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スキンヘッド・原田学
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「あれっ!? 此処は何処だ?」
ふと天井を見た。
目覚めた場所は全く見覚えがなかった。
「此処は何処だ? 俺は今何処にいる?」
パニクるってのはきっとこう言うことなのだろう。
俺はさっきからずっと同じ言葉を呟いていた。
でも何故焦っているのかもさえも解らない。
それはきっと、俺の深部にある何が感じていたのかも知れない。
俺は原田学。
一応、ミュージシャンだ。
以前はロックグループでギターを弾いていた。
でも今はエアーバンドだ。
腕を振るいたいに、それが出来ないジレンマと毎日戦っている。
だって俺は、メジャーデビューもしていたほどのテクニックを持っているんだ。
それなのに事務所の方針で縛られている。
マネージャーも抗議してくれたんだけど、社長が聞く耳を持ってくれないんだ。
だから暫くはボンドー原っぱなんてふざけた名前で売るしかないんだ。
この業界に入って来られたのは、マネージャーの力量なんだ。
それが過言ではないことは、以前所属していたロックグループを実績が証明している。
CDが売れない時代にデビュー曲がいきなりヒットしたんだ。
それだけのデータで一目瞭然だ。
だからマネージャーは又俺達に活躍してもらいたいと頑張っていたのだった。
マネージャーは木暮敦士(こぐれあつし)の声に惚れ込み、スカウトしてくれた。そしてインディーズとして売り出してくれたんだ。
インディーズとはアマチュアのことではない。
日本の音楽協会に席を置いているレコード会社に所属しているのがメジャーで、それ以外のレコード会社はインディーズと呼ばれている独立性の高いアーチストのことだ。
俺達が其処から自主製作のレーベルを発売出来るようにしてくれたのだ。
楽曲はオリジナルだ。
それは全て、俺達を支援してくれるファンと作り上げた物だ。
俺達のセオリーを……
肌で感じたソウルを、インパクトある言葉で綴ってくれた。
それらがあるから今があるには違いないけど……
マネージャーはボーカル一人ではなくて、全員をメジャーにさせてくれた。
だから足を向けて眠れないくらいの恩人だったのだ。
でも、木暮を失ってからのマネージャーは別人のようなのだ。
だから爆裂お遊戯隊なんて可笑しなグループ名にも目を瞑ってしまったのだった。
天井から目を移して驚いた。
俺の目の前に突然親友が現れたからだった。
それは二年前に怪死したはずの男だった。
「えっ!? あいつ何で此処に居るんだ?」
あまりの衝撃に声を上げた。
(アイツが此処に居るはずがない)
そう思いながらもう一度考えてる。
あいつはもうこの世にいない事実を……
「でもこのスキンヘッドは確かに、デパートの従業員用エレベーターの前で亡くなった俺の親友の木暮敦士だ」
俺は目に穴が開くほどその幽霊を見つめた。
怖いもの見たさにも程があるけど、それをやらないと何も始まらないと思ったからだ。
その時、違和感に気付いた。
(確かアイツはピアスだらけだったな)
俺はもう一度、目の前のスキンヘッドの男を見つめた。
(えっ!? 違う、これは鏡だ)
そう気付いた途端に総毛立った。
スキンヘッドだから髪の毛は無いのに、体中の毛という毛が騒ぎまくっていた。
「つまり、このスキンヘッドは俺か?」
声に出してから更に震え上がった。
木暮敦士の最期が頭を過ったからだった。
着うたやら何やらで全く売れなくなったCD。
だけど長年付いてきてくれたファンのお陰でヒットさせてもらったんだ。
勿論、マネージャーの戦略もある。
だけど、俺達のメロディを世間に知らしめるために頑張ってくれたんだ。
特に木暮の恋人だ。
『私はロッカーが好きなの。だからトコトン応援するね』
そう言ってくれた。
彼女がやってくれたのは目立つようにレイアウトすしてからCDを買って帰ることだ。
それと有線放送へのリクエストだ。
どんなに電話を掛けても一時間に一曲しか掛けてもらえない。それが有線放送の決まりだった。
彼女は本気だった。
俺達を売り出すためのアイデアを考え、実行してくれたのだ。
その上彼女は駆け出しのメイクアップアーチストだったから、『勉強させてもらっている』と言って代金取らないんだ。
