“彼”

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19.駿二の卒業

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卒業までの間、結局駿二はほとんど教習所で、会えない日も続いていた。


そして、3月1日。
ついに駿二は卒業の日を迎えた。


『卒業おめでとう!卒業式の駿二の返事、楽しみにしてるよ♪笑』

『ありがとう。普通だと思うけどな。』


朝、私からメールでおめでとうを伝えた。
卒業式後は特に約束はしていなかった。
きっと色々予定もあって忙しいだろうと思ったから。
ほんとは私も駿二と写真を撮ったりしたかったけど。


「ねぇ!東さんいるよ!声かけなくていいの?」

「あぁ~…いーや!部活の人と一緒にいるみたいだし。邪魔しちゃ悪いよ。」


友達からの助け船にもそう返した。

実際駿二は私が思っていた以上に人気があったらしい。
いろんな人に囲まれて、私が話しかけられるような雰囲気じゃなかった。

でも次の日に少し後悔することになる。


次の日は放課後また駿二の家で会っていた。


「ねぇ、制服ってどうした?」

「制服?後輩にあげたよ。ボタンとか全部なくなってたけど。」

「ボタン誰にあげたの?」

「覚えてないよ。制服ごと取られて、あとで見たらボタンなかったから。」

「嘘でしょ!?」

「いや、ほんと。」

「私に第2ボタン取っておこうとか思わなかった?」

「礼欲しかった?」

「いや、別にいいけど…」


第2ボタンは欲しいとは思ってなかったけど、なんとなく悲しかった。
そして帰り際に、この日も駿二の胸で泣いた。
私も泣きたいわけじゃないけど、ふと考えると涙が出てくる。


「俺が行くまで礼は毎日泣きそうだな。」

「私が泣くと困る?」

「困りはしないけど、心配にはなるな。」

「じゃあもう泣かない!」

「それは無理だろ?」

「…うん。」

「泣いてもいいよ。ただ、俺の前で泣いてな?じゃないと何もしてあげられん。」

「わかった。ありがとう。」


駿二が受け止めてくれたこと、そしてもらったペンダントの存在がこの時の私の支えだった。






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