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第四節 えっ?アタシここでもハンターするの?
第21話 痴話喧嘩とハンターと依頼と瞳 中編
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とまぁ、そんなこんなで一悶着も二悶着もあったワケだった。
拠ってその後は終始和んだ雰囲気で会話が進んでいった…なんて事はない。
あるハズもない。
ルミネは幼い時の約束を「ハロルドが覚えていてくれた」と思って内心は喜んでいた。
その一方でもう1つの約束をハロルドが忘れていた事に怒りを露わにしていた。
陛下がいる場所なので緊張しているだろうから最初の1回目は見逃してあげてた(ただし態度には出ていた)のだ。だが2回目や3回目となると流石に見逃せなかったという、変な乙女心に拠る憤りと言える。
単純に、デレるコトが出来ない「ツンのみルミネ」だったのだ。
「ハロルドは昔からそうです。1人で泣きじゃくっていた時もそう。見付かってお父様に怒られた時もそう。自分1人を犠牲にすればいいと思っている」
「そんなハロルドだから、わたくしは…わたくしの呼んで欲しい名前を呼んでくれるようにそう約束したのに、それを忘れているなんて!!」
「うっ、うっ…」
ハロルドはルミネに殴られながら、叩かれながら、詰られながら、それでも必死に耐えている様子だった。
周りから見れば、既に見ていられない程に糖分高めで一方的な痴話喧嘩になっていた。
その光景を当事者以外の2人は「若いなぁ」とか「アタシにもあんな相手がいたらなぁ」とか「初々しいなぁ」とか、様々な事を思いながら見守っていた。
「えッ?!」
「ちゃんと覚えておりますよ、ルミネ様。「ぼくがあなたをここから連れ出す為に強くなる。だから、そうなったら一緒に城を出よう?」あと、「ルミナンテ様はお嬢様だから馴れ馴れしく名前を呼べないけど、呼んでもいいならルミネちゃんって呼ぶね」でしたね、ルミネちゃん」
「ッ!? ///」
ハロルドはボコボコにされながらもルミネを抱き締めるとルミネの耳元で囁いていった。
ルミネのオッドアイの両眼から大粒の泪が溢れていた。先程までの怒りの形相は最早跡形もなく、今は表情を崩して声を上げて泣いていた。
「なんだぁてっきり、ハロルドの一方的な片想いだと思ってたのに、案外両想いだったのねぇ」
「まぁ、ハッピーエンドが1番よねッ!父様もそう思うでしょ?」
「ん?まぁ、そうだな……」
少女はニヤけながら言の葉を紡いでいく。
2人はその言の葉を聞いた途端にハッとして、直ぐに距離を取っていった。更にはお互いに目を逸らすとモジモジしており、耳まで真っ赤にして俯いていた。
その微笑ましい光景を見たディグラスと少女は、表情を崩して声を上げて哂っていた。
こうして紆余曲折の末に漸く落ち着いて話せる準備が整ったのだった。
魔王ディグラスがハロルドに伝えた話しは2つ。
1つ目に、ハロルドに対して「ルミネ付きの護衛」という役職を与えた真意について
これからルミネは管理官としての仕事の他にも、魔王ディグラスからの仕事があるので外出をする事が増えるという。
その為に信頼の置ける腕の立つ戦士か騎士を供につける考えを持っていたのだそうだ。
2つ目に、ルミネが護衛を伴わなくていい場合はベルンがハロルドを鍛える様に伝えてある事について
魔王ディグラスはベルンに対して自身の編み出した「型」を教えていた。拠ってベルンはその「型」の有数な使い手になっていた。
その為にこれから先は少女ではなくてベルンにハロルドを鍛えて貰うのが最適だと考えていた。
その後に魔王ディグラスから少女に伝えられた話しは3つ。
1つ目に少女を人間界に返す方法について
これは現段階に於いては実用出来るレベルのものではない為にまだまだ時間が掛かるといったものだった。
2つ目に魔弾の精製に成功した事について
魔弾があれば少女が扱える武器の中で、銃火器の使用が出来るようになる。よって戦闘の幅が広がり戦略が増える事を意味していた。
3つ目に「魔界」に於けるハンター業務の開業について
銀髪の男との闘いに於いて少女の実力をその目で見た魔王ディグラスは、少女を庇護の対象から仕事を依頼という形で任せてもいい対象だと認識を改めていた。
更に言えば庇護という名目で無理矢理閉じ込めておいて、今回のような騒動や面倒事を巻き起こされるのは、政務が滞る観点から考えても金輪際御免だったのだ。まぁ、ディグラスとしてはこれが本心である事は当の本人には秘密にしているが…。
以上が魔王ディグラスからの話しの全内容であった。
ちなみにハンターとは人間界に於いて発生した職業の1種である。
