“彼”

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9.彼の家

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『今日は昇降口で待ってて。』


駿二からそうメールが来たのはお昼休みだった。

彼の家に行く。
高校生だった私は、今ほどその重大さに気づいていなかったけれど、やっぱり緊張はしていた。
友達にも言わなかった。

緊張はしたけど、HRが終わると慌てて帰る準備をして昇降口に向かった。
待たせちゃ悪いなと思ったのと、あまり人に見られるのもやだったから。

相変わらず駿二のクラスは終わるのが早くて、慌てて行ったのに私の方が後だった。


「待たせてごめんね!」

「いや、大丈夫。今日はそんなに待ってないよ!じゃあ行くか。」


そう言って、別館の裏の方へ歩いていく。


「こっちなの?」

「うん、この坂道上がったところだから。」


言われた方を見ると、曲がりくねった緩やかな上り坂があった。


「ちなみに、うち誰もいないと思うから。」

「え、いない時に勝手にお邪魔してもいいのかな?」

「いいよ。そのうち帰ってくるだろうし。」

「ちょっと気が引けるけど、帰られたらご挨拶させてね。」

「そんなんいらんと思うけど、わかった。」


そんな話をしていたら、あっという間に家に着いた。
ほんとに近い…!
5分もかかってない?
でも坂道でちょっと息切れしそうになったのはここだけの秘密(笑)


家に着くと駿二が玄関を開けてスタスタと入っていった。
私はどうしたらいいのかわからず、玄関に立ち尽くした。
勝手に入っていいものなのか?

玄関横の二階への階段を上ったところで、駿二が私が着いてきていないことに気づいた。


「え?上がってきて。」

「あ、うん。何も言わずに行くから待ってた方がいいのかと思っちゃった。」

「そんなわけないだろ(笑)」

「じゃあお邪魔します。」


これが初めてのお宅訪問だった。



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