“彼”

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58.社会人

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4月。
私は社会人になった。

初めは臨時からだったけど、元々バリバリ働きたいという願望もない。
有難いことに実家から通えたので、何の問題もなかった。


とはいえ、新生活に慣れるまでは余裕もあまりなかったと思う。
駿二のことも後回しというか、気になることもなかった。
新生活でガラッと生活が変わったし、元彼のことなんて吹っ切れていたのかもしれない。

そんな感じで、職場にも上司にも恵まれたこともあり、無事に1年目を終える事が出来た。



が!
こうなると現れるのが駿二だ。

ホント何なんだろ…
忘れかけると思い出させる。
ある意味、天才的なタイミングだと思う。
まぁ今回は駿二も意図したことではなかっただろうけれど…


就職して2年目に入った頃。
職場に来ていた業者さんが、担当が変わったと挨拶に来たのだ。

狭い田舎なのでよくある話だが、元々担当していたのは私の同級生(♂)だった。
まあまあ仲良かったので上司にからかわれたりもしていたけれど、私たちの間にそんな空気は1㎜足りともないのが実際のところ。

変わったのかぁと思いながら新しい担当の後ろ姿を見て、私はまさかと思った。



でも、どう見てもあの後ろ姿は駿二だ。


実は、変わると聞いて全く駿二を予想しなかったわけではなかった。
駿二が職場に出入りしている業者さんと同じところに就職しているのは、前に駿二から聞いて知っていたから。
でもそんな偶然あるわけないとも思っていた。

仕事中なのに思いがけず過ぎて、身体全体がどっくんどっくん波打つのを感じた。
ここで会っていいのか、会わない方がいいのか…

駿二は私がここに就職していることも知っていたけど、とにかく私は背を向けて目が合わないようにした。
















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