魔法しかなかったから物理で叩いた

麦茶畑の緑茶園

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生まれた瞬間に決められた人生

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「海! おじいちゃん! ご飯できたわよー」
「はーい! 今行くー!」


 書庫でじいちゃんとの話に夢中になっていたら、リビングの方から母の呼ぶ声が聞こえた。
 じいちゃんは本を片付けてから行くから、先にリビングへと戻っていなさいと俺の背中を押した。


 書庫の中をうろうろしながら出口へと向かう。
 迷路のような部屋なのだが、もうかれこれ数年はここを行き来している。ある程度ならばどこに何があるとかを覚えてきているのだ。


 確かこの辺の本棚には……。
 じいちゃんがいた場所から少し歩いたところの本棚の本を一つ手に取る。表紙にはまだ読むことの出来ない漢字と、かっこいい機械の絵が描いてある本。じいちゃんはこの絵を写真だと言っていた。
 かれこれ何百年も前の時代に使われていたもの。
 物体や人物を写し取ることが出来る機械があったらしい。今では魔法で浮かび上がらせることが出来る為、写真とその機械はだんだんと無くなっていった。


 じいちゃん曰く、今は簡単に浮かび上がらせることができるけど、昔の技術では相当難しいことだったとの事。細かく説明してくれたけど、じいちゃんの話は長く、意味わからない単語ばかりで理解できなかった。


 今、俺が持っているこの本の中身も同じである。
 難しい漢字ばかりで意味がわからないことばかりだが、挿絵として入っている絵を見ればなんとなくわかる。この表紙に描かれている機会のものが青い空を飛んでいる。こんな大きなものが果たして空を飛べるのだろうか。
 空を飛び回るのは飛行魔法を持つ魔法士。それか、飛行石という特殊な力が宿っている石を使って飛ぶ方法しかない。それ以外での飛行方法は見たことも聞いたこともなかった。


「昔はどうやって空を飛んでいたんだろう……鳥さんみたいに翼があったのかな。それとももっと他に……いだっ!」
「こら! ご飯だって言ってるでしょう。早く来なさい」
「ご、ごめんなさい」


 本に夢中になっていた俺の頭に落ちた雷、ではなくゲンコツ。いつまで経ってもリビングに出てこない俺を探して、母が書庫に入ってきていた。
 腰に手を当てて仁王立ちしている母の頭には鬼の角が見えた気がした。とは口が裂けても言えない。


 母に先にリビングへ行っててと言われる。本棚に本を戻して書庫から出ていこうとした時、書庫の奥の方で2発目の雷が落ちた気がした。


「……絶対おかあさんは怒らせちゃダメな気がする……」


 母は強し。なんて誰が言い始めた言葉やら。
 リビングから香る夕飯の匂いにお腹をぐぅ、と鳴らしながら、書庫のどこかで見た昔の本に書かれていた災難を払うためのおまじないをぶつぶつと呟いた。


「くわばらくわばら……」
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