魔法しかなかったから物理で叩いた

麦茶畑の緑茶園

文字の大きさ
4 / 20
生まれた瞬間に決められた人生

2

しおりを挟む



「おかあさん……」
「海? どうし……あっ……」


 キッチンで皿を洗っていた母の元へと駆け寄り声をかける。母はいつもの優しい声で俺の名前を呼んで、タオルで手を拭きながらその場にしゃがみこんだ。
 どうしたの?と聞こうとしたが、俺の姿を見てすぐに察したのか口を閉ざしてしまった。その顔はとても悲しそうで、哀れみを持った表情だった。


 俺が魔力無しの一般人というハンコを押されてからは、両親には多大なる迷惑をかけてしまっているだろう。
 赤ん坊の時に行われた魔力計測の時に俺は魔力を保持していなかった。全くのゼロ。欠けらも無いと、その時の魔導師は言っていた。


 あれから何度か両親は魔導師の元へと行っては、何度も魔力計測をしてもらった。
 答えは産まれた時から変わらず、今でも俺は魔力無しのまま。
 魔力のない人間はこの世には居ないとされていたのが、俺が生まれたことによって事実が変わった。


 そんなこんなで俺は今年で7歳になる。
 普通ならばこの歳から魔法校と呼ばれる学校へと入学となるはずだった。魔力を持つ子供たちが魔導師や賢者達から魔法の使い方を教えて貰える機関。
 魔力を一切持たない俺にはなんも関係の無い話だが。


「また……いじめられたのね?」
「……魔力を持たないやつなんて生きてる資格ないって、柊夜くんが……」
「そんなこと気にしなくていいのよ。魔力を持っていようが、持っていなかろうが、貴方が生まれてきたことに意味があるの。貴方が生まれてきてくれて、ここまで元気に成長してくれて喜んでいる人だっているんだからね?」


 俺はボロボロになったズボンをギュッと両手で掴んだ。
 生まれてきてくれたことに意味がある。そんなことを言うのは両親と母方の祖父だけだ。父方の方の親戚は俺には目もくれず、早く次の子を産めと急かしている。魔力無しの子供などいらないと言われたのだろう。母はよく父方の親戚と揉めているのをよくこの目で見ていた。
 そのせいなのかは知らないけど、父は母の元へと帰ってこなくなった。


 俺がここまで元気に育ってきたのは母と祖父のおかげである。魔力を持たないものとして周囲の人間には罵声を浴びせられ、ことある事に俺のせいにされた。
 そんな俺の事を二人は疎ましく思うどころか、普通の子供のように愛してくれた。この二人がいるから俺がここまで生きてこれたのかもしれない。


「どこか怪我してるところはある?」
「おひざをすりむいちゃったの」
「そう……痛かったわね。今治してあげるからね」


 半ズボンの裾を持ち上げ膝の怪我の様子を見た母親の顔が一瞬で曇った。きっと、普通の転び方をしたのではないと分かってしまったのだろう。
 何があったの?とまでは母は聞いてこなかったが、表情から読み取れるのは怒りと悲しみだった。
 この怪我の原因はいじめっ子たちの中で水を氷へと変化させることの出来る魔法を持っていたやつが、俺の足元を凍らせて滑らせたせい。なんて言えるわけもない。


 母は俺の膝に手をかざして魔法陣を浮かべた。
 金色に輝く魔法陣は俺の膝を包み込み、じんわりと内側から温かくなっていく。それは数秒で終わり、母はもう治ったわよ。とニッコリと笑いかけてくれた。
 感じていたヒリヒリとした膝の怪我の痛みは無くなり、朝起きた時と同じ状態になっていた。
 母の魔法は偉大なり。


「夕飯の準備しちゃうから海はおじいちゃんと遊んでてね」
「はーい!」


 母にお礼を言ってから俺はいつもの場所にいるであろう祖父の元へと走り出した。
 後ろから母に部屋の中で走らない!と怒られたが。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...