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第一節 再会
第175話 ケルミネラ・ミルフォード・ブックビレッジ
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「ねぇ!爺は何で、ルミネが魔族だって解ったの?ルミネはヒト種そのものなんでしょ?」
ルミネの外見に於いて魔族の特徴は全く無い。
下心満載の男性からチヤホヤされそうな身体つきで、整った凄くキレイな顔立ちと言う事を除けば普通のヒト種の人間そのものだ。
それなのに、爺はルミネが魔族である事を一目見ただけで解ってしまった事が少女にとっては疑問だった。
まぁ、それは爺の正体を見破ったルミネも同じと言えば同じなのだが……。
「お嬢様、それは魂の在り方を見たからで御座います。魂が在る者ならば、その者の善し悪しが分かるので御座います」 かちんっ
「ルミネ?どうかした?」
「なんでもありませんわよ?おほほほ」
ルミネは爺の発言にイラっして、「厶っ」とした顔をしていたが、少女が徐ろにルミネの方を振り返ったので、直ぐに表情を元に戻し何事も無かったアピールをしていた。
「それなら、普通の人間にはルミネが魔族だって事は分からないわね」
「お嬢様、恐らくはその通りかと思われます」
「よしッ!決めたッ!」
「御子様?どうされたんですの?何を決められましたの?」
「ねぇ、ルミネ!家出してきたって言ってたけど、これから先の事は何か考えてる?」
「えっ?何も考えておりませんわよ?ただ家出がしたかっただけですもの。それにお父様の顔も見たくありませんし、王都に戻っても連れ戻されてしまいますから」
ルミネの解答が、少女はもの足りない気がしたが概ね想定内だった。
最初、少女はルミネが何かを更に隠していると感じていたが、それは杞憂だったと考え直した。
「それじゃあ、ルミネ、貴女もハンターをやりなさい!」
「御子様と同じようにですの?」
「えぇ、そうよ!だって考えてもみて?アストラル体なら食事は飽くまで嗜好品だったけど、マテリアル体にとって食事は嗜好品じゃなくて、生活必需品よ。そしてそれを買うにもお金が必要なの。お金持ってないでしょ?」
「あぁ、なるほど、お腹のあたりにある不快感や、病でもないのに目眩がするのはそのせいだったのですわね?それに当然人間界で使えるお金は持っておりませんわ」
「えっ?ちょっとルミネ、人間界に来てから何も食べてないの?」
「えぇ、そうですわよ?だって、生活必需品だなんて知りませんでしたもの」
「爺、お願い出来るかしら?」
「お嬢様の言い付けで御座いましたら、致し方ありません。ご用意致します」
そう言うと爺はキッチンへと下がり、軽食を手早く用意している様子だった。
その間にも2人の会話は進んでいく。
「あっ!そうだ!でも、ルミネの家名は人間界で出したらダメよ!」
「えっと、それはどう言う意味ですの?」
ルミネは目を白黒とさせながら、少女に対して言の葉を投げていく。ルミネはまだ20歳だと言っていた。
ならば知らなくて当たり前だ。少女もリアルでは知らないのだから。
それは惑星融合前にテルースで起きた事件の事だ。
魔族が「破壊と混沌を齎す絶対悪」と人間界で教えられる契機になった出来事だ……。
だが、その契機は惑星融合後の今になっても言い伝えられているし、当時の事を知っている人達は今でも魔族を憎んでいるのだ。
「ルミネの家名は人間界だと知ってる人は知っているのよ。だからそれだと直ぐに「魔族」である事がバレてしまうの」
「やはり魔族は人間界では嫌われているんですのね?」
「快く思っていないコトだけは確かよ。だから念の為、家名は出さない方がいいわね」
少女が話した事は決して脅しなどではない、だがルミネを前に「魔族が絶対悪」なんてコトが言えるハズもなかった。
しかし、契機の出来事にルネサージュ家が加担した伝承も文献もないが、「魔族」について調べている研究者は確かにいる。
だから、「魔界」の有力貴族であるルネサージュ家を知ってる可能性は低くない。
「だから、ルミネの家名は隠して、この国に新しく戸籍を作りましょう!」
「どうかしら?ハンターやってみない?」
「わたくしにも出来ますの?」
「アスモデウスさんより武勲を稼げる人が出来無いワケ無いじゃない!」
「ふふふ。そう言えばそうでしたわね。そんなコトもありましたわね」
「分かりましたわ。ハンターやりますわ。お金も稼げますし、人間界のコトも勉強出来ますし、お父様から逃げれますものね。やってみせますわ!」
ルミネは比較対象に出された「アスモデウス」より上という内容に特に気分を良くした様子だった。
「じゃあ、ルミネの名前から決めましょッ!」
「ルミネ的には名前の案が何かある?」
「突然言われても考え付きませんわ。御子様にお願いしますわ。御子様がわたくしの名付け親になって頂けませんこと?」
「名付け親って…、あははは。それじゃ、変な名前は付けられないわね」
少女はルミネの名前を考える為に頭を捻らしていく。そしていくつか候補を出した結果、1つの名前に決定したのだ。
「ケルミネラ・ミルフォード・ブックビレッジ」
人間界でのルミネの名前として少女が考案したのがこの名前だった。
