不思議なカレラ

酸化酸素

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第四節 えっ?アタシここでもハンターするの?

第26話 人間界と恋心と光と真相 後編その弐

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「なるほど、マモンとベルゼブブを丸ごと使った錬成魔術…か。そして、それを打ち砕いた極大魔術とはな」
「錬成魔術自体、特殊なジョブを修めていなければ使えないハズだ。その銀髪の男とは一体何者なのだ?」

「それはアタシにもサッパリ分からないの。むしろ、アタシの方が聞きたいくらいよ」

「そうか、ところで貴君よ?極大魔術は術式の理論上、普通の者が使える代物ではない。五大属性全ての属性を使える者でなくては極大魔術は成功し得ない。そうであろう?」

「え、えぇ、そうね」
「なんか、マズい予感しかしないんだけど…。ぼそっ」

だんッ

「そこでだ聞かせてくれッ!貴君は一体、幾つの属性を扱えるのだ?」

「えっ?えっとぉ…光と闇を含めた7つ全て…かな。あはははは」

「な、な、な、なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!ぶわーっはっはっはぅっはっはっひっひっひっふーっふっふはっはっ」

「も、もうッ!リヴィエさん、哂ったから、この話しはお終い!お終いだからねッ!!ふんすっ」

 こうしてリヴィエは何度目かになる大爆笑の渦に身を投じていった。
 少女は溜め息をつき、顔をその様子を眺める事しか出来なかった。



 極大魔術とは先の反乱の際に少女が放った極大五色アルティメット・ワンを始めとする「」の事を指している。


 大原則として属性には相性がある。そしてその属性は正五角形ペンタグラムの頂点に木・火・土・金・水があると考えればいい。

 相反する属性隣り合う属性同士を用いて術式を編めば互いに力が反発し合う事から通常は力を制御する事は叶わない。
 これは斥力と呼ばれる力であり、もし制御出来れば強力な力になる。

 拠って相反しない属性隣り合わない属性同士だと最大で2種類が限界となる。(一属性につき二属性ずつ計5通り)
 これは親和と呼ばれ、元の属性と融和し新たな属性や元にする属性を強化する。

 その為、五大属性木・火・土・金・水全てを扱えなければ、斥力を融和ゆうわ出来ず術式を編み上げる事は出来ない。まぁ、編み上げていく際に必ず斥力は発生するが最終的に斥力が互いの斥力で拮抗する事になる。

 だから逆説的に考えれば五大属性全てを扱える事が出来ればそれらの力を制御する事が可能になるとも言える。
 だがそれは飽くまでも理論上だけの話しで言えば…だ。


 少女はそれ以外に更に光と闇の属性を付加し扱う事も出来ると言った。その場合は詠唱時間も威力も桁外れとなる。
 拠って使い方を間違えれば国どころではなく、星や世界が丸々と消し飛ぶ程の威力になり兼ねないのだった。

 極大魔術はただでさえ「魔法」の領域に足を踏み込んでいるとされているが、そこまでの威力となればそれはもう既に「魔法」と言えるだろう。


 ただし通常のごく一般的な魔族デモニアであれヒト種であれその他の種族であれ、扱える属性はほぼ90%以上の確率で1つだけだ。
 拠って2つ以上の属性を扱える者はまれにしか現れない。


 5つ全てを扱える者は人間界には少女しかおらず、「魔界」にはルミネしかいない。

 だが、そのルミネでも特殊属性の光と闇の両方は使えず、闇を纏う事が出来るだけだ。要は7つ全ての属性を扱える少女の異常性は、どの世界に於いても異質極まりないモノだと言うのが分かるだろう。


