スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと

文字の大きさ
52 / 105
4巻

4-2

しおりを挟む
「他は分からないですけど、一文字目の字に見覚えがあります」
「そう……『愛』の文字を」
「あい?」
「それなら間違いないでしょうね」

 レイナは深くうなずき、両目を閉じて天井を見上げた。
 再びリリアーヌに向けた視線には、力がこもっていた。

「百年以上経って……ようやく来たのね……」
「レイナ様?」

 リリアーヌが訝しげに見つめる。
 しかし、レイナはそれ以上語らない。たっぷり時間をかけて二枚目の手紙に目を通し、やおら立ち上がった。
 部屋の片隅に移動し、薄い桃色の花をいたわるように手にとる。
 甘い香りがただよう中、リリアーヌが恐る恐る尋ねた。

「ノトエア様と同じ文字を使う人と会いたいとおっしゃっていましたけど……」
「ええ、言ったわね」

 レイナがはかなげに笑って尋ねる。

「その方の名前は?」
「サナトです。フェイト家の勧誘を断ったと……あれ? 確かレイナ様が入学させたとお話されてたのは……」
「どういう偶然かしら」

 レイナは目を丸くした。引き出しから別の紙を取り出し、しげしげと眺める。

「フェイト家の推薦すいせんで入学させた人物と同じだわ。色々と思惑があって、指導者会を飛ばして入れたのだけど……まさか、探していた人物とは思わなかった」
「……彼はどういう人なのですか?」

 リリアーヌが身を乗り出した。

「気になる?」
「……かなり気になってます。文字の件もありますけど、彼、《ファイヤーボール》の威力が桁違けたちがいにすごいんです。たぶん……私と同系統のスキルを持っています。それも、はるかに強力で制御の利く……」
「そう」
「レイナ様なら、そのあたりのこともご存知なのかな、と」

 上目遣いで窺うリリアーヌに、レイナはゆっくりとかぶりを振った。

「そんなスキルを持っているとは聞いてないわ。ただ、異常なレベルとだけは耳にしてる」
「レベル40を超えているのですか?」
「そのあたりは、指導者会にすら下ろしていない情報よ。リリアーヌが私の跡を継いで、学園長にでもならない限り話せない。ただ、彼もステータスカードに映らない《神のスキル》を持っているのでしょう。いずれにしろ、私も尋ねたいことがあるし、会ってみなくちゃダメね」
「すぐにでも?」
「いいえ。すでに彼は私の一存で入学させたことで、注目を集めているでしょ? その上、個人的に国王が呼び出したなんて話は、名家を刺激することにもなるし、無用な軋轢あつれきを生むわ。時期的に、『光矛祭』があるから、そこで接触しましょう。でも――」

 レイナは、言葉を切って微笑を浮かべた。

「同じ《神のスキル》持ちが気になるなら、リリアーヌは使い方を教えてもらったら? 話しぶりだと悪い人じゃなさそうなんでしょ?」
「……怖がられないでしょうか?」
「そんなに可愛い顔をしたリリアーヌの何を怖がるのよ。隠してる耳だって怖がるようなものじゃないわ。悪魔がわらって近づくんじゃないんだから。有名な話だからリリアーヌの事件だって知ってるでしょうし、気軽に『魔法を教えてください』って頼んでみなさい」
「……モニカがいないから、きっかけが難しくて」
「文字の話をした時点で顔つなぎはできたんでしょ?」
「あれは……レイナ様のためにと思って、いてもたってもいられなかったんです。今思えば、新入生に大胆すぎることをしたなって消え入りたいです」

 リリアーヌが自信なさげに視線を彷徨さまよわせる。
 レイナが「もう」と口にした。すばやく立ち上がって彼女に近づき、小さな背中を軽く叩いた。
 乾いた音と共に、リリアーヌがびくりと体を強張こわばらせる。

