魔法しかなかったから物理で叩いた

麦茶畑の緑茶園

文字の大きさ
8 / 20
生まれた瞬間に決められた人生

6

しおりを挟む


「いただきます!」
「好き嫌いせずに食べるのよ?」
「う……頑張る……」


 元気よく声をあげた後に母からの追撃。
 昨日、ピーマンを残したことに対しての言葉なのだろう。今日は何一つ残してはダメよ? という遠回しの注意。
 そういう日に限って、苦手な野菜が食卓に並んでいたりするのだから、母はきっと鬼だろう。


さっき角が見えた気がしたし。


 黙々と食べている俺を余所に、じいちゃんは食べている途中で箸を置いて立ち上がった。
 もぐもぐと口が動いているのが視界に入る。すかさず、母がじいちゃんに怒るが、じいちゃんは素知らぬふりをしていた。これはよくあることである。


 食べている途中でじいちゃんはよく席を外す。食事中に動き回るなんて、行儀の悪いことだと教えられている俺からしたら、じいちゃんのこの行動はかなり気になるものだ。
 じいちゃんは行儀が悪いということを自覚しているのだろうか? いや、ほぼ毎日と言っていいほど、母に怒られているのだ。そんなこと言われなくても分かっているはず。


 じいちゃんがこうして動き回るのは決して無意味な行動ではない。ただ、食事中にすることでもないだろうと思う。前もってやっておけば、母だってこんなに怒らないだろう。
 じいちゃんの段取りが悪いと言ってしまえばそれっきりだが。


「今日はこの映像にするか!」
「おじいちゃん、いつも言ってるでしょう。ご飯を食べている時はうろうろしないでって。海が真似したらどうするの?」
「海は頭のいい子だから真似なんてしないだろうよ。なぁ? 海」
「え……」


 突然俺に振られても困る。
 箸でつまんでいた米をポロッと零しながら、じいちゃんの方へと見やる。
 じいちゃんはにこにこ笑いながら、いつもの円盤を取り出していた。


 じいちゃんが他に持っている円盤。
 あれも、はるか昔に使われていたというもの。名前は忘れてしまったが、あの小さな円盤の中に映像が組み込まれているのだという。
 あの円盤だけでは映像を見ることは出来ない。円盤から映像を読み取るのに、特殊な機械を要するのだ。その機械も今となってはかなり珍しく、もうこの世界ではじいちゃんしかもっていないかもしらないという物。


 じいちゃんが円盤を機械の中に入れて、機械のボタンを押す。そして、天井に備え付けられている板を引っ張り出した。
 この板に円盤の中の映像を送ることによって映し出される。初めて見た時、板の中に人間がいるのか!? とびっくりした。
 それもまた特殊な機械ならしく、ただ映像を映し出すだけのものだというのを理解するのに時間がかかった。


「さて……これを見ながらご飯を食べるのが、楽しみってもんよ」
「まったく……そういうのはご飯を食べる前に準備しておいてよね」


 ため息混じりに母が呟く。すでに、映像に目を奪われているじいちゃんにはその言葉は届いていないが。
 じいちゃんが楽しみにするほどなのだから、きっと面白いものなのだろうと、俺も機会の方へと体を向ける。が、グイッと横から母に引っ張られて定位置へと戻される。


 見るならご飯を食べ終わりなさい。という顔でこちらを怒り顔で見ていた。
 やばい。また雷が落ちる。それだけは避けなくては。


「ご、ごめんなさい」


 とりあえず謝る。
 そのあとはご飯をかきこむようにして、平らげた。映像の続きが気になって、ゆっくりご飯を食べるのがもどかしいからだ。


 急ぎすぎて喉に詰まらせて、死にそうになったのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

処理中です...