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第五節 えっ?アタシ王都のコトは構えないわよ?
第42話 ベルンと蛇と冠と鎚 前編その壱
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ベルンの放った不可避の一撃である「破竜の型」は正確にスコルとハティを捉えていた。だが2匹の狼は避ける事をせずに放たれた不可避の刃をそれこそ「ばくんッ」と飲み込んだのである。
「その技は先に見た」
スコルが話す。
「その技で殺された」
ハティも続けて話す。
「我は太陽を飲み込む者」
スコルは更に言の葉を紡ぐ。
「吾は月を飲み干す者」
ハティも更に言の葉を紡ぐ。
「へぇ、見た事のある技なら飲み込めるってか!それはアンタらの能力かい?でもま確かに避けてねぇなら「不可避」にゃならねぇから、そうじゃねぇのかもしんねぇな」
「まぁどうでもいいや。だからちゃっちゃと殺り合おうぜ!自分を殺された恨みで、俺を殺すんだろ?」
ベルンは言の葉を投げると2匹の狼を挑発しがてら斬り掛かっていった。
ベルンはこの国に於いて「剣でその右に出る者無し」と呼ばれる程の猛者であり、今まで数多の猛者達と斬り結び生き残ってきた実績もある。そしてその実績から、親衛騎士の称号を与えられている。
更に付け加えるとベルンは魔術も普通に使う事が出来る。それは普通の魔術士ではなく、魔導士クラスだ。
よって、魔導騎士と言える。
ベルンは前もって自身に対してありとあらゆる「特殊強化」の魔術を施している。特殊強化は、能力値向上の為のバフを常時発動させる魔術だ。
拠ってそれは、魔道具や飾りの魔術版と言えるだろう。だからベルンはそれを、装備品に留まらず、身に着けている全ての物に行っている。
つまりバフ盛り盛りのベルンだからこそ、狼達を一刀の元に斬り伏せられたのだ。
それはハロルドには出来ない芸当と言えるだろう。
然しながら魔術に拠って強化されまくっている状態で斬り掛かっていったベルンの剣技は、狼達を斬るどころか掠りもしなかった。
2匹対1人という状況は狼達にとってはアドバンテージだ。更に付け加えるとスコルとハティはよく連携を取っている。
その結果、アドバンテージの優位性を最大限活かす闘い方をしていた。
ベルンの剣技に合わせる形で1匹が爪を繰り出し、もう1方はワンテンポ遅らせて爪を奔らせる。
知能が低い魔獣なら絶対に出来ないであろう連携をとっていた。
そんな狼達が採用していた時差式の戦術によってベルンは、1匹に集中する事が出来ず、剣技の精度も速度も普段とは異なり精彩を欠いていった。
結論として狼に対する対応速度は目に見えて遅れる事になったのだ。
そんな状況にベルンは焦りを抱き冷静さを保てなくなってきていた。その為に狼達と一時的に距離を取り冷静になろうと考えた。
「クッソ!これじゃラチが明かねぇ。このままじゃジリ貧だぜ。攻撃は当たらねぇし、それどころかさっきから攻撃すら出来てねぇ!!」
「こいつら、魔獣じゃねぇのかよッ!まぁ、魔獣じゃあねぇよな…話せるし。はぁ、やってらんねぇぜ。まったくよぅ」
焦燥感に駆られたベルンの考えは正しかった。
狼達はベルンの剣筋を完全に見切っていた。更には剣撃のタイミングを計り、ベルンが攻撃を放つその一歩手前で爪撃を仕掛けている。
「こりゃあ、ちいっとばっかしヤベぇかもな」
「でもま、ヤベぇって言っても逃してはくんねぇだろうし、逃げれても逃げた後の方が怖ぇ」
ベルンから漏れる口調は流石に重かった。だからこそベルンは投げやり的な発想で、イチかバチかの戦法に縋る事にした。