「臆病で怖がりさんは、なかなか直らないのね」



 第四話 敬意をもって


 レイナとリリアーヌは互いに近況を報告しあった。
 ほとんどは多忙なレイナの愚痴ぐちだったが、言い聞かせるように日々の王政の苦労を伝える彼女の心中には、いずれ訪れる新たな時代の担い手を育てたいという想いもあっただろう。
 小一時間、話をしていただろうか。リリアーヌの手作りであるヌガーと呼ばれるソフトキャンディに、二人で舌鼓を打ちながら、紅茶を楽しんでいた時だ。
 強いノック音が室内に響き、レイナが表情を引き締めて立ち上がった。
 やってきたのは面識のない一人の憲兵だった。厳しい顔つきが、扉の隙間から覗いた。

「陛下、例の獣が――」

 リリアーヌが聞き取れた言葉はわずかなものだ。しかし、良くない話であることは、レイナの表情から明らかだった。
 憲兵が何かを報告し、レイナがささやくように質問をする。
 リリアーヌは話の内容をおもんぱかり、この場から立ち去ろうと腰を上げた。

「陛下、公務の邪魔になりますので――」
「待って、リリアーヌ」

 レイナは振り向かずに制止した。
 談笑していた時と違う、強くりんとした言葉にリリアーヌは動きを止めた。
 まるで、言葉そのものに強制力が存在するかのようだ。
 百年以上の治世。その重みの片鱗へんりんを感じた。

「リリアーヌ、少し用事ができたのですが、良い機会ですから一緒に来てください」

 ゆっくり振り返ったレイナの表情には微笑が浮かんでいた。
 リリアーヌはつばみ込み、無言で頷いた。


 ***


 レイナとリリアーヌを挟む形で、六人の集団の足音が規則正しく廊下に響いていた。
 ただの廊下ではない。切り出した頑丈がんじょうな石で四方を固めた石の通路だ。
 地下であることを示す多分な湿気が石の表面をうっすらとらし、ランプの明かりを冷え冷えと反射している。

「目的地はこの先です」

 レイナの通りの良い声が壁に反響し、憲兵達の緊張が一気に高まった。
 リリアーヌは不安に駆られて口を開いた。

「どこに向かっているのですか? 王城の地下にこんな場所があるなんて……」
「得てして重要な施設には表に出ない場所があるものです。用途は極秘のろうであったり、緊急時の避難路であったりと様々ですが、詰まるところ、公にできない部分が地下に集まるのです」

 硬い口調で言ったレイナの横顔は、すでにリリアーヌが知るものではなかった。
 百年もの間、国王として清濁せいだく併せ吞んできた孤高のハイエルフは、視線を固定したまま歩いている。
 角を曲がると、石の回廊が深く地下に下りていた。闇がぽっかり口を開けているようだ。
 リリアーヌが恐る恐る覗き込んだものの、何も見えなかった。
 すると、隣で何か準備をしていた憲兵の手元が光った。淡い光が六人の影を大きく石壁に映した。

「ここから下は、さらに使わない施設です」

 レイナが言い終えると同時に、何かが衝突する音が響いた。すぐ側だ。それも真下だ。
 一度。二度。
 続いて石を削るような不気味な音が断続的に続く。
 リリアーヌが視線を暗がりに向けて体を強張らせた。制服のすそをぎゅっと握りしめると、温かい手にすくわれた。

「大丈夫よ、リリアーヌ。あなたに危険はないわ。私が後継者を危険に晒すような真似をするはずないでしょ?」

 優しく微笑んだレイナがリリアーヌを落ち着かせるように言った。お茶目な気配を漂わせた、よく知るレイナの口調だ。
 ほっと安堵あんどの息を吐いた時に、再び重い衝突音が響いた。
 レイナは大げさに肩を落とした。

「ほんと乱暴なんだから」

 うんざりした顔で言うと、「さあ、行きましょう」とリリアーヌの手を引いた。


 時間はかからなかった。
 ぐるりと円を描くように建造された石の回廊を進むと、大きな鉄扉の前にたどり着いた。
 開けて中に入ると教室の三倍ほどの大きさの空間がある。
 地面の数か所にランプが置かれ、互いを補うように周囲を照らしている。壁には真新しいハルバードが立てかけられ、魔法使い用のロッドも数本存在した。
 中央には十人を超える憲兵が待機していた。誰もが厳しい表情を浮かべている。
 全員知らない顔かと思ったが、一人だけ面識のある近衛兵長がいた。
「次期国王にゴマをすっているんですよ」と毒気のない口調で冗談を言って笑っていた彼の顔は、真剣そのものだ。
 彼は入室したレイナの姿を目で捉えると素早く駆けてきた。
 リリアーヌを一瞥いちべつしてから、きびきびした動きでレイナに敬礼を行った。
 すぐさま残りの憲兵も同様の動きを見せた。

