魔法しかなかったから物理で叩いた

麦茶畑の緑茶園

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生まれた瞬間に決められた人生

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「おじいちゃーーん」


 祖父は一日の大半を書庫で過ごす。
 祖父は多趣味な人だ。少しでも興味があれば、お金をどんだけ費やしたとしてもとことんやる性格だ。母がたまにいい加減にしてくれと怒っていたことも度々あったが、その度に「人生とは短く儚いものだ。その間にやり残したことがあってはならん」と言っていた。
 そういう時は決まって母はため息をついて、ご飯の時はきちんとリビングに来るように。と一言残して書庫を出ていく。祖父は熱中してしまうと食事の時間や睡眠の時間を削ってでも趣味に没頭してしまう癖がある。
 それは俺でさえも心配してしまうほどにである。
 子供に余計な心配かけさせるんじゃないよ、じいちゃん。


「おお、海か! こっちへ来なさい。じいちゃんと一緒に本を読もうではないか」
「じいちゃんのご本はよくわかんないよ」
「はっはっはっ、そうか? じいちゃんがわかりやすく教えてあげよう」


 自宅の地下に作られた書庫は無駄に広く、おいでと呼ばれてもどこにじいちゃんがいるのかわからないほどだった。以前、母親に連れられて市立図書館という所に行ったことがあるのだが、その図書館よりも広く感じる。
 図書館にあった本棚は30、40程ぐらいだったのに対して、ここの本棚はゆうに100を超えている。
 どれも難しい本ばかりで子供向けの本などなかった。


 本棚の間を縫うように歩き、じいちゃんの声がした方へと進む。出来ることならばじいちゃんが書庫の入口まで出てきて欲しいところだが、俺自身こうやってじいちゃんを探すのは好きだったりする。
 迷路の中で目当てのものを探すのは達成感やワクワク感などがあるのだ。


「じいちゃん!」
「今日は早かったなぁ」
「じいちゃんの声が聞こえた方に歩いていったらいた!」
「そうかそうか。声の方向へと歩いたんだねぇ」
「? うん!」


 今日は書庫の1番奥に置かれている椅子にゆったりと座っていたところを見つけた。じいちゃんはいつも違うところにいることが多い。今日みたいに座っていたかと思うと、昨日は入口近くの本棚の所に立っていたり、この間は何故か本棚の上にいたりした。探す人間の手間を考えてくれなんて口が裂けても言えないだろう。


「今日は何を教えてくれるの?」
「いつか海が魔法を使えるようになった時のために、この世界の五大元素を教えてやろう」
「ごだいげんそ?」
「そう。この世界の多くの人間は五大元素というものを持つんだよ。お前の母さん、ひなたも五大元素の一つを持っているよ」


 じいちゃんは近くの本棚から1冊の分厚く、古くボロボロになった本を持ってきて開いた。
 俺もその本を見ようと背伸びをしたが、身長的に届かず見えなかった。何とかしてみようとする俺をじいちゃんは笑いながら抱き上げて、自分の膝の上へと乗せた。


「さて、どこから話すべきだろうな。この世界のことを」


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