喫茶店の日常

黒歴史制作者

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喫茶店のある二十四時間section3

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  初瀬は真夜中の森で周りを見渡す。月の光を木々に遮るため、夜目が利かないと何も見えないはずだ。だが、初瀬には夜闇も関係はないのか昼間と変わらない様に振る舞う。
  少年は単にこの森に来慣れているからだろう。

「俺達を助けた人を探しているのか?」
『ええそうね。そう言うのが一番分かりやすいわ』

  周りを見渡して意識して見れば判別がつく程度に分かりやすいものだが、一方向だけ血痕が続いていた。その方向に二人は進むと、そこには血塗れになって目を閉じている白夜がいた。

『ちょっと! 寝ていないで速く起きなさい!』
「ちょっ、急になにやって……」

  初瀬は白夜を見つけた途端に襟を掴んで揺さぶる。血塗れなことは初瀬にとって関係ないらしい。

「うう、何かな。いきなり、って初瀬ちゃんか。 何でここにいるのかな」

  白夜は目を覚ますと、初瀬がいたことで慌てた様子で襟を掴んでいる手を外そうとする。血塗れな割には動けているためそこまで重症ではないのだろう。

『貴女がこの少年を送り込んできたからでしょうが!』
「かなり怒っているようだけどね、信託側は私は受けとれないから喋ってくれないかな」
「貴女が送り込んで来たんでしょうが、何でこんなところで寝ていたのかしらねえ!」

  この状態で悠長に寝ていた白夜に、初瀬は怒りが収まらない様子で怒鳴る。
  初瀬が話したその言葉は少年にとっては耳慣れていて認識できない言葉だっただろう。初瀬の話す言葉はその様に定義された言語であるからだ。
  初瀬のその言葉に白夜はやる気のなさそうに答える。

「流石に偶然いただけのその少年に任せるしかなかったんだよ。私は時間を稼ぐので手一杯だったからね。それに、どういう能力として使ってるのかは分からなかったけど、あの属性は厄介どころじゃなさそうだし」
「時間稼ぎ、ね。それは成功したのかしら? してない様に私には見えるのだけれど」

  白夜にとって初瀬の言葉は図星だったのだろう、ばつが悪そうな顔をして初瀬に言う。

「辿り着いてはいるようだけどね。時間稼ぎは失敗かな、攻撃手段が分からなかった。敵には傷を与えられなかったし、ね」
「貴女、何のためにここに来たのかしら? 役立たずじゃない」
「ごもっともで」

  ここまでが、白夜が起きてからの会話である。流れる様に話題が変わっていくその会話には、初瀬の言葉が分かっていてもついていくのは至難の業だろう。
  少年ははっとした様に初瀬に声をかける。

「い、いやでも、彼女は俺と少女を助けてくれたから」
『「そいつは貴方達を助けただけよ、それも私のところに行けと投げているじゃない。本来なら代わりにもう少しあっても良かったものを」』
「言っては悪いけれども、私はただ貴方にいくはずだった攻撃を止めただけだよ。他は何もしていない」

  白夜を擁護しようと声をかけるも、初瀬と助けた本人であるはずの白夜からも斬り捨てられる。
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