「こればっかりゃ、あんまりやりたかぁねぇんだが」
「しゃーねぇな。背に腹は替えられねぇし、本当に後の方が怖ぇからな。まったく、仕える…いや、それはどこで見てるか分かんねぇから言ったらもっとヤベぇな」
「我、脚に宿すは炎。その炎、我の脚と成りて共に駆けろ!炎駒焔脚」
ベルンは独り言を口ずさむと一段と低い構えをとりながら詠唱を始めていた。
ベルンから発せられた力ある言葉に従って紫炎がベルンの脚へと宿っていく。
更にその紫炎はベルンの腰辺りから後ろに向かって伸びると2本の後ろ脚を形成する。最終的に紫炎はベルンの脚を計4本形造り、その脚でベルンは床を蹴り駆けていったのだ。
その速さは先程までの比では無かった。
「喰らえ、流水乱舞!」
しゅうわわわんッ
グルッ
しゅぱぱぱぱぱぱんッ
グガッ
ベルンは音速を超えた速さで駆け抜け、虚の型をその速さに対応させて放つ。
その型は狼に対して特攻していった。
結果、狼達はその速さに対応し切れなかった。
ベルンが先ず狙ったのはスコルだ。ただし、スコルを狙いたくて狙ったワケではなく、「近くにいたから」って言うだけだ。
スコルは自身に向かって迫り来る獣の領分を超えた異常な速さに対して戸惑いを見せた。しかし躊躇する事なく自身の最速の爪撃を連続で放っていく。
だが、その爪撃はベルンには当たらない。虚しくも宙を引き裂くだけであった。
そしてスコルはベルンの放つ型に、傷は浅いものの確実に刻まれていったと言える。
先程までの言葉は失せており、ただの狼の様に唸るだけだったコトをベルンは気にも止めなかった。
ベルンが放った型に因ってスコルは斬り刻まれはしたが、致命傷は負っていない。ベルンがしたいのは討伐であり生命力を削るコトではない。
拠って2匹の連携を封じ込める為にも先ず1匹を確実に仕留める必要があった。
そんなベルンの額には汗が大量に湧き出ており、表情には苦痛が浮かんでいる。
「こうなっちまったら、あんまり時間は掛けられねぇんだ。悪ぃがとっとといくぜ、神速破竜!」
ずりゅん
しゅしゅざんざんざんざんざんッ
ガッ?!
スコルの左側面から9本にも及ぶ音速を超えた神速の剣閃が奔っていく。そしてベルンの顔は、更に苦痛に歪んでいた。
一方でハティは敵の異常なまでのその速さに、まったく動けずにいた。
先程までの見切っていた動きとは全く違う動きに対して、タイミングを合わせて爪撃を放つ事が出来ずにいた。
結果としてスコルが少しづつ刻まれていくのを見ている事しか出来なかった。
だがそんな中でハティは咄嗟に動く。ベルンの動きが切り替わり攻撃が変化したその一瞬が目に映ったからだった。
「スコルの危機だ!」とハティは野生の勘とも呼べるモノで感じ取り行動していった。
ハティはスコルを助ける為に動いたのだ。
スコルの左側面に剣閃が幾重にも迸る。スコルはその様子に自身の「死」を確信した。
然しながらスコルは何かに弾き飛ばされたのだった。
何故自分が弾き飛ばされる事になったのか、スコルは正直なところ全く理解が及ばなかった。
スコルが振り返るとそこにハティの姿は無かった。そこに残るのは「ハティだったモノ」だった。
スコルは自分の身を助けた「ハティだったモノ」に近付いていった。
「スコル、吾をスコルの中に」
ハティはそれだけを言い残すと光の粒子となって消えていく。
後には1つの魔石だけが残されていた。
スコルはその魔石を口で拾うと、その魔石を口に含み飲み込んだ。そして空を仰ぎ、一回だけ長く吼えていた。
その咆哮はどこか悲しさ切なさを含んでおり、残響しながら静かに消えた。