「ご苦労様、ブラン。状況は最悪ね?」
「丸一日眠ったように動かなかったので調査を進めていたのですが、今しがた動き出すようになりました。その際、調査に当たっていた三名が攻撃を受けて殉職しました」
「そう……私の名で手厚く埋葬してあげてください」
「ありがとうございます。それで……調査の結果ですが、率直に申し上げて、何も進展していません」

 ブランが苦々しげに眉を寄せ、き捨てるように言った。

「レベル30台の冒険者パーティで互角。物理攻撃では上級以上のスキルでようやく傷がつく硬さです。魔法は上級のものすらほとんど効果が見られません」
「……分かってはいたけど結果は変わらずか。手強いわね」
「地下を破壊してしまうので、達人級のスキルや魔法を試すわけにはいきませんが、効果は限定的かと思われます」
「ブラン、早計よ。それを確かめに私が来たのだから。運よく捕縛ほばくできたチャンスを逃すわけにはいかないわ」

 レイナはそう言って胸を張った。
 自信に満ちた表情に、隣でリリアーヌが憧れの目を向けたが、ブランは心配そうに声を落とした。

「陛下自ら危険な敵と相対することには反対です。よろいも身につけておられません」
「その話は全員に説明したはずでしょう? それに私は大軍の前に出たことだってあるし、鎧が必要ないこともよく知ってるはずよ」
「しかし……」
「心配してくれるのは嬉しいけれど、大事な実験でもあるし、偶然足を運んでくれた私の後継者に見せる意味もあるの。だから……ね?」

 レイナは目尻を下げてブランを見つめた。
 ブランがレイナの真っ直ぐな視線に根負けし、まぶたを閉じて大きくため息をついた。そして、後ろに控えた十数人の憲兵に振り向き、「陛下のご意思は固いようだ」と告げた。
 門をふさぐように横に並んでいた兵達が、ざっと道を開けた。
 リリアーヌが、あっ、と息を呑んだ。
 憲兵の全員が、この先にレイナを進ませたくないという意思表示を隊列で示していたことを、ようやく理解したのだ。

「ありがとう、みんな。心配かけてごめんね」
「そう思っていただけるのなら、危険な真似はおやめ下さるか、せめて私を連れて行ってください」
「大事な部下を巻き添えにしたくないから、また今度ね。さあ、リリアーヌ行くわよ」

 歩き始めたレイナの背中を、ブランは再びため息と共に見送った。



 第五話 魔の法が魔法なら


 レイナの「開けてちょうだい」という言葉に憲兵達が頷き、扉の両側に移動した。
 いつでも行けます、と頷いたブランが鉄扉に力を込めた。
 その様子を見ながら、レイナが朗々と声をつむいだ。
 とても異質な呪文だ。

「奏上の言……高天原たかまがはら御座おわす神々よ。小さき私に諸々の禍事まがごと、一切の罪穢つみけがれを振り払わんとする強さをお貸しください」

 レイナの体をおおうように、わずかなかすみが生じた。室内の薄明かりを受けて、ぼんやりと光を屈折させている。
「よし」と腰に手を当てて満足げに胸を張った彼女は、リリアーヌを見つめた。

「《神格法一式・白闘衣》」

 その言葉と同時に、リリアーヌももやに覆われた。
 不思議そうに片方の手を動かし、首を回して自分の背中側を確認した彼女は、隙間なく体にまとわりつく物体に指先を伸ばした。
 ほんのわずかに触感が残った。ほどよいぬるま湯が体に当たる感覚に近いものだ。
 何度も指で靄を突くリリアーヌにレイナが微笑みかける。