魔獣やトラブルの解決等を請負うのを生業とし、ハンターライセンスを所持した上で、公安かギルドに所属している者を指す。
簡単に言えば便利屋とも呼ばれる事すらある何でも屋と言えるだろう。
人間界には時代の奔流に巻き込まれた結果、この制度が完成していたが魔界に於いてはその限りではない。拠って魔王ディグラスは少女にその役割を体良く押し付ける事で、トラブルメーカーの行動を抑制しようと考えたと言っても過言ではない。
だがしかし「魔界」の現状は平穏だ。魔獣の被害も特にない。(そもそも、魔族が魔獣と闘ってもよっぽどの事がない限り負けるコトはない)
時折戦闘民族特有とも言える好戦的な近隣住民のトラブルが起き、武力衝突をしているくらいだ。
ほぼ単一の民族である魔族が占める「魔界」に於いて、他種族が入り混じった人間界以上のトラブルや諍いは滅多に起きないのだ。
拠って暇だった。少女は凄く暇だった。暇なので王都にある図書館で魔術の勉強をして暇潰しをしている毎日だ。
ハンターとしての依頼はあの話し以降1回しかない。
それも植物の採取をするルミネの護衛が目的だった。
たまたまハロルドが護衛として付いて来れない為に、ルミネの護衛として同行したのだが特にこれといって何も起きなかった。だから無事に依頼をこなしたというかお散歩してルミネとお喋りしただけだった。
図書館で暇を潰す毎日に於いては稀に絡んでくる者がいた。しかしそれは自分の事を知らないただの輩魔族であり、そんな輩達は適当にのしていた。
拠って暇潰しにもなっていなかった。
あれから既に何日も経っている。変わった事はルネサージュ城を追い出された事くらいだ。
あの一件に於いてアスモデウスは自身の野望が叶わなかった事や信頼していた白銀騎士が負けた事などから心労が溜まり、政務に手が付かなくなったのだという。
いわゆる、鬱というヤツである。
拠って元凶の1人である少女がルネサージュの城内に居座っていては、お館様の容態も良くならず治るものも治らないだろうと申し出た者がいた。
恐る恐るというか渋々というか微妙な表情でジェルヴァがモノ申しに来たのだ。
だから少女は、その日の内にルネサージュ城を出て王都ラシュエに転移して来た。
ディグラスはその事を熟知していた様子で、少女が王都に転移して来るや否やベルンが王命に拠って少女を迎えに来たのだった。
ベルンは少女に対して、前回は体良く断られた決闘を再び申し込むつもりでいたが、配下の者と供に迎えに来た手前、大義名分の無い決闘をする機会には恵まれなかった。
拠ってその後は終始和んだ雰囲気で会話が進んでいった…なんて事はない。
あるハズもない。
ルミネは幼い時の約束を「ハロルドが覚えていてくれた」と思って内心は喜んでいた。
その一方でもう1つの約束をハロルドが忘れていた事に怒りを露わにしていた。
陛下がいる場所なので緊張しているだろうから最初の1回目は見逃してあげてた(ただし態度には出ていた)のだ。だが2回目や3回目となると流石に見逃せなかったという、変な乙女心に拠る憤りと言える。
単純に、デレるコトが出来ない「ツンのみルミネ」だったのだ。
「ハロルドは昔からそうです。1人で泣きじゃくっていた時もそう。見付かってお父様に怒られた時もそう。自分1人を犠牲にすればいいと思っている」
「そんなハロルドだから、わたくしは…わたくしの呼んで欲しい名前を呼んでくれるようにそう約束したのに、それを忘れているなんて!!」
「うっ、うっ…」
ハロルドはルミネに殴られながら、叩かれながら、詰られながら、それでも必死に耐えている様子だった。
周りから見れば、既に見ていられない程に糖分高めで一方的な痴話喧嘩になっていた。
その光景を当事者以外の2人は「若いなぁ」とか「アタシにもあんな相手がいたらなぁ」とか「初々しいなぁ」とか、様々な事を思いながら見守っていた。
「えッ?!」
「ちゃんと覚えておりますよ、ルミネ様。「ぼくがあなたをここから連れ出す為に強くなる。だから、そうなったら一緒に城を出よう?」あと、「ルミナンテ様はお嬢様だから馴れ馴れしく名前を呼べないけど、呼んでもいいならルミネちゃんって呼ぶね」でしたね、ルミネちゃん」
「ッ!? ///」
ハロルドはボコボコにされながらもルミネを抱き締めるとルミネの耳元で囁いていった。
ルミネのオッドアイの両眼から大粒の泪が溢れていた。先程までの怒りの形相は最早跡形もなく、今は表情を崩して声を上げて泣いていた。
「なんだぁてっきり、ハロルドの一方的な片想いだと思ってたのに、案外両想いだったのねぇ」
「まぁ、ハッピーエンドが1番よねッ!父様もそう思うでしょ?」
「ん?まぁ、そうだな……」
少女はニヤけながら言の葉を紡いでいく。