俺達には嬉しいことだけど、大丈夫なのかって何時も心配していたんだ。
そんな彼女と木暮は結婚した。
幼馴染みの同級生。
その上、部類のロック好き。
木暮が彼女を生涯の伴侶に選んだのにはそれだけの意味があるんだ。
何も、髪結いの亭主になりたかった訳ではないのだ。
「木暮と同じってことは、俺もああなるのか?」
俺は震えながらも、周りを見てみることにした。
其処は見覚えがあった。
それは木暮の奥さんの実家と極似していた。
マネージャーは木暮の奥さんのことをあまり良く思っていなかったようだ。
子供の頃から気心を知っている仲なのに、グルーピーだと思い込んでいたのかも知れない。
グルーピーと言うのは一部の熱狂的なファンの総称ようなものだ。
中には関係者が用意した肉体を提供してくれる者さえいる。
あわよくば売り出し中のミュージシャンと結婚出来るかも知れないからだ。
マネージャーは品行方正で、かつ正統派のアーチストを目指していたのだ。
だから、グルーピーとかは置かない主義だった。
それはマネージャーの指示だった。本当のことを言えば、社長は欲求不満解消のために黙認していたらしいのだ。
木暮が彼女と結婚していることも承知の上だ。
でもマネージャーは公表するべきではないとした。
せっかくのチャンスを潰すべきではないとの主張だった。
マネージャーは彼女を誤解していたのだ。
メジャーデビューも決まり、着うた配信も始まった頃だ。
だから余計にナーバスになっていたのだろう。
新曲の発売イベントを兼ねたファン感謝デーはデパートのCD売場だった。
木暮はその会場にインする直前に奥さんに頼んでスキンヘッドにしてきたのだ。
『今まで金髪だったからきっと皆驚くぞ』
そう言って笑っていたんだ。
ところが……
ちょっと会場の下見に行っただけのはずが戻って来ない。
そして、あの従業員専用エレベーターの前で変わりすぎた遺体として発見されたのだ。
木暮の首の前には大きな鏡が設置されていた。
誰が置いた訳でもない。
偶然に其処にあったようだ。
(木暮はきっとこの鏡を見ながら死んでいったのに違いない)
あの時俺はそう思った。
木暮の目が、その鏡に釘付けになっているように感じたからだ。
俺は木暮が気の毒でならなかった。
実は、どうやら奥さんが妊娠中らしいのだ。
木暮はまだその事実に気付いていないようだ。
だから尚更、哀れだったのだ。
でもその後で奥さんが出産したとは聞いていない。
どうやら俺の勘違いだったのかな?
今でも奥さんはヘアーメイクアップアーチストとして大活躍しているのだ。
もし子供でも産まれていたら、俺が気付かないはずがないのだから……
俺は今、その木暮と同じスキンヘッドだった。
それはきっと木暮と同じ運命を辿らせようとする誰かの企みの気がした。
(あれっ!? そう言えば此処は?)
俺は思い出していた。
其処は、俺と木暮が子供の頃良く通った店だったのだ。
(つまり、此処は?)
それは想像を絶していた。
俺は気付かない内に、俺達の生まれ育った田舎に移動させられていたのだ。
(此処はきっと、木暮の奥さんだったヘアーメイクアップアーチストのMAIさんの実家に違いない)
俺の全てがパニくり始めていた。
俺は震えながら携帯を手にした。
俺を救ってくれる奴なら誰でも良かった。
『もしもし、木暮です』
(木暮!?)
俺は慌てて携帯の画面表示を見た。
其処には《木暮敦士》とあった。
どうやら俺は幽霊に掛けてしまったようだ。
(もしかしたら木暮が寂しくて俺を呼んだのか?)
行き着く先はきっと死だ。
俺の感性がそう悟った。
(あれっ!?)
鏡の中に何故だか不気味に光る物があった。
良く見ると、それはあの日……
木暮が亡くなる前に首に付けていた物だった。
それはゴールドスカルのペンダントヘッドだった。
(これは確かにあの時の物だ。きっと木暮が俺をあの世に呼ぶためにこれを付けさせたのだろう)
俺は泣きたい気持ちを押し留めて携帯の画面を見つめた。
(そう言えば木暮は、奥さんにこのチェーンをプレゼントして貰ったと言っていたな。もしかしたら……)
俺は今ハッキリと、この場所が何処なのか判った。
さっきの勘が当たっていたのだ。
やはり此処は木暮の奥さんの実家だった。
俺達が子供の頃良く通っていた美容院だったのだ。
(ってなると、木暮を殺した犯人は?)
想像しては頭を振る。
(そんなバカな、あの人が木暮を殺したなんて有り得ない!!)