「すぐにこの感覚に慣れるわ。さあ、行きましょう」

 二人は鉄扉をくぐり、カビと土の匂いが混じりあった空間に足を踏み入れた。
 中央に、人間の腰から下程度の大きさの赤黒い生き物が鎮座していた。
 リリアーヌは大きく目を見開いた。一度も見たことがない生物だ。
 横にした卵に近い体型。細すぎる足が六本。鋭利な鉤爪かぎつめのような足先が、地面をつかんでいる。
 背中には、酒瓶をさかさにして突き刺したようなとげ
 顔とおぼしき場所には瞼のない異様に大きな丸い一つ目。表面は透き通っており、奥に覗く漆黒の瞳は影を見ているようで感情を感じさせない。
 リリアーヌは得体の知れない存在に背筋が冷たくなった。

「レイナ様、あれは一体何ですか?」
「私達は、『赤鋼の獣』と呼んでいるわ。心配しなくて大丈夫よ。リリアーヌは私の《神格法》で守っているから。それより……また動かなくなったようだけど、死んだふりが上手うまいから気をつけなさい。油断して近づくと危険よ」
「『赤鋼の獣』ですか?」
「ここ数年の間に現れた、あの赤黒い肌を持つ敵の総称よ。鎧みたいな光沢が表面にあるのが特徴でね、大きさにバラつきもあって、運よく捕縛できたあれは、『敏捷型びんしょう』と呼んでいるわ」
「敏捷型?」
「ええ。動き出すとなかなか素早いの。さて、どうしようかしら。さっきまで動いていたのは間違いないようだけど」

 レイナは『赤鋼の獣』の背後の壁に、素早く視線を向けた。
 爪で散々にきむしった跡が残っている。

「あの跡は?」
「赤鋼は、壁を削って土や石を体内に取り込んで飛ばすの。一種の《土魔法》と似たようなものかしら。……うーん、やっぱり少し攻撃して様子を見ようかな」

 レイナはそう言ってから両手を合わせ、指をからませた。
 リリアーヌの真剣な眼差しを感じたのだろう。「ん?」と視線を向けたレイナは微笑を浮かべた。

「《神格法》を間近で見るのは初めてだったかしら?」
「……は、はい」
「そう。教えてあげたいけれど、たぶんこれは、世界でもう私くらいしか扱えないの」
「レイナ様だけ?」

 首を傾げたリリアーヌにレイナは頷いた。

「《神格法》は純粋なハイエルフだけが使えるスキルなのよ。誰でも使える魔法とは対極に位置するスキルだと私は考えてる。魔に属する法を魔法と呼び――」
「神に属する法が……《神格法》」
「正解よ。それは前に教えたかしら」

 レイナがリリアーヌの頭を優しくでた。

「《神格法》はMPを消費しない。属性もなければ、形もない。大昔の文献によれば、人間の中にも使い手がいたそうだけど、火や水といった魔法の方が目に見えて分かりやすいのでしょう。すぐに使い手はいなくなったそうよ。汎用性はあるけど、地味だからね」
「で、ですが、《神格法》を使えるレイナ様は誰よりも強いと……そんなスキルが地味だなんて」
「目に見えないものより、見えるものを信じる。これは人間のさがよ。お金で買える魔法と違って、使えるようになるまでに時間もかかるしね……さあ、余計な話は、おしまい。そろそろ仕掛けるわ。リリアーヌは念のため、私の後ろに」

 レイナが悲しげな顔を振り払って、リリアーヌの前に出た。
 みるみる表情を引き締め、組み合わせた両手に力を込めた。まるで鬼気迫る祈祷きとうのようだ。

「《神格法五式・みづち》」

 リリアーヌの真横を巨大な何かが通り過ぎた。目には見えないがそう感じた。
 風圧と聞きなれない風音。
 重量のある物体が、うなりをあげて『赤鋼の獣』に向かったのだ。
 途端、まったく動かなかった獣の黒い瞳に青い光がともった。細い六本の足の関節が一瞬曲がると素早く動き出した。

「寝ていても危険は察知するみたいね」

 苦々しげなつぶやきが聞こえたと同時、獣が左に跳んだ。体の大きさを考えても、すさまじい跳躍力だ。
 獣がいた場所が吹き飛び、室内が揺れた。一直線に太くえぐられた跡ができあがっていた。
 獣はドーム型の部屋の石壁に逆さの体勢で難なく着地すると、青色の瞳をぎょろりと動かして、さらに跳んだ。