ベルンはその様子を窺いながらも、どこか切ない気持ちに囚われていた。
「敵とはいえ知能がある以上、魔獣とは流石に違うな。こーゆーのはなかなか割り切れねぇ」
「2匹の内のどちらかが残ればこうなるのは分かるが…。だがな我は、我自身が生き残る為に闘わなくちゃなんねぇ。それがどんな相手だってなッ!!」
ぎりっ
ベルンは心の中で呟いていたが、一方でその脚は既にいう事を聞かなくなっていた。
ベルンはその脚を見るんじゃなかったと思いながら、「ははっ、やっぱ生き残れるか分かんねぇわ」と、重ねた呟きは先程までの意気込みとは正反対の様子だった。
何故ならばベルンの腰から下は使い物にならない程に焼け焦げていたからだ。それは紫炎の影響と神速破竜を使った反動だった。
既に立っているのも辛く剣を杖にしなければ立っていられない。更に脚に力を入れようにも感覚は一切ない。
本来であれば感じるであろう激痛も、完全に痛覚が喪失させられた様子でそれすらも感じない。
感じるのは残った部分から湧き上がってくる不快感だけだ。
既に紫炎の脚は消え失せている。
だから言う事を聞いてくれない脚では歩く事すらままならないだろう。
「その脚はもう動かぬようだな。何か言い残す事はあるか?無いならその武勇を讃え一息で苦しまない様に殺してくれよう」
「へっ、さっきまでとは丸で別人…いや、別狼だな」
スコルは先程までのカタコトな口調から一転して流暢な口調になっていた。しかしその中には感情が一切籠もっておらず、非常に無機質だった。
「だが残念ながら、狼に対して言い残す事はねぇ…な」
「狼に伝言しても意味ねぇだろ?相棒殺された恨みを晴らしてぇなら悠長にお喋りしてねぇで、とっとと殺れってんだ!」
ベルンは既に感覚が失くなった脚を、もう1度だけ見ると覚悟を決めた。だがスコルの事をこのままを放っておけない事は重々に承知している。
その為にスコルが近付き自分にトドメを刺そうとするその瞬間を唯一の勝機と考えていた。
「そうか、ならば逝け」
「その技は先に見た」
スコルが話す。
「その技で殺された」
ハティも続けて話す。
「我は太陽を飲み込む者」
スコルは更に言の葉を紡ぐ。
「吾は月を飲み干す者」
ハティも更に言の葉を紡ぐ。
「へぇ、見た事のある技なら飲み込めるってか!それはアンタらの能力かい?でもま確かに避けてねぇなら「不可避」にゃならねぇから、そうじゃねぇのかもしんねぇな」
「まぁどうでもいいや。だからちゃっちゃと殺り合おうぜ!自分を殺された恨みで、俺を殺すんだろ?」
ベルンは言の葉を投げると2匹の狼を挑発しがてら斬り掛かっていった。
ベルンはこの国に於いて「剣でその右に出る者無し」と呼ばれる程の猛者であり、今まで数多の猛者達と斬り結び生き残ってきた実績もある。そしてその実績から、親衛騎士の称号を与えられている。
更に付け加えるとベルンは魔術も普通に使う事が出来る。それは普通の魔術士ではなく、魔導士クラスだ。
よって、魔導騎士と言える。
ベルンは前もって自身に対してありとあらゆる「特殊強化」の魔術を施している。特殊強化は、能力値向上の為のバフを常時発動させる魔術だ。
拠ってそれは、魔道具や飾りの魔術版と言えるだろう。だからベルンはそれを、装備品に留まらず、身に着けている全ての物に行っている。
つまりバフ盛り盛りのベルンだからこそ、狼達を一刀の元に斬り伏せられたのだ。
それはハロルドには出来ない芸当と言えるだろう。
然しながら魔術に拠って強化されまくっている状態で斬り掛かっていったベルンの剣技は、狼達を斬るどころか掠りもしなかった。