2人はその言の葉を聞いた途端にハッとして、直ぐに距離を取っていった。更にはお互いに目を逸らすとモジモジしており、耳まで真っ赤にして俯いていた。
その微笑ましい光景を見たディグラスと少女は、表情を崩して声を上げて哂っていた。
こうして紆余曲折の末に漸く落ち着いて話せる準備が整ったのだった。
魔王ディグラスがハロルドに伝えた話しは2つ。
1つ目に、ハロルドに対して「ルミネ付きの護衛」という役職を与えた真意について
これからルミネは管理官としての仕事の他にも、魔王ディグラスからの仕事があるので外出をする事が増えるという。
その為に信頼の置ける腕の立つ戦士か騎士を供につける考えを持っていたのだそうだ。
2つ目に、ルミネが護衛を伴わなくていい場合はベルンがハロルドを鍛える様に伝えてある事について
魔王ディグラスはベルンに対して自身の編み出した「型」を教えていた。拠ってベルンはその「型」の有数な使い手になっていた。
その為にこれから先は少女ではなくてベルンにハロルドを鍛えて貰うのが最適だと考えていた。
その後に魔王ディグラスから少女に伝えられた話しは3つ。
1つ目に少女を人間界に返す方法について
これは現段階に於いては実用出来るレベルのものではない為にまだまだ時間が掛かるといったものだった。
2つ目に魔弾の精製に成功した事について
魔弾があれば少女が扱える武器の中で、銃火器の使用が出来るようになる。よって戦闘の幅が広がり戦略が増える事を意味していた。
3つ目に「魔界」に於けるハンター業務の開業について
銀髪の男との闘いに於いて少女の実力をその目で見た魔王ディグラスは、少女を庇護の対象から仕事を依頼という形で任せてもいい対象だと認識を改めていた。
更に言えば庇護という名目で無理矢理閉じ込めておいて、今回のような騒動や面倒事を巻き起こされるのは、政務が滞る観点から考えても金輪際御免だったのだ。まぁ、ディグラスとしてはこれが本心である事は当の本人には秘密にしているが…。
以上が魔王ディグラスからの話しの全内容であった。
ちなみにハンターとは人間界に於いて発生した職業の1種である。
魔獣やトラブルの解決等を請負うのを生業とし、ハンターライセンスを所持した上で、公安かギルドに所属している者を指す。
簡単に言えば便利屋とも呼ばれる事すらある何でも屋と言えるだろう。
人間界には時代の奔流に巻き込まれた結果、この制度が完成していたが魔界に於いてはその限りではない。拠って魔王ディグラスは少女にその役割を体良く押し付ける事で、トラブルメーカーの行動を抑制しようと考えたと言っても過言ではない。
だがしかし「魔界」の現状は平穏だ。魔獣の被害も特にない。(そもそも、魔族が魔獣と闘ってもよっぽどの事がない限り負けるコトはない)
時折戦闘民族特有とも言える好戦的な近隣住民のトラブルが起き、武力衝突をしているくらいだ。
ほぼ単一の民族である魔族が占める「魔界」に於いて、他種族が入り混じった人間界以上のトラブルや諍いは滅多に起きないのだ。
拠って暇だった。少女は凄く暇だった。暇なので王都にある図書館で魔術の勉強をして暇潰しをしている毎日だ。
ハンターとしての依頼はあの話し以降1回しかない。
それも植物の採取をするルミネの護衛が目的だった。
たまたまハロルドが護衛として付いて来れない為に、ルミネの護衛として同行したのだが特にこれといって何も起きなかった。だから無事に依頼をこなしたというかお散歩してルミネとお喋りしただけだった。
図書館で暇を潰す毎日に於いては稀に絡んでくる者がいた。しかしそれは自分の事を知らないただの輩魔族であり、そんな輩達は適当にのしていた。
拠って暇潰しにもなっていなかった。
あれから既に何日も経っている。変わった事はルネサージュ城を追い出された事くらいだ。
あの一件に於いてアスモデウスは自身の野望が叶わなかった事や信頼していた白銀騎士が負けた事などから心労が溜まり、政務に手が付かなくなったのだという。
いわゆる、鬱というヤツである。
拠って元凶の1人である少女がルネサージュの城内に居座っていては、お館様の容態も良くならず治るものも治らないだろうと申し出た者がいた。
恐る恐るというか渋々というか微妙な表情でジェルヴァがモノ申しに来たのだ。
だから少女は、その日の内にルネサージュ城を出て王都ラシュエに転移して来た。
ディグラスはその事を熟知していた様子で、少女が王都に転移して来るや否やベルンが王命に拠って少女を迎えに来たのだった。
ベルンは少女に対して、前回は体良く断られた決闘を再び申し込むつもりでいたが、配下の者と供に迎えに来た手前、大義名分の無い決闘をする機会には恵まれなかった。
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