「加減したとはいえ、五式は欲張りすぎか」

 レイナが目で追いかけながら、再び手を組んだ。

「《神格法四式・とおし》」

 上部の空間が揺らぎ、リリアーヌが顔を上げた。
 光を屈折させた何本もの線が見えた。だが、目をこらした時には何もなかった。
 代わりに耳に届いたのは轟音ごうおん。間近に何かが降り注いだような音だ。
 獣が張り付いていた壁が爆散し、砂礫されきが舞った。やりで突いたような無数の穴が残っている。
 リリアーヌが、「レイナ様、すごいです!」と歓声を上げた。
 だが、レイナは「まだよ」と逆の壁をにらみつけている。リリアーヌが息を呑んだ。
 獣が変わらず無感情の瞳を向けていた。

「四式もかわせるのね。この短期間で成長した? いえ、こいつが特殊?」

 ぼそぼそと自問するレイナの視線の先で獣が動いた。
 大きな青い瞳の下で、だらりと顎が垂れ下がったように口が開く。そこから何かが飛び出した。大小さまざまな石礫いしつぶてだ。
 リリアーヌは声を上げる暇がなかった。すさまじい速度だ。
 石壁に次々とめり込んだ様が威力を物語っている。
 しかし、レイナは動じない。無言で体に当たる石礫を観察しているだけだ。
 彼女を覆う靄はそれらをすべて弾き、白い肌には傷一つつかなかった。
 流れ弾のような石がリリアーヌにも飛んだが、同じく靄に弾かれた。
 これが、部屋に入る前にレイナが使った《白闘衣》の効果だろう。

「《神格法三式・しゃくじ》」

 獣の体が傾いた。リリアーヌにはどんな攻撃か分からなかったが、六本の足のうちの一本が折れ曲がっていた。千切ちぎれかけている。
 獣の瞳にあせりが浮かんだ。
 動く足を使ってなんとか跳躍しようと体勢を立て直す。と、連続して衝突音が聞こえた。

「ようやく捕まえた。たしかにこれは兵には荷が重いわね」

 レイナが安堵の息を漏らし、リリアーヌが驚愕きょうがくの表情を浮かべた。
 獣の足のすべてが一瞬のうちに使い物にならなくなっていた。

「三式は速度重視だから」

 レイナは両手を組み合わせた。

「本当はもっと調べたかったけど、自爆されるとかなわないし……《神格法五式・みづち》」

 重量のある物体が空から降ってきたような音が響いた。
 獣が見えない何かに押しつぶされ、平たい塊へと姿を変えた。
 そして、光の粒子へと変わり、淡い輝きの中にドロップアイテムが残された。
 レイナは、「ふう」と短く息を吐いて近づいた。それはリリアーヌも知るアイテムだった。

「魔法銃……ですか?」

 リリアーヌの問いにレイナが頷いた。
 探るような目つきで銃口を覗き込み、ひっくり返して取っ手を小突く。
 何が気になるのだろう、と思ってリリアーヌは首を傾げた。

「珍しい魔法銃なのですか?」
「いいえ、普通の魔法銃よ。ギルドでも売ってる普通の武器。でも、だからおかしいの」
「……どういうことですか?」

 レイナが魔法銃を手に持ち、リリアーヌに向けた。

「この魔法銃のトリガーを引くとどうなると思う?」
「込めた魔法が出る、ですか?」
「そうよ。リリアーヌは不思議に思わない? 魔法を武器に閉じ込める技術なんて、どこの国にもなかったはずなのよ」
「え?」

 レイナは自分でも再確認するように続ける。

「確かに魔石のエネルギーを使う道具はあるわ。ランプもそうだし、調理器具もそう。魔法を強化する道具もある。でもね……魔法銃は根本的に違うのよ。誰かが唱えた魔法をどうやって閉じ込めて維持しているの? 同じような武器がある? そんな不思議な武器を新種の『赤鋼の獣』が、どうして落とすと思う?」

 レイナは魔法銃を様々な角度から眺める。
 大きい銃口は、吸い込まれるように黒い。
 リリアーヌは記憶にある武器や道具を次々と思い浮かべた。だが、レイナの問いに対する答えは浮かばなかった。


しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。