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容疑者?
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「ナイフで刺されたのは此処かな?」
事件現場の近くで独り言を呟く。其処には県警が付けたと思われる印があった。
俺が其処に向かって手を合わせていると、誰かがやってきた。
「そうなんですよ。本当に怖い世の中になりましたよね?」
その人は頼んでもいないのに、事件の一部始終を語り始めた。どうやら事件を見物していた野次馬の一人だったようだ。
「一度目はナイフで、二度目は自転車に乗った犯人に体を蹴られたそうです」
(何? コッチは犯人が自転車に乗っていたのか?)
「可愛そうに女子高生はその後でナイフで刺されたようです」
一方的に話し掛けてくる人をいい加減に扱うことも出来ないので、近くのコンビニに移動することにした。
「ところで、何故俺に?」
それが一番知りたい。
「あっ、ホラさっき東京の刑事さんと居たでょ。だからもしかしたら埼玉県側の事件を捜索している刑事さんかもと思って……」
(ん?)
どうやら彼は俺を現役の検察官だと勘違いしたようだ。俺は少し気を良くした。
「いや、俺は検察官じゃないんだ。そうだったことはあるけどな」
何か不都合なことがあってからでは遅いので、正直に打ち明けるこっにした。
「えっ、違うんですか? 何だ、話して損した」
「熊谷で探偵事務所を構えている磐城と申します。石井とは同期でした」
俺は慌てて名刺を差し出した。
「あっ、あの刑事さん石井さんと言うのですか?」
その発言を聞いてヤバイと思った。個人情報を教えてしまったからだった。
「熊谷の探偵さんが何故此処に?」
その人は俺に興味をもったようだ。実は俺もそうだった。何だが今回の事件に無関係だとは言い難い情報を沢山持っている人だと思ったのだ。それは元刑事の勘とでも言える代物だった。
「埼玉の事件は自転車に乗っていた人が女子高生をナイフで刺したそうだ」
俺は知り得た情報を携帯電話で早速石井に報告した。
『ああ、その通りだ。その点がコッチのはとは違う』
「でも、もしかしたらソッチの事件で奪われた自転車かも知れないだろ?」
俺は間髪入れずに言った。
『あっ、そう言うことか? 流石元凄腕刑事』
石井はきっと受話器の向こうで頷いている筈だった。
「俺に話し掛けてきた人は事件の一部始終を知っているかのようだった」
『何だ、その一部始終って?』
「何だか判らないけど、今回の事件に無関係だとは言い難い情報を沢山持っている人だと思ったんだ。石井の言う通り、それが元刑事の勘なのかもな」
俺はあの時感じたことを石井の発言で確かな物だと再認識した。
「あっ、ごめん。一つ報告があった。その人は石井が警視庁の刑事だと知ってたよ。だから近くに居た俺を現役の刑事だと思い込み話し掛けてきたようだ。何だか怪しくないか?」
『って言うことは、俺達のことを見張っていたのか? ん? 東京で自転車を奪われたってことも知っているのか?』
「そうだよ。だったら余計……」
『確かに怪しい。もしかしたら事件関係者? 容疑者かもな』
石井は俺の直感を裏付ける発言をした。
「実は俺もそう思った。石井、これから会えないか?」
俺の提案に石井はオーケーを出してくれた。