そうは思っても心うらはら……
「お願いだ。木暮俺を助けてくれー!!」
それでも俺は携帯電話の向こうに居るはずの木暮の幽霊に向かって叫んでいた。
「お前、MAIの実家知っているだろ? 子供の頃良く通った美容院だ。今俺は其処にいる。お願いだから助けに来てくれー!!」
俺は携帯の向こうにいるはずの幽霊に向かって叫んでいた。
『それだったら、うってつけの人がいます。元警視庁の凄腕刑事がその近くで探偵事務所を構えていますが……』
「へ?」
俺は余りにも驚いたようだ。
「あれっ!? これ、木暮の携帯だよな?」
『兄は二年ほど前に亡くなりましたが……』
「兄?」
『はい。俺は木暮敦士の弟の悠哉(ゆうや)です』
「えっ、悠哉? もしかしたら、木暮の後を金魚の糞みたいに何時もくっ着いていた悠哉か?」
『金魚の糞とは酷いですよ。まー、そんな時もありましたが……。携帯の着信画面に名前が出てました。確か原田さんですね。是非其処へ行ってみてください』
木暮の弟はそう言った後で、さっき言っていた探偵事務所の住所を教えてくれた。
確かに此処とは近い。
俺は急いで其処へ移動した。
大通りから一本、中に入った道。
古い木造アパートの二階。
東側の窓に手作り看板。
《イワキ探偵事務所》は木暮の弟の言う場所に確かにあった。
でも此処へ辿り着くまでが大変だった。
誰も《イワキ探偵事務所》を知らなかったのだ。
探偵と言う職業は秘密を暴かなければならないからおおっぴらには出来ないのだろう。
犬や猫を探すだけなら問題はないけれど、浮気調査だとしたら顔を公には出来ないからだ。
だから俺は土地勘に頼った。
昔とった杵柄とでも言うのだろうか?
それは結構的を得ていたのだ。
どうやら二階にあるらしい。
それでも赤錆に覆われたアパートの外階段に躊躇する。
本当に木暮の弟の言葉を信じて良いのかと思った。
(こんな場所に本当元に凄腕の刑事がやっている探偵事務所なんかあるのかな?)
俺は益々震え上がった。
俺は慌てて、携帯の画像を確認した。
何か証拠になる物がないのかと探し回ったのだ。
でも不思議なことにマイピクチャには何も残されてはいなかった。
(嘘だろ?)
俺はもう一度其処を開けた。
カメラ、自動お預かりなど次々とアクセスする。
それでも駄目だった。
ふと、名刺と言う箇所が気になった。
其処を開けて驚いた。
木暮の奥さんのヘアーメイクアップアーチストのMAIさんの写真が収められていたからだった。
ふと天井を見た。
目覚めた場所は全く見覚えがなかった。
「此処は何処だ? 俺は今何処にいる?」
パニクるってのはきっとこう言うことなのだろう。
俺はさっきからずっと同じ言葉を呟いていた。
でも何故焦っているのかもさえも解らない。
それはきっと、俺の深部にある何が感じていたのかも知れない。
俺は原田学。
一応、ミュージシャンだ。
以前はロックグループでギターを弾いていた。
でも今はエアーバンドだ。
腕を振るいたいに、それが出来ないジレンマと毎日戦っている。
だって俺は、メジャーデビューもしていたほどのテクニックを持っているんだ。
それなのに事務所の方針で縛られている。
マネージャーも抗議してくれたんだけど、社長が聞く耳を持ってくれないんだ。
だから暫くはボンドー原っぱなんてふざけた名前で売るしかないんだ。
この業界に入って来られたのは、マネージャーの力量なんだ。
それが過言ではないことは、以前所属していたロックグループを実績が証明している。
CDが売れない時代にデビュー曲がいきなりヒットしたんだ。
それだけのデータで一目瞭然だ。
だからマネージャーは又俺達に活躍してもらいたいと頑張っていたのだった。
マネージャーは木暮敦士(こぐれあつし)の声に惚れ込み、スカウトしてくれた。そしてインディーズとして売り出してくれたんだ。
インディーズとはアマチュアのことではない。
日本の音楽協会に席を置いているレコード会社に所属しているのがメジャーで、それ以外のレコード会社はインディーズと呼ばれている独立性の高いアーチストのことだ。
俺達が其処から自主製作のレーベルを発売出来るようにしてくれたのだ。
楽曲はオリジナルだ。
それは全て、俺達を支援してくれるファンと作り上げた物だ。
俺達のセオリーを……
肌で感じたソウルを、インパクトある言葉で綴ってくれた。
それらがあるから今があるには違いないけど……
マネージャーはボーカル一人ではなくて、全員をメジャーにさせてくれた。
だから足を向けて眠れないくらいの恩人だったのだ。
