魔法しかなかったから物理で叩いた

麦茶畑の緑茶園

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生まれた瞬間に決められた人生

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 この世界の魔法は五大元素を元に魔法を行使する。故に、五大元素を持つものは優秀な魔法士であり、国からの優遇もかなりいいものである。


 この国での五大元素は、火・水・木・金・土の五大。主によく見られるのが火と水と木の元素。この元素を持ったものは多種多様な職につけるとの話だった。


 次に金の元素は固定の職につくことになる。
 金は主に教会へと入る魔導師や治療行為を行う医療士になることが多い。俺の母も金の元素を持つものであり、仕事は医療士として働いている。
 父親はなんの元素を持っていたのかは知らない。


 土の元素は主に農産業に特化していると聞いた。
 土の元素持ちの人間が作る野菜や米はとても良質で、栄養価も高い。日本の食を支えていられるのは彼らのおかげだと言っても過言ではない。
 昔は国内で野菜を作っても、天候や湿度などによって収穫の難しい時期があったりしていたのだが、土の元素持ちの人間が携わることによって、収穫の変動はなくなった。


ただし、国内の土の元素持ちは一握りの人間しか居らず、万年人員不足なのが目下の悩みでもあった。


「ちなみにわしはなんの元素も持たんよ」
「え、持ってないの!?」
「元素は持たんよ。ただ、物をあっという間に直すことは出来るぞ」


 そう言ってじいちゃんは手に持っていた本をビリビリに破いた。
 突然のことに俺はえ?え??と困惑したが、じいちゃんは始終にこにこしていて、ますます意味がわからなかった。


「見てなさい。これが魔法の力だよ」


 じいちゃんがビリビリになった本に手をかざす。
 本の上に白い魔法陣が浮かび、魔法陣が本を通り抜けていく。通り抜けている間に本はビリビリに破かれる前と同じ状態に戻っていた。じいちゃんの言う通り、あっという間に本は綺麗に直されていた。


 俺は本を手に取りパラパラっとめくる。あれだけビリビリに破かれた本は何事も無かったかのように戻っていた。どこかに切れた後が残るわけでもなく。


「じいちゃんすごい!」
「逆にこれくらいしか持たないんだがな。五大元素を持たない魔力持ちの人間はこういうことに特化してるんだよ。でも、力では五大元素には勝てないがねぇ」
「力?」
「うーん……。最近、魔物という存在が現れてな? その魔物を退治してるのが賢者様や五大元素を持っている魔法士達なんだがな。この間、五大元素を持たざる者が魔物に襲われてなぁ。対抗しようとしたんだが歯が立たなくて……あぁ、でっかい化け物を倒そうと頑張ったんだが、負けてしまったんだよ」


 確かその話は聞いたことがある。というか、ほんとに最近の話。ここ数日の話題だったはずだ。
 母が忙しく動き回っているのもこれが原因だったはずだ。医療士として働いている母の元にくる急患はその負けてしまった人間なのだろう。


 魔物。
 世間を賑わす存在。魔力持ちの人間同様、いつから存在してたのかわからないほど昔から居た化け物だ。


 その強さもバラバラで、誰でも倒せる魔物がいたかと思ったら、五大元素持ちの人間でないと倒せなかったり。五大元素持ちの人間ですら危うい魔物も多数いたりする。膨大な魔力を持ち合わせ、尚且つ五大元素を全て使えた賢者でさえも敗北したという強大な魔物もいるらしい。


 そんな魔物が人が生活をしている街に出てきているというのだ。出処は未だに不明。気づいたらそこにいるとかというなんとも危ない存在。賢者でも魔道士でも魔物の出現を把握することは不可能で、魔物が出現してから魔法士を向かわせるという方法しかないらしい。


「魔物を探知できることが出来れば、皆の安全が確保されるんだが……それもまた難しいんだろうねぇ」


 五大元素持ちの賢者や魔法士ですら倒すのが難しい魔物を誰が倒せようか。
 もし、魔物がじいちゃんや母を怪我させたりしたら絶対に許さない。俺が魔物なんて倒してやるんだ!と心の中で息巻いていた。


 魔力を一切持たない俺にとって魔物は、一方的にねじ伏せられ、殺されるであろう存在でしかない。
 そんなことも考えずに、俺は母とじいちゃんは俺が守らなきゃいけないんだ、と誓っていた。
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