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36 神様なんていないものとして
しおりを挟むリーナ視点です
 ̄ ̄  ̄
(この世に神様なんているのかしら)
最近良く考える事。
(神様というものに良心はあるのかしら)
すべてを疑いたくなってしまう。
自分の不幸を今すぐにしても他人のせいにしたい。
そう、震えが止まらない体と頭で考えた。
「ひとりぼっち、ね」
仕方がないことだ。
私は前世からこうなることが決まっていた人間だ。
それは如何あがいても泣けない体で如何泣いたとしても変わらないことだ。
なのに、こんなにも心が痛くて泣きそうになってしまうのは何故なのだろうか
«他の人との心の距離»
それを前回の人生からもよく考えていた。
主に、ルゼ様と関わるために考えていたことだけれど……
最近どんどん自分自身が遠ざかっているような気がするのだ。
ああ、
声にだして、
「なんで私は今、生きているんでしょうか…神様」
神様に問いかけた。
笑ってしまう。
信じたいけど信じられない神という存在に身を委ねてしまいたい。
生きている理由なんて誰にもわからないのに。
こんな気持ちになり続けるのなら、もうあのときに完全に死ねたら良かったのに…と、そう思って願ってやまなかった。
これが夢なんじゃないのかとよく思う。
すべてが夢で、私は別の世界でもう眠っていると…
優しくて、ふわふわしていて、温かい家庭に恵まれた…素敵な女の子の夢
そんなバカみたいなことを考えて心臓の痛みを堪えた。
──────────
___ギィ
「ニャー」
「あら…?」
前に出会った黒猫にまた会ってしまった。
…というか部屋に入ってきた。
なんで?
でも、なんだか今はしあわせな気持ちだ。
本当に夢なのではないのか?
そう思ってしまうほどに、
__ブワっ
「うっ、」
目の前が急に眩しくなった。
「な、に?」
「大丈夫?お姉さん」
「………え?」
眩しさに目をつぶって、開いた先には黒髪の美しい少年が立っていた。
「…誰?というか、なんで、私の部屋に?え?」
焦りすぎて言葉が詰まる
すると少年は一回りしたあとに猫になった
「……え???」
「僕は、ルタ。お姉さんが気になってついてきちゃった。変種族なんだよねー素の姿はこれだよー」
家に全く知らない人が入っているのに、焦りと不安もありながらも何だか落ち着いた気持ちもあって…
不思議な感覚
というか…
「変種族…ね…」
_変種族とは素の見た目とは別の種類の生き物に変身できる種族のことだ。
私の周りは魔法を使える人間や種族違いの人間が存在する地域とは違うから、こうして変身姿を目で見るのは生まれてはじめてだ。
なのに、何故か懐かしい気持ちにもなった。
「お姉さん、死んじゃ駄目だよ?」
「っ、きゅ、急に何?」
「お姉さん、いますぐにも死にたいような顔をしているよ」
心も読めてしまうのか?
「心は読めないけどね」
どっちなんだ?
「死なないわよ、ただ……」
「ただ?」
「もう、終わりにしたいとは思うけどね」
「それって、死…
「…、あの、ルタ。呼び捨てするわよ…えっと、あの…私と一緒にいてくれない?」
するとルタはうーんといった顔をして、
「契約ってこと?」
「ん?契約って?」
「一緒にいるってこと!」
「そうなの?じゃあ、契約ね」
「了解!即決めだよそんなの!!」
ふふ、
これで、ひとりぼっちではなくなる。
その喜びから静かに笑ってしまった
「お姉さん、かわいいね!」
「っ、え?」
「笑顔がかわいい!」
「あ、ありがとう…」
こんなにばっさりと言う人間と出会ったことがなかったからびっくりしてしまった。
「あなたも、かわいいわよ」
「当たり前でしょ!」
「ふふ、」
自信満々で可愛くて、自分が親だったらこんな子大切に大切にする……って、え?あ、
「…ねえ、ルタ」
「なぁに、お姉さん」
「親御さんは?」
「っ…ははっ、いるけど教えないー」
「そうなの」
「うん」
話したくないこともあることは知ってる。
だから、わざわざ必要以上に問いかけなかった。
「契約うれしーなー!」
「契約ってやばいやつじゃないわよね?」
「やばいやつって…!ははは!!お姉さん以外に僕が見えなくなるだけだよ!!!」
「っ?!それって、やばいやつじゃ…
「やばくないー!」
「で、でも」
「うるさいお口にはー
ちゅー!」
_ちゅ
っ?!?!?!?!!!!
「ひゃっ?!」
「どしたのお姉さん!」
「どしたのじゃないわよ!!キス、するなんて、!」
「普通だよ!契約者なんだし!」
「そ、そうなの?」
「そうだよ!!」
これがリーナの初キスだった。
「…僕、お姉さんのこと好きになっちゃったかもー」
「冗談はやめなさい」
「えー」
ここまで楽しい会話は初めてかもしれない
時計を見たらもう深夜の2時を回っていた。
「もう寝るわね」
「はやー!」
「早くないわよ、遅いわ」
「一緒に寝よー!」
「えっー…」
まぁ、いいか、幼い彼なら
「…仕方ないわね」
「やったー!おやすみお姉さん!」
「おやすみ」
オルにも説明しなくてはいけないし…
朝、早めに起きようかしら
そんなことを考えているうちに
ふっと、
眠りについた
「かわいいリーナ」
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