喫茶店の日常

黒歴史制作者

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喫茶店のある二十四時間section2

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     それは白夜が店を立ち去ってからそう時間は経っていなかったときのことである。

  突如として開店前の扉が慌ただしく開かれる。

  初瀬はまたかという様な目を扉に向けるが、同時に違和感があるのか声を発することをせずにいた。

  そこには、少年とその少年に背負われた少女がいる。

  少年は特筆してあげる様な特徴をしていない、黒髪黒目をしていた。

  少女は目を瞑っているが、ところどころにかすり傷を負っている。目の色は分からないが髪は濡れ羽色であった。

  だが、初瀬はその少年に背負われている少女の方には見覚えがあったのか少女の方を見て驚いた顔をする。

  少年は入ってきて早々に焦った様子で初瀬に声をかける。

「この少女を匿ってくれ!」

  だが、初瀬はそれに対する答えを言わない。そのセリフは聞こえていて、考えている様な顔をする。

  少年も初瀬が、考えていることが伝わったのか、深呼吸をした後事情を説明する。

「俺もこの少女については何も知らない。偶然森の中で傷だらけになって意識を失っているのを見つけただけだから」
「……」
  詳しくという様な目を初瀬は向ける。少年は何も喋らない初瀬に怖気づく様な顔を一瞬するも、すぐに話し始める。

「ただ、俺が見つけてすぐに男が現れてそこから離れれば見逃してやる、と言ってきた。離れずにいた俺ごと男は殺そうとして、守ってくれた女性にここに行けと言われた」

  説明を聞いた初瀬は少年をどうするか決めたのか、少年に背を向けて奥の扉を開けて少年の方を向く。
  少年も初瀬の意図することに気づいたのか初瀬についていく。






  そこは同時刻の森の中、獲物を逃した男は舌打ちをしていた。

「ちっ、邪魔をするな」

  その男の声に反応して白夜は返す。

「それはこっちのセリフかな。貴方がやろうとしていることは私にとってもとても困ることだからね。『公共機関』としてではないけど関わらせてもらうよ」

  白夜はセリフに淀みはないが、男の視界から外れて木に凭れている。
  男はそのセリフを聞き嘲笑う。

「馬鹿馬鹿しい。お前が困ったところで関係はないな。だって、お前はもう死ぬのだから」

  白夜はその言葉に何かを察したのか、凭れていた木から離れようとする。
  だが、間に合わずに凭れていた木に磔にされ、白夜は動かなくなる。

「ちいっ、無駄な時間を取らされた。あの神を殺すのにここまで邪魔が入るとは思わなかった」

     その男は白夜が動かなくなった事を確認してからその場を離れる。


「……離れたか。まったく、相性が悪いにも程があるな」
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