変形したり、逆に塑性そせい硬化して弾性が無くなったりと扱いが難しい素材だ。

「あとは、甲種A素材で湯船全体をコーティングだ。厚さ5mm程度でいいだろう」
「わかりました……。真っ白の浴槽……綺麗です……」
「ああ。クリスみたいに綺麗な純白だな」
「ごぷっ! ずじゅうぅ~! ぎょっくん!」
「……今の凄かったな」
「ボクハ、モウゲンカイ……デス……」

 大理石のような光沢のある真っ白な浴槽が完成した。水抜き孔にプラグを差し込み、水を入れて漏れ無しを確認。

「完璧! だな!」
「はい……! 次はシャワーと温水タンクですね……!」
「クリス、大丈夫か? 随分と魔力を使ってるはずだが……」
「全然、平気です……。減ってる気がしません……」
「そんな事ってあんの?」
「さぁ、どうなんでしょう……?」

 魔力は揺蕩たゆたうものだというが、揺蕩った結果がコレなのだろうか。

(イソラの説明にも微妙な違和感を感じた。でも、当事者の言ってることだし……)

 誰もが、それで納得しているのだろうか。

 穂積の疑問は尽きない。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

処理中です...