“彼”

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11.駿二のお母さん

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いきなり駿二のお母さんの声がして、一気に緊張した。
たぶんお母さんも玄関の私の靴を見て声をかけたんだろう。


「ちょっと行ってくるわ。」

「あ、私も行った方がいいかな?」

「いや、いいよ!ここにいて。」

「でも…」

「じゃあ帰る時にたぶん出てくるだろうから、その時に挨拶してやって。」

「わかった。」


駿二が一階に降りてから少しすると、また階段下からお母さんの声が聞こえた。


「ゆっくりしてってね~!」

「お邪魔してます!ありがとうございます!」


いきなりでびっくりして、大きな声で慌ててそう応えた。
言い終わると同時くらいに駿二が戻ってきた。


「私ほんとに行かなくて良かった?」

「あぁ、大丈夫。彼女だって言っといた。」


それから私が帰るまで、なんとなく駿二がそわそわしている気がした。
その時は“お母さんが帰ってきたからかな?”と思っていた。


帰る時間になっても、二人してなかなかこたつから出られなかった。
まだまだ一緒にいたかった。
重い腰を上げて階段を降りていく。


「ちょっと送ってくるわ~!」


駿二が声を掛けると、にこにこ顔の優しそうなお母さんが出てきてくださった。


「これ、礼ね。」

「初めまして、礼です!お邪魔しました。」

「礼ちゃん、また来てね。」

「ありがとうございます。失礼します。」


お母さんに挨拶をして、駿二とまた学校まで歩いた。
別館の裏に着いた途端、駿二の足が止まった。
そこは普段から人気のない場所。
さらに夕方ともなれば、なおさらだった。


「東さん?」

「お願いがあるんだけど…」

「お願い?」

「うん。…キスしていい?」












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