「流石は魔王陛下の御子と言える才覚をお持ちだ。あぁ何故、貴君は魔族デモニアとして産まれなかったのか。本当にヒト種にしておくのがもったいない」

「あははは、そんなコト言われても……」

「まぁ、そうしたらアレだな。北の辺境伯の反乱の意思アリっていう話しはガセなのだな?」

「なんかリヴィエさん、残念そうね?」

「そりゃあ残念だとも!先の反乱軍討伐の折は声が掛からなかったし、やっこは今よりももっと武勲を上げねばならない身の上だからなッ!」

「へ、へぇ。そうなんだ?」

「だから、アスモデウスが侯爵になったと聞いた時にはこの屋敷の部屋が幾つも壊れたモンだ。まぁ、直させたから今でこそ平気に使えるがな。はっはっはっはっ」

 嫉妬を冠するリヴィエならではの不穏というか、純粋に子供が駄々だだみたいな感じもした。だが少女はその話しを聞き「この人を怒らせるのはやめた方が良さそうだな」と、密かに心に誓っていた。


「ところでリヴィエさんはなんで山が消し飛んだ事を知っているの?リヴィエさんの所領は南側なんでしょ?」
「隣り合っているなら話しが入ってきてもおかしくないけど、真反対ならどこからその話しを聞いたのか教えてもらえないかしら?」

「あぁ、あれは確か数日前の事だったか?王都をぶらぶらと散策をしていた時の事だ。フードを目深まぶかに被った奇妙な男が話しをしているのを聞いてな」

「えっ?!」

「それに興味が湧いて使い魔に調べさせた。そうしたら、確かに山が削り取られた様に失くなっていたのだ」
「あと、その男はこうも言っていた。「図書館にいるヒト種の女性がハンターという便」と」
「だから聞いたその話しを持ち帰り、内々にルシフェルと相談してみたのだ。「不穏な動きのある北の辺境伯の討伐隊に参加させてみてはどうか?」と」
「だがルシフェルは先ずは試すべきだろうという結論になった…」

「今なんて言ったの?」

「ん?今?ぬぬぬ、北の辺境伯の討伐隊に…か?」

「その前!」

「その前?図書館にいるヒト種の女性がハンターを…か?」

「そこよッ!」

「ん?どこだ?何かやっこの後ろにいるのか?」

「いや、そこだけど、そこじゃなくて……」
「ねぇ、リヴィエさん考えてもみて?ハンターという仕事について父様から何か言われたワケではないのよね?」

「うむ。その通りだ」

「恐らく父様はアタシがやっているハンターについて広く公表していないハズ。だったら、その男はなんで「ハンター」の事を知っているの?しかも便なんて言葉までつけて」

 少女はリヴィエとの会話の中で気になるワードをいくつも感じ取っていた。拠って少女は何かが起きようとしていると直感で理解した。だが、確信はないし、既に後手に回っている気が

 それが何なのか?それがいつなのか?それがどこでなのか?
 そこまでは分からない。

 暗躍してる者がいる。それは分かっていた。その暗躍している者として思い当たる者、心当たりのある者、それは1人しかいなかった。

 それはモチロン少女がハンターである事を知っている者だ。


「アタシが「魔界」でハンターだと知っているのはごく限られた数人しかいない」
「では、人間界ではどうか?人間界で会った事のある者ならアタシがハンターだと知っているハズ。そして「魔界」と人間界の両方であった事のある者は1人だけ。そう!あの銀髪の男しかいないッ!」

 少女の思考回路は急速にフル回転を始めていく。そして即座に推論すいろんを纏め上げていった。


 何かが起き始めていると確信し、事態は急を要すると少女は考え迅速に行動に移していく。

 対してリヴィエは少女が考えている事を逆算し行動する事に決めた。



 少女は先ず魔王ディグラスに会いにいく事にした。リヴィエにそう伝えると屋敷を出ていった。

 そして屋敷に残されたリヴィエは、独断で王都全域に警戒網を敷いていく。


 更にリヴィエは連絡のつく周辺貴族や配下達に片っ端から、自分が見たフードの男を見付け次第捕縛する様に連絡を取っていった。


「何故だろう?凄っごく嫌な感じがする。何事も起こらなければいいけど」

 屋敷を出た少女は盛大にフラグを立てていた。
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