7 / 20
生まれた瞬間に決められた人生
5
しおりを挟む「海! おじいちゃん! ご飯できたわよー」
「はーい! 今行くー!」
書庫でじいちゃんとの話に夢中になっていたら、リビングの方から母の呼ぶ声が聞こえた。
じいちゃんは本を片付けてから行くから、先にリビングへと戻っていなさいと俺の背中を押した。
書庫の中をうろうろしながら出口へと向かう。
迷路のような部屋なのだが、もうかれこれ数年はここを行き来している。ある程度ならばどこに何があるとかを覚えてきているのだ。
確かこの辺の本棚には……。
じいちゃんがいた場所から少し歩いたところの本棚の本を一つ手に取る。表紙にはまだ読むことの出来ない漢字と、かっこいい機械の絵が描いてある本。じいちゃんはこの絵を写真だと言っていた。
かれこれ何百年も前の時代に使われていたもの。
物体や人物を写し取ることが出来る機械があったらしい。今では魔法で浮かび上がらせることが出来る為、写真とその機械はだんだんと無くなっていった。
じいちゃん曰く、今は簡単に浮かび上がらせることができるけど、昔の技術では相当難しいことだったとの事。細かく説明してくれたけど、じいちゃんの話は長く、意味わからない単語ばかりで理解できなかった。
今、俺が持っているこの本の中身も同じである。
難しい漢字ばかりで意味がわからないことばかりだが、挿絵として入っている絵を見ればなんとなくわかる。この表紙に描かれている機会のものが青い空を飛んでいる。こんな大きなものが果たして空を飛べるのだろうか。
空を飛び回るのは飛行魔法を持つ魔法士。それか、飛行石という特殊な力が宿っている石を使って飛ぶ方法しかない。それ以外での飛行方法は見たことも聞いたこともなかった。
「昔はどうやって空を飛んでいたんだろう……鳥さんみたいに翼があったのかな。それとももっと他に……いだっ!」
「こら! ご飯だって言ってるでしょう。早く来なさい」
「ご、ごめんなさい」
本に夢中になっていた俺の頭に落ちた雷、ではなくゲンコツ。いつまで経ってもリビングに出てこない俺を探して、母が書庫に入ってきていた。
腰に手を当てて仁王立ちしている母の頭には鬼の角が見えた気がした。とは口が裂けても言えない。
母に先にリビングへ行っててと言われる。本棚に本を戻して書庫から出ていこうとした時、書庫の奥の方で2発目の雷が落ちた気がした。
「……絶対おかあさんは怒らせちゃダメな気がする……」
母は強し。なんて誰が言い始めた言葉やら。
リビングから香る夕飯の匂いにお腹をぐぅ、と鳴らしながら、書庫のどこかで見た昔の本に書かれていた災難を払うためのおまじないをぶつぶつと呟いた。
「くわばらくわばら……」
0
あなたにおすすめの小説
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)
葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。
だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。
突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。
これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる