不思議なカレラ

酸化酸素

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第二節 The Primery Take

第64話 Midnight Strangers Ⅱ

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 獣人達は多少苛立いらだち混じりで、「スーツケースの中身を見せろ」と不審車の男達に要求したのだ。

 「商品」と引き換えの「金銭」であれば、商品と交換する前に中身を確認するのは当然の事だ。ただしそれに対して、不審車の男達が取った行動は予想外だった。


「中身はちゃんと入ってるぜ。ちゃあんとなッ!」

ばっ
ちゃき
パラララララララララッ

「うぉぉお、いったん退け」

 スーツケースを持っている男の左横にいる男。先程から獣人達と話しをしているこの男が、恐らくこの3人の中でのリーダー格だろう。
 そのリーダー格の男はスーツケースを開けると、中に入っていたSMGサブマシンガンを取り出し獣人達目掛けて乱射していった。


 獣人達はその行動に驚き自分達が持って来た「商品」を、地面に置き去りにする形で瞬時に回避行動をとった。獣人達はその驚異的な身体能力で飛来する弾丸を避けていった。
 そして2人は左右のそれぞれ後方へと跳んで距離を取っていく。


パラララッ

「急いで商品を回収しろ。ズラかるぞッ!」

「へ、へい!」

「くっ、逃がぁさねえ」
「アオーーーーーーーンッ!」 / 「アオアオーーーーーンッ!」

「ひっ、おい、早くしろ!ヤツらが来る!」

 仲間の2人が「商品」を回収しようと袋に手を掛けた時、それぞれの獣人が咆哮ほうこうした。

 獣人種の多くが使用する事が出来る能力スキルの中に、「咆哮ビーストロア」がある。
 これは自身の筋力値STR敏捷性AGIといったステータスの向上を齎してくれる、能動型アクティブ能力スキルだ。
 魔術特性がほぼ無いと言われる獣人種が、自身にかける能力値ステータス強化型のバフと認識されている。

 また魔獣も「咆哮モンスターロア」を使う場合があるが、それは能力スキルであったり咆哮モンスターロアが魔術へと変換されたりと様々な場合がある為に、獣人種のとは同一のモノではない。


 咆哮ビーストロアを上げた獣人達はそれぞれ速攻を仕掛けていく。
 速攻のターゲットは袋に手を掛けている2人のようだ。


ダッ

「チッ。死ねぇ!!」

パラララララッ

「なっ?!」

カチッカチッカチッ

「くそッ!弾切れかっ」

「アイツおバカさんね?考えもなしにSMG乱射したらスグにわよね。うん、ド素人確定ね」

 リーダー格の男は狼狽うろたえながらも、急いでスーツケースの中から予備のマガジンを探していたが、そんな時間を与えてくれる事は一切無かった。
 拠って瞬く間に仲間達は獣人の鋭い爪の餌食となっていった。


「テんメェ、ナメた真似してくれたぁな?無事に帰れるとは思ってぇだろぉうな?」

シャキん シャっシャッ

「ひ、ひぃッ。や、やめろ、やめてくれぇッ!」

ガシャん

「やめでやめでやめで、ごろざないで」

 獣人の1人が腰を抜かしたリーダー格の男のむなぐらを掴み、強制的に身体を持ち上げ宙に浮かせていく。

 更に獣人はリーダー格の男の喉元に尖らせた自身の爪を当て、今にも貫こうとしていた。戦意を失い首が締まり、意識も失いかけているリーダー格の男のSMGを握り締めていた握力は、弾切れのSMGは地面に転がっていった。


「このままアイツまでられちゃうと、犯罪組織を洗えなくなるなぁ」
「まぁ、自業自得って言っちゃえばそれで終わりなんだけど、密猟依頼をしてくれたバカにはお仕置きが必要だから生きてて貰わないと困るわね」

 一連の流れを見ていた少女は心の中でボヤきながらも、と考え直して迅速に行動に移していった。



 少女は自身に敏捷性アジリティ激化インテンス敏捷性アジリティ強化エンチャント筋力値ストレングス強化エンチャント体力値バイタリティ強化エンチャントの魔術をそれぞれ掛けた。そして爺がセブンティーンの中に入れておいてくれたので認識阻害インヒビションの羽織りを脱ぎ捨てると一目散に獣人の元に向かった。

 その結果が奏して獣人のその鋭利な爪が、リーダーの喉を貫く寸前に獣人の手首を掴み凶行を止める事に成功したのだった。

 少女と取引相手達がいる場所までは50m程度離れていた。本来なら全力で走っても6秒は優に掛かる。
 だがそれではのは明白だった。
 故に少女は激化インテンス強化エンチャントをかけて疾走はしったのである。


 強化魔術の系統は現段階で3種類発明されている。

・持続性が高く効果が中程度の強化エンチャント
・持続性が中程度で効果が高い強化レインフォース
・持続性が低く効果が著しく高い激化インテンス

 それぞれ魔術である為に、編む魔力量や使い手の熟練度などで個人差はあるが、どの魔術を使うかは戦闘能力センスや経験則に委ねられる事も多い。
 特にヒト種は他の種族と比べると総じて個体の能力値ステータスが低い為に、戦闘を有利に進められない。


「ぐるるるぅル」
「何ンだ、テメェわ?」

「そいつをられちゃうと、アタシが困るから止めたのよッ!」
「だから、痛め付けるのはいいけど、ッ!」
「でえぇぇりゃッ!」

「ぐっはぁ」

 少女は獣人の手首を掴んだまま、獣人の質問とは(多分)違う解答を示した。そしてそのまま流れるように身体を回転させると、アクロバティックなまでの動きで回し蹴りローリングソバットを見舞っていった。

 アクロバティックな回し蹴りローリングソバットを側頭部に見舞われたその衝撃に因って、獣人はリーダー格の男を離してしまい、呼吸が出来ずもう半分以上意識を失っていたリーダー格の男は、お尻から地面に落ちていった。


ゴんっ

「うっ。げふぉっげふぉ」

「うわっ、痛ったそ~」

 尾てい骨から地面に落ち、鈍い音とうめき声を上げながらせ返っているリーダー格の男を見て少女は冷めた表情で呟いていた。噎せ返っているのがお尻から落ちた衝撃に因るモノか、息が出来なかったからなのかはこの際

 当のリーダー格の男は、お尻から地面に落ちた痛みで意識を取り戻した様子だった。しかしそれ以前に既に腰が抜けていた為に立ち上がる事も出来ず、お尻を引きりながら後退あとずさるのが精一杯の採用出来る行動だったようだ。

 拠って真っ先に少女の魔術で拘束され周囲には結界が展開されていった。逃げられないと思われるが本当に逃げられても困るし、戦闘に巻き込まれて死なれても困るので妥当と言えば妥当な選択と言えよう。

 リーダー格の男は何やら言っている様子だったが、少女はその一切合切を無視した上で獣人達の方へと向き直っていく。
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