でも、木暮を失ってからのマネージャーは別人のようなのだ。
だから爆裂お遊戯隊なんて可笑しなグループ名にも目を瞑ってしまったのだった。
天井から目を移して驚いた。
俺の目の前に突然親友が現れたからだった。
それは二年前に怪死したはずの男だった。
「えっ!? あいつ何で此処に居るんだ?」
あまりの衝撃に声を上げた。
(アイツが此処に居るはずがない)
そう思いながらもう一度考えてる。
あいつはもうこの世にいない事実を……
「でもこのスキンヘッドは確かに、デパートの従業員用エレベーターの前で亡くなった俺の親友の木暮敦士だ」
俺は目に穴が開くほどその幽霊を見つめた。
怖いもの見たさにも程があるけど、それをやらないと何も始まらないと思ったからだ。
その時、違和感に気付いた。
(確かアイツはピアスだらけだったな)
俺はもう一度、目の前のスキンヘッドの男を見つめた。
(えっ!? 違う、これは鏡だ)
そう気付いた途端に総毛立った。
スキンヘッドだから髪の毛は無いのに、体中の毛という毛が騒ぎまくっていた。
「つまり、このスキンヘッドは俺か?」
声に出してから更に震え上がった。
木暮敦士の最期が頭を過ったからだった。
着うたやら何やらで全く売れなくなったCD。
だけど長年付いてきてくれたファンのお陰でヒットさせてもらったんだ。
勿論、マネージャーの戦略もある。
だけど、俺達のメロディを世間に知らしめるために頑張ってくれたんだ。
特に木暮の恋人だ。
『私はロッカーが好きなの。だからトコトン応援するね』
そう言ってくれた。
彼女がやってくれたのは目立つようにレイアウトすしてからCDを買って帰ることだ。
それと有線放送へのリクエストだ。
どんなに電話を掛けても一時間に一曲しか掛けてもらえない。それが有線放送の決まりだった。
彼女は本気だった。
俺達を売り出すためのアイデアを考え、実行してくれたのだ。
その上彼女は駆け出しのメイクアップアーチストだったから、『勉強させてもらっている』と言って代金取らないんだ。
俺達には嬉しいことだけど、大丈夫なのかって何時も心配していたんだ。
そんな彼女と木暮は結婚した。
幼馴染みの同級生。
その上、部類のロック好き。
木暮が彼女を生涯の伴侶に選んだのにはそれだけの意味があるんだ。
何も、髪結いの亭主になりたかった訳ではないのだ。
「木暮と同じってことは、俺もああなるのか?」
俺は震えながらも、周りを見てみることにした。
其処は見覚えがあった。
それは木暮の奥さんの実家と極似していた。
マネージャーは木暮の奥さんのことをあまり良く思っていなかったようだ。
子供の頃から気心を知っている仲なのに、グルーピーだと思い込んでいたのかも知れない。
グルーピーと言うのは一部の熱狂的なファンの総称ようなものだ。
中には関係者が用意した肉体を提供してくれる者さえいる。
あわよくば売り出し中のミュージシャンと結婚出来るかも知れないからだ。
マネージャーは品行方正で、かつ正統派のアーチストを目指していたのだ。
だから、グルーピーとかは置かない主義だった。
それはマネージャーの指示だった。本当のことを言えば、社長は欲求不満解消のために黙認していたらしいのだ。
木暮が彼女と結婚していることも承知の上だ。
でもマネージャーは公表するべきではないとした。
せっかくのチャンスを潰すべきではないとの主張だった。
マネージャーは彼女を誤解していたのだ。
メジャーデビューも決まり、着うた配信も始まった頃だ。
だから余計にナーバスになっていたのだろう。
新曲の発売イベントを兼ねたファン感謝デーはデパートのCD売場だった。
木暮はその会場にインする直前に奥さんに頼んでスキンヘッドにしてきたのだ。
『今まで金髪だったからきっと皆驚くぞ』
そう言って笑っていたんだ。
ところが……
ちょっと会場の下見に行っただけのはずが戻って来ない。
そして、あの従業員専用エレベーターの前で変わりすぎた遺体として発見されたのだ。
木暮の首の前には大きな鏡が設置されていた。
誰が置いた訳でもない。
偶然に其処にあったようだ。
(木暮はきっとこの鏡を見ながら死んでいったのに違いない)
あの時俺はそう思った。
木暮の目が、その鏡に釘付けになっているように感じたからだ。
俺は木暮が気の毒でならなかった。
実は、どうやら奥さんが妊娠中らしいのだ。
木暮はまだその事実に気付いていないようだ。
だから尚更、哀れだったのだ。
でもその後で奥さんが出産したとは聞いていない。
どうやら俺の勘違いだったのかな?
