“彼”

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4.意識する

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初対面した日の夜、またメールが来た。
お互い会ったときの印象や、次の約束なんかもした。
『並ぶと思ったより小さいんだな』
そう言われて、何だか照れてしまったのを覚えてる。

それからもほぼ毎日のようにメールしていた。
たまに来ないと、あれ?と思ったりもした。

少しずつ好きになり始めてたんだと思う。

でも私は相手の気持ちがわからないと自分の気持ちに踏み込めなかった。


そんなある日、たまたま校内で駿二を紹介した友達“あっちゃん”に会った。

久しぶりに会ったあっちゃんは私を見つけるなり大きな声で呼んできた。

「あっ、駿くんの彼女だ♡おーい!」

「ちょっとちょっとちょっと!あっちゃんやめて?付き合ってないから!みんな見てるし…もうっ…///」

「え!まだ付き合ってないの?でも時間の問題でしょ?」

そんなことを言われてしまったら、今まで以上に意識してしまう。

〈時間の問題なの?あっちゃんは何か聞いてるの?〉

そう思って返事に困っていると、あっちゃんはまた「駿くんの彼女またね♡」と言って自分のクラスへ消えていった。

しかも、よく考えたら今日の放課後はまた駿二とあの階段で会う約束をしている日。
絶対挙動不審になってしまうよー!


そうは言っても時間は待ってくれず、あっという間に放課後になってしまった。
でもまたもやなかなか行く気になれず、教室で意味もなく机の中や鞄の中をガサガサ物色していた。

「れい、今日東さんと約束してる日でしょ?そんなわかりやすくソワソワしてないで早く行かないと!もうかなり待たせてるでしょ。」

そう声をかけてきてくれたのは、同じクラスで恋愛仲間のひろチー。
ひろチーは年中片想い中の恋愛体質。
人の恋愛話も大好きで、私はよく相談に乗ってもらっていた。

そしてひろチーが言うことはもっともで、すでに私は20分近く駿二を待たせていた。

元々駿二のクラスは終わるのがいつも早くて、私のクラスは遅いことが多い。
さらに私が教室でうだうだしていたので、駿二が終わってから時間はかなり過ぎていたのだ。

あっちゃんに言われたことと、待たせてしまっている罪悪感で気持ちはさらに落ち着かない。
だけど、ひろチーに背中を押されるかたちで私は教室を出た。



※捕捉※

【あっちゃん】
幼なじみで、お互い地元を離れた今でも年に数回会うほどの仲。
付かず離れずな私たちだけれど、この時はクラスが違ったので毎日会うわけではなかった。
駿二とあっちゃんは親同士が仲が良くて、子どもの頃からの仲らしい。

【ひろチー】
あっちゃんと同じく幼なじみでもあり、恋愛仲間(笑)
今でも私が地元に帰ると連絡をくれる。
男友達も多い分、なかなか恋愛対象になれないのがこの頃のひろチーの悩み。
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