俺達はその日の内の再会を約束した。
「どうせなら事件と同じ時間帯が良いと思って……。現場百辺かな?」
石井は笑っていた。
自転車に乗った高校生が蹴られたという黄昏時。
同じ場所に二人は居た。
「『自転車に乗った犯人に体を蹴られたそうです』とソイツは言っていた。何? コッチは犯人が自転車に乗っていたのか? って俺は思った。『可愛そうに女子高生はその後でナイフで刺されたようです』ってソイツは続けた」
俺はあの時の言葉を石井に報告した。
「東京では自転車用のヘルメットが蹴られた高校生を守ってくれたそうだ。だから軽い怪我で済んだ。でもまだ入院中だ」
「昔、俺が通っていた中学でもヘルメットは義務化されていたよ。本当は恥ずかしかったけど、役に立っているんだな」
今、自転車用ヘルメット着用の義務化が進められている。要請だけどけど何れはそうなると思っている。だから通学用のヘルメットを探してみたいと思っていた。
「ところでその人の特徴は?」
石井はメモを用意した。
「それなら、これ。偶然に写り込んでいた」
俺はカメラ代わりにしているがらガラケーを石井に見せることにした。
「古いの使ってるな」
石井がバカにしているのが解った。
「カメラ代わりになるし、目覚ましにもなるし、計算も出きる。優れ物だよ」
そんな石井に対して俺は自慢気に言ってやった。
「そうだ。ちょっと署まで行ってくれないか? 確か机の中にガラケーが入ってた」
石井が何をしようとしているのかが解った。きっとそのガラケーにコピーするのだと思った。
案の定石井は俺にガラケーを渡した。
「すまん。充電も頼む」
俺の顔の前で手を合わせる石井を見て、無視は出来ないと車内用の充電器を取り出した。
幸い同じメーカーだったからすぐに充電は開始された。
俺は又エンジンを掛けて事件現場に直行した。
「流石だな」
「いや、すぐに必要になるかも知れないからだ」
俺はスマホ用の充電器も石井に見せた。
「準備万端だな」
石井は感心頻りだった。
そんなことをしている内に橋の近くの交差点に着いた。
俺は石井のガラケーにSDカードを移し、例の男性の顔写真と埼玉の事件現場の映像を本体にコピーして渡した。
「悪いが充電は自分でやってくれ」
そう付け加えて……。
「ちょっと待ってくれ。この男なら見覚えがある」
石井はメモを取り出した。
「間違いない。捜査現場を見ていたヤツだ」
俺は石井が確信を得たのではないかと思った。
事件現場の近くで独り言を呟く。其処には県警が付けたと思われる印があった。
俺が其処に向かって手を合わせていると、誰かがやってきた。
「そうなんですよ。本当に怖い世の中になりましたよね?」
その人は頼んでもいないのに、事件の一部始終を語り始めた。どうやら事件を見物していた野次馬の一人だったようだ。
「一度目はナイフで、二度目は自転車に乗った犯人に体を蹴られたそうです」
(何? コッチは犯人が自転車に乗っていたのか?)
「可愛そうに女子高生はその後でナイフで刺されたようです」
一方的に話し掛けてくる人をいい加減に扱うことも出来ないので、近くのコンビニに移動することにした。
「ところで、何故俺に?」
それが一番知りたい。
「あっ、ホラさっき東京の刑事さんと居たでょ。だからもしかしたら埼玉県側の事件を捜索している刑事さんかもと思って……」
(ん?)