当のルミネもそれで納得した様子で、その名前が人間界に於ける「名前」として神奈川国に戸籍登録される事になる。
ルミネの外見に於いて魔族の特徴は全く無い。
下心満載の男性からチヤホヤされそうな身体つきで、整った凄くキレイな顔立ちと言う事を除けば普通のヒト種の人間そのものだ。
それなのに、爺はルミネが魔族である事を一目見ただけで解ってしまった事が少女にとっては疑問だった。
まぁ、それは爺の正体を見破ったルミネも同じと言えば同じなのだが……。
「お嬢様、それは魂の在り方を見たからで御座います。魂が在る者ならば、その者の善し悪しが分かるので御座います」 かちんっ
「ルミネ?どうかした?」
「なんでもありませんわよ?おほほほ」
ルミネは爺の発言にイラっして、「厶っ」とした顔をしていたが、少女が徐ろにルミネの方を振り返ったので、直ぐに表情を元に戻し何事も無かったアピールをしていた。
「それなら、普通の人間にはルミネが魔族だって事は分からないわね」
「お嬢様、恐らくはその通りかと思われます」
「よしッ!決めたッ!」
「御子様?どうされたんですの?何を決められましたの?」
「ねぇ、ルミネ!家出してきたって言ってたけど、これから先の事は何か考えてる?」
「えっ?何も考えておりませんわよ?ただ家出がしたかっただけですもの。それにお父様の顔も見たくありませんし、王都に戻っても連れ戻されてしまいますから」
ルミネの解答が、少女はもの足りない気がしたが概ね想定内だった。
最初、少女はルミネが何かを更に隠していると感じていたが、それは杞憂だったと考え直した。
「それじゃあ、ルミネ、貴女もハンターをやりなさい!」
「御子様と同じようにですの?」
「えぇ、そうよ!だって考えてもみて?アストラル体なら食事は飽くまで嗜好品だったけど、マテリアル体にとって食事は嗜好品じゃなくて、生活必需品よ。そしてそれを買うにもお金が必要なの。お金持ってないでしょ?」
「あぁ、なるほど、お腹のあたりにある不快感や、病でもないのに目眩がするのはそのせいだったのですわね?それに当然人間界で使えるお金は持っておりませんわ」
「えっ?ちょっとルミネ、人間界に来てから何も食べてないの?」
「えぇ、そうですわよ?だって、生活必需品だなんて知りませんでしたもの」
「爺、お願い出来るかしら?」
「お嬢様の言い付けで御座いましたら、致し方ありません。ご用意致します」
そう言うと爺はキッチンへと下がり、軽食を手早く用意している様子だった。
その間にも2人の会話は進んでいく。
「あっ!そうだ!でも、ルミネの家名は人間界で出したらダメよ!」
「えっと、それはどう言う意味ですの?」
ルミネは目を白黒とさせながら、少女に対して言の葉を投げていく。ルミネはまだ20歳だと言っていた。
ならば知らなくて当たり前だ。少女もリアルでは知らないのだから。
それは惑星融合前にテルースで起きた事件の事だ。
魔族が「破壊と混沌を齎す絶対悪」と人間界で教えられる契機になった出来事だ……。
だが、その契機は惑星融合後の今になっても言い伝えられているし、当時の事を知っている人達は今でも魔族を憎んでいるのだ。
「ルミネの家名は人間界だと知ってる人は知っているのよ。だからそれだと直ぐに「魔族」である事がバレてしまうの」
「やはり魔族は人間界では嫌われているんですのね?」
「快く思っていないコトだけは確かよ。だから念の為、家名は出さない方がいいわね」
少女が話した事は決して脅しなどではない、だがルミネを前に「魔族が絶対悪」なんてコトが言えるハズもなかった。
しかし、契機の出来事にルネサージュ家が加担した伝承も文献もないが、「魔族」について調べている研究者は確かにいる。
だから、「魔界」の有力貴族であるルネサージュ家を知ってる可能性は低くない。
「だから、ルミネの家名は隠して、この国に新しく戸籍を作りましょう!」
「どうかしら?ハンターやってみない?」
「わたくしにも出来ますの?」
「アスモデウスさんより武勲を稼げる人が出来無いワケ無いじゃない!」
「ふふふ。そう言えばそうでしたわね。そんなコトもありましたわね」
「分かりましたわ。ハンターやりますわ。お金も稼げますし、人間界のコトも勉強出来ますし、お父様から逃げれますものね。やってみせますわ!」
ルミネは比較対象に出された「アスモデウス」より上という内容に特に気分を良くした様子だった。
「じゃあ、ルミネの名前から決めましょッ!」
「ルミネ的には名前の案が何かある?」
「突然言われても考え付きませんわ。御子様にお願いしますわ。御子様がわたくしの名付け親になって頂けませんこと?」
「名付け親って…、あははは。それじゃ、変な名前は付けられないわね」
少女はルミネの名前を考える為に頭を捻らしていく。そしていくつか候補を出した結果、1つの名前に決定したのだ。
「ケルミネラ・ミルフォード・ブックビレッジ」
人間界でのルミネの名前として少女が考案したのがこの名前だった。
当のルミネもそれで納得した様子で、その名前が人間界に於ける「名前」として神奈川国に戸籍登録される事になる。
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