今でも奥さんはヘアーメイクアップアーチストとして大活躍しているのだ。
もし子供でも産まれていたら、俺が気付かないはずがないのだから……
俺は今、その木暮と同じスキンヘッドだった。
それはきっと木暮と同じ運命を辿らせようとする誰かの企みの気がした。
(あれっ!? そう言えば此処は?)
俺は思い出していた。
其処は、俺と木暮が子供の頃良く通った店だったのだ。
(つまり、此処は?)
それは想像を絶していた。
俺は気付かない内に、俺達の生まれ育った田舎に移動させられていたのだ。
(此処はきっと、木暮の奥さんだったヘアーメイクアップアーチストのMAIさんの実家に違いない)
俺の全てがパニくり始めていた。
俺は震えながら携帯を手にした。
俺を救ってくれる奴なら誰でも良かった。
『もしもし、木暮です』
(木暮!?)
俺は慌てて携帯の画面表示を見た。
其処には《木暮敦士》とあった。
どうやら俺は幽霊に掛けてしまったようだ。
(もしかしたら木暮が寂しくて俺を呼んだのか?)
行き着く先はきっと死だ。
俺の感性がそう悟った。
(あれっ!?)
鏡の中に何故だか不気味に光る物があった。
良く見ると、それはあの日……
木暮が亡くなる前に首に付けていた物だった。
それはゴールドスカルのペンダントヘッドだった。
(これは確かにあの時の物だ。きっと木暮が俺をあの世に呼ぶためにこれを付けさせたのだろう)
俺は泣きたい気持ちを押し留めて携帯の画面を見つめた。
(そう言えば木暮は、奥さんにこのチェーンをプレゼントして貰ったと言っていたな。もしかしたら……)
俺は今ハッキリと、この場所が何処なのか判った。
さっきの勘が当たっていたのだ。
やはり此処は木暮の奥さんの実家だった。
俺達が子供の頃良く通っていた美容院だったのだ。
(ってなると、木暮を殺した犯人は?)
想像しては頭を振る。
(そんなバカな、あの人が木暮を殺したなんて有り得ない!!)
そうは思っても心うらはら……
「お願いだ。木暮俺を助けてくれー!!」
それでも俺は携帯電話の向こうに居るはずの木暮の幽霊に向かって叫んでいた。
「お前、MAIの実家知っているだろ? 子供の頃良く通った美容院だ。今俺は其処にいる。お願いだから助けに来てくれー!!」
俺は携帯の向こうにいるはずの幽霊に向かって叫んでいた。
『それだったら、うってつけの人がいます。元警視庁の凄腕刑事がその近くで探偵事務所を構えていますが……』
「へ?」
俺は余りにも驚いたようだ。
「あれっ!? これ、木暮の携帯だよな?」
『兄は二年ほど前に亡くなりましたが……』
「兄?」
『はい。俺は木暮敦士の弟の悠哉(ゆうや)です』
「えっ、悠哉? もしかしたら、木暮の後を金魚の糞みたいに何時もくっ着いていた悠哉か?」
『金魚の糞とは酷いですよ。まー、そんな時もありましたが……。携帯の着信画面に名前が出てました。確か原田さんですね。是非其処へ行ってみてください』
木暮の弟はそう言った後で、さっき言っていた探偵事務所の住所を教えてくれた。
確かに此処とは近い。
俺は急いで其処へ移動した。
大通りから一本、中に入った道。
古い木造アパートの二階。
東側の窓に手作り看板。
《イワキ探偵事務所》は木暮の弟の言う場所に確かにあった。
でも此処へ辿り着くまでが大変だった。
誰も《イワキ探偵事務所》を知らなかったのだ。
探偵と言う職業は秘密を暴かなければならないからおおっぴらには出来ないのだろう。
犬や猫を探すだけなら問題はないけれど、浮気調査だとしたら顔を公には出来ないからだ。
だから俺は土地勘に頼った。
昔とった杵柄とでも言うのだろうか?
それは結構的を得ていたのだ。
どうやら二階にあるらしい。
それでも赤錆に覆われたアパートの外階段に躊躇する。
本当に木暮の弟の言葉を信じて良いのかと思った。
(こんな場所に本当元に凄腕の刑事がやっている探偵事務所なんかあるのかな?)
俺は益々震え上がった。
俺は慌てて、携帯の画像を確認した。
何か証拠になる物がないのかと探し回ったのだ。
でも不思議なことにマイピクチャには何も残されてはいなかった。
(嘘だろ?)
俺はもう一度其処を開けた。
カメラ、自動お預かりなど次々とアクセスする。
それでも駄目だった。
ふと、名刺と言う箇所が気になった。
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