どうやら彼は俺を現役の検察官だと勘違いしたようだ。俺は少し気を良くした。
「いや、俺は検察官じゃないんだ。そうだったことはあるけどな」
何か不都合なことがあってからでは遅いので、正直に打ち明けるこっにした。
「えっ、違うんですか? 何だ、話して損した」
「熊谷で探偵事務所を構えている磐城と申します。石井とは同期でした」
俺は慌てて名刺を差し出した。
「あっ、あの刑事さん石井さんと言うのですか?」
その発言を聞いてヤバイと思った。個人情報を教えてしまったからだった。
「熊谷の探偵さんが何故此処に?」
その人は俺に興味をもったようだ。実は俺もそうだった。何だが今回の事件に無関係だとは言い難い情報を沢山持っている人だと思ったのだ。それは元刑事の勘とでも言える代物だった。
「埼玉の事件は自転車に乗っていた人が女子高生をナイフで刺したそうだ」
俺は知り得た情報を携帯電話で早速石井に報告した。
『ああ、その通りだ。その点がコッチのはとは違う』
「でも、もしかしたらソッチの事件で奪われた自転車かも知れないだろ?」
俺は間髪入れずに言った。
『あっ、そう言うことか? 流石元凄腕刑事』
石井はきっと受話器の向こうで頷いている筈だった。
「俺に話し掛けてきた人は事件の一部始終を知っているかのようだった」
『何だ、その一部始終って?』
「何だか判らないけど、今回の事件に無関係だとは言い難い情報を沢山持っている人だと思ったんだ。石井の言う通り、それが元刑事の勘なのかもな」
俺はあの時感じたことを石井の発言で確かな物だと再認識した。
「あっ、ごめん。一つ報告があった。その人は石井が警視庁の刑事だと知ってたよ。だから近くに居た俺を現役の刑事だと思い込み話し掛けてきたようだ。何だか怪しくないか?」
『って言うことは、俺達のことを見張っていたのか? ん? 東京で自転車を奪われたってことも知っているのか?』
「そうだよ。だったら余計……」
『確かに怪しい。もしかしたら事件関係者? 容疑者かもな』
石井は俺の直感を裏付ける発言をした。
「実は俺もそう思った。石井、これから会えないか?」
俺の提案に石井はオーケーを出してくれた。
俺達はその日の内の再会を約束した。
「どうせなら事件と同じ時間帯が良いと思って……。現場百辺かな?」
石井は笑っていた。
自転車に乗った高校生が蹴られたという黄昏時。
同じ場所に二人は居た。
「『自転車に乗った犯人に体を蹴られたそうです』とソイツは言っていた。何? コッチは犯人が自転車に乗っていたのか? って俺は思った。『可愛そうに女子高生はその後でナイフで刺されたようです』ってソイツは続けた」
俺はあの時の言葉を石井に報告した。
「東京では自転車用のヘルメットが蹴られた高校生を守ってくれたそうだ。だから軽い怪我で済んだ。でもまだ入院中だ」
「昔、俺が通っていた中学でもヘルメットは義務化されていたよ。本当は恥ずかしかったけど、役に立っているんだな」
今、自転車用ヘルメット着用の義務化が進められている。要請だけどけど何れはそうなると思っている。だから通学用のヘルメットを探してみたいと思っていた。
「ところでその人の特徴は?」
石井はメモを用意した。
「それなら、これ。偶然に写り込んでいた」
俺はカメラ代わりにしているがらガラケーを石井に見せることにした。
「古いの使ってるな」
石井がバカにしているのが解った。
「カメラ代わりになるし、目覚ましにもなるし、計算も出きる。優れ物だよ」
そんな石井に対して俺は自慢気に言ってやった。
「そうだ。ちょっと署まで行ってくれないか? 確か机の中にガラケーが入ってた」
石井が何をしようとしているのかが解った。きっとそのガラケーにコピーするのだと思った。
案の定石井は俺にガラケーを渡した。
「すまん。充電も頼む」
俺の顔の前で手を合わせる石井を見て、無視は出来ないと車内用の充電器を取り出した。
幸い同じメーカーだったからすぐに充電は開始された。
俺は又エンジンを掛けて事件現場に直行した。
「流石だな」
「いや、すぐに必要になるかも知れないからだ」
俺はスマホ用の充電器も石井に見せた。
「準備万端だな」
石井は感心頻りだった。
そんなことをしている内に橋の近くの交差点に着いた。
俺は石井のガラケーにSDカードを移し、例の男性の顔写真と埼玉の事件現場の映像を本体にコピーして渡した。
「悪いが充電は自分でやってくれ」
そう付け加えて……。
「ちょっと待ってくれ。この男なら見覚えがある」
石井はメモを取り出した。
「間違いない。捜査現場を見ていたヤツだ」
俺は石井が確信を得たのではないかと思った。
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