2匹対1人という状況は狼達にとってはアドバンテージだ。更に付け加えるとスコルとハティはよく連携を取っている。
その結果、アドバンテージの優位性を最大限活かす闘い方をしていた。
ベルンの剣技に合わせる形で1匹が爪を繰り出し、もう1方はワンテンポ遅らせて爪を奔らせる。
知能が低い魔獣なら絶対に出来ないであろう連携をとっていた。
そんな狼達が採用していた時差式の戦術によってベルンは、1匹に集中する事が出来ず、剣技の精度も速度も普段とは異なり精彩を欠いていった。
結論として狼に対する対応速度は目に見えて遅れる事になったのだ。
そんな状況にベルンは焦りを抱き冷静さを保てなくなってきていた。その為に狼達と一時的に距離を取り冷静になろうと考えた。
「クッソ!これじゃラチが明かねぇ。このままじゃジリ貧だぜ。攻撃は当たらねぇし、それどころかさっきから攻撃すら出来てねぇ!!」
「こいつら、魔獣じゃねぇのかよッ!まぁ、魔獣じゃあねぇよな…話せるし。はぁ、やってらんねぇぜ。まったくよぅ」
焦燥感に駆られたベルンの考えは正しかった。
狼達はベルンの剣筋を完全に見切っていた。更には剣撃のタイミングを計り、ベルンが攻撃を放つその一歩手前で爪撃を仕掛けている。
「こりゃあ、ちいっとばっかしヤベぇかもな」
「でもま、ヤベぇって言っても逃してはくんねぇだろうし、逃げれても逃げた後の方が怖ぇ」
ベルンから漏れる口調は流石に重かった。だからこそベルンは投げやり的な発想で、イチかバチかの戦法に縋る事にした。
「こればっかりゃ、あんまりやりたかぁねぇんだが」
「しゃーねぇな。背に腹は替えられねぇし、本当に後の方が怖ぇからな。まったく、仕える…いや、それはどこで見てるか分かんねぇから言ったらもっとヤベぇな」
「我、脚に宿すは炎。その炎、我の脚と成りて共に駆けろ!炎駒焔脚」
ベルンは独り言を口ずさむと一段と低い構えをとりながら詠唱を始めていた。
ベルンから発せられた力ある言葉に従って紫炎がベルンの脚へと宿っていく。
更にその紫炎はベルンの腰辺りから後ろに向かって伸びると2本の後ろ脚を形成する。最終的に紫炎はベルンの脚を計4本形造り、その脚でベルンは床を蹴り駆けていったのだ。
その速さは先程までの比では無かった。
「喰らえ、流水乱舞!」
しゅうわわわんッ
グルッ
しゅぱぱぱぱぱぱんッ
グガッ
ベルンは音速を超えた速さで駆け抜け、虚の型をその速さに対応させて放つ。
その型は狼に対して特攻していった。
結果、狼達はその速さに対応し切れなかった。
ベルンが先ず狙ったのはスコルだ。ただし、スコルを狙いたくて狙ったワケではなく、「近くにいたから」って言うだけだ。
スコルは自身に向かって迫り来る獣の領分を超えた異常な速さに対して戸惑いを見せた。しかし躊躇する事なく自身の最速の爪撃を連続で放っていく。
だが、その爪撃はベルンには当たらない。虚しくも宙を引き裂くだけであった。
そしてスコルはベルンの放つ型に、傷は浅いものの確実に刻まれていったと言える。
先程までの言葉は失せており、ただの狼の様に唸るだけだったコトをベルンは気にも止めなかった。
ベルンが放った型に因ってスコルは斬り刻まれはしたが、致命傷は負っていない。ベルンがしたいのは討伐であり生命力を削るコトではない。
拠って2匹の連携を封じ込める為にも先ず1匹を確実に仕留める必要があった。
そんなベルンの額には汗が大量に湧き出ており、表情には苦痛が浮かんでいる。
「こうなっちまったら、あんまり時間は掛けられねぇんだ。悪ぃがとっとといくぜ、神速破竜!」
ずりゅん
しゅしゅざんざんざんざんざんッ
ガッ?!
