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生まれた瞬間に決められた人生

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「海、明日は教会に行くから。今日は早めに寝なさいね」
「……うん」


 夕飯を食べ終わり、食器を片付けている時に母に声をかけられた。


 生まれてからこの方、年に一回は連れてかれる教会。教会では毎回、魔力計測をされる。産まれてすぐに俺は教会の魔道士によって計測をされたのだが、その時の魔道士には俺には一切、魔力を感じられないと判断された。


 それを信じていないのかなんなのか知らないが、母は毎年教会へと俺を連れていく。
 一度行った教会には絶対に立ち寄らない。毎回違う教会へと行くせいで、自宅近くの教会ではなく、地元からかなり離れた所へと向かうのだ。


 教会は地方によってその意味が変わる。
 俺達が住んでいる所から、遠く北の方の教会は水の五大元素に因んだ教会が多い。
 北の地方は海に囲まれている島国で、水との関わりが深い所である。その為、水の教会が作られたとか。


 そこから少し南に下りた地方では土の五大元素。その地域では良質な土が多く、作物を作るのに一番適していると言われている。
 その為、土の教会がある。


 俺達が住んでいる地方からぐっと南の方では、火の五大元素。
 昔、カグツチという火の神が信仰されていた地域で、火の五大元素を持って生まれるもの多く、火の教会が作られた。


 火の教会から少し北のところには、木の教会。山が多く分布しており、木が生い茂っているということから、木の教会が建てられた。
 初めて聞いた時は、他の教会よりも理由が軽くないか? と思ったが、じいちゃんから大人の事情だから深く突っ込んではならん。と言われた。


 そして俺が住むこの地域は金の五大元素の教会が多く点在している。
 金は主に医療士や魔道士などの人間であり、日本の首都と言われるこの地域に魔道士や医療士を配置すことにより、各地域への派遣が手間取らずに済むという理由らしい。


 各地にて多発する魔物の出現に対応するために作られた教会、というのが建前である。
 それまでは金の教会など作られておらず、必要ともされていなかった。


「何度やっても変わらないだろう」


 映像はもう見終わっているのに、未だに板の方を見つめていたじいちゃんがぽつりと呟いた。
 消え入りそうな声だったのにも関わらず、母はそのつぶやきを拾い上げていた。


「わからないでしょ? もしかしたら魔力が宿ったかもしれないじゃない。試しに行