魔法しかなかったから物理で叩いた

麦茶畑の緑茶園

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生まれた瞬間に決められた人生

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 2XXX年、3月。日本。


 まだ寒さが残るそんな季節にある赤ん坊がこの世界に産まれた。色んな人間に期待され、待ち望まれていた赤ん坊は元気にその産声を響かせていた。


 母親の手に優しく抱かれ、父親にも泣きながら喜ばれた。
 海(かい)と呼ばれた赤ん坊は名づけられた名前に反応するように大きな声で泣いていた。


 そんな幸せそうな家族の元へと3人組の男達が現れる。両親はその姿をみて身構えたが、すぐに警戒を解き、大事そうに抱いていた我が子を3人組へと手渡した。
 男達の中の一人が赤ん坊を受け取りその場を去っていく。両親はその後ろ姿を心配そうに見つめながら祈っていた。


 今の日本では産まれてすぐの赤ん坊を魔導師の元に連れていく決まりがある。
 魔導師の手によって赤ん坊の魔力の計測、そして五大元素の有無を調べられる。


 魔力の計測は形だけのものである。
 赤ん坊の時点での魔力は微々たるものである。優秀なものは赤ん坊の時点で莫大な魔力を持つことが多いが、それは稀に現れる者だけである。現に赤ん坊の頃からそれだけの魔力を持ったものはここ数百年の間に2人しか産まれてこなかった。その2人は今では賢者としてその名を轟かせている。


 魔法という概念がいつ頃から生まれたのかは定かではない。気づいた頃には魔法を使える人間が増えていたのである。
 それに合わせて国も体制を整えた。魔法の力を最大限に発揮するために学校も作り、魔法を使った仕事さえも作った。


 この世界では魔法が全てだと言っても過言ではないだろう。


 魔法を、魔力を持たざる者はこの世では無価値とされる程、この世界の人間は魔法に頼り切っていた。


「今日産まれた赤ん坊です。どうぞ魔導師様、この者の魔力をお調べ下さいませ」
「また一人この世界に命が宿ったのですね。あぁ、神様。有り難き幸せ」


 赤ん坊を手渡された男はその足で病院近くの教会へと向かい、魔導師の元を訪れていた。
 赤ん坊を受け取った魔導師は赤ん坊を台座に乗せて魔法陣を浮かび上がらせる。金色に光り輝く魔法陣が赤ん坊を包み込み、弾けるように消えた。


「魔導師様?」
「……なんということ……この子は……」
「如何なされたのですか!?」


 魔導師は一歩、また一歩と赤ん坊から離れていく。その姿を見て何事かと男は駆け寄った。
 男に急かされるように魔導師はわなわなと口元を震わせながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
 その声は低く、吐き捨てるかのように酷いものだった。


「この赤ん坊は何も持たないもの……魔力など一欠片もありはしない……この世に生まれ落ちたのが間違いな程に!」


 その日、その赤ん坊は魔力を一切持たざる者としてこの世に生まれ落ちた。
 誰からも喜ばれて産まれた者が、誰からも疎まれる存在になった瞬間だった。


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