スコルの左側面から9本にも及ぶ音速を超えた神速の剣閃が奔っていく。そしてベルンの顔は、更に苦痛に歪んでいた。
一方でハティは敵の異常なまでのその速さに、まったく動けずにいた。
先程までの見切っていた動きとは全く違う動きに対して、タイミングを合わせて爪撃を放つ事が出来ずにいた。
結果としてスコルが少しづつ刻まれていくのを見ている事しか出来なかった。
だがそんな中でハティは咄嗟に動く。ベルンの動きが切り替わり攻撃が変化したその一瞬が目に映ったからだった。
「スコルの危機だ!」とハティは野生の勘とも呼べるモノで感じ取り行動していった。
ハティはスコルを助ける為に動いたのだ。
スコルの左側面に剣閃が幾重にも迸る。スコルはその様子に自身の「死」を確信した。
然しながらスコルは何かに弾き飛ばされたのだった。
何故自分が弾き飛ばされる事になったのか、スコルは正直なところ全く理解が及ばなかった。
スコルが振り返るとそこにハティの姿は無かった。そこに残るのは「ハティだったモノ」だった。
スコルは自分の身を助けた「ハティだったモノ」に近付いていった。
「スコル、吾をスコルの中に」
ハティはそれだけを言い残すと光の粒子となって消えていく。
後には1つの魔石だけが残されていた。
スコルはその魔石を口で拾うと、その魔石を口に含み飲み込んだ。そして空を仰ぎ、一回だけ長く吼えていた。
その咆哮はどこか悲しさ切なさを含んでおり、残響しながら静かに消えた。
ベルンはその様子を窺いながらも、どこか切ない気持ちに囚われていた。
「敵とはいえ知能がある以上、魔獣とは流石に違うな。こーゆーのはなかなか割り切れねぇ」
「2匹の内のどちらかが残ればこうなるのは分かるが…。だがな我は、我自身が生き残る為に闘わなくちゃなんねぇ。それがどんな相手だってなッ!!」
ぎりっ
ベルンは心の中で呟いていたが、一方でその脚は既にいう事を聞かなくなっていた。
ベルンはその脚を見るんじゃなかったと思いながら、「ははっ、やっぱ生き残れるか分かんねぇわ」と、重ねた呟きは先程までの意気込みとは正反対の様子だった。
何故ならばベルンの腰から下は使い物にならない程に焼け焦げていたからだ。それは紫炎の影響と神速破竜を使った反動だった。
既に立っているのも辛く剣を杖にしなければ立っていられない。更に脚に力を入れようにも感覚は一切ない。
本来であれば感じるであろう激痛も、完全に痛覚が喪失させられた様子でそれすらも感じない。
感じるのは残った部分から湧き上がってくる不快感だけだ。
既に紫炎の脚は消え失せている。
だから言う事を聞いてくれない脚では歩く事すらままならないだろう。
「その脚はもう動かぬようだな。何か言い残す事はあるか?無いならその武勇を讃え一息で苦しまない様に殺してくれよう」
「へっ、さっきまでとは丸で別人…いや、別狼だな」
スコルは先程までのカタコトな口調から一転して流暢な口調になっていた。しかしその中には感情が一切籠もっておらず、非常に無機質だった。
「だが残念ながら、狼に対して言い残す事はねぇ…な」
「狼に伝言しても意味ねぇだろ?相棒殺された恨みを晴らしてぇなら悠長にお喋りしてねぇで、とっとと殺れってんだ!」
ベルンは既に感覚が失くなった脚を、もう1度だけ見ると覚悟を決めた。だがスコルの事をこのままを放っておけない事は重々に承知している。
その為にスコルが近付き自分にトドメを刺そうとするその瞬間を唯一の勝機と考えていた。
「そうか、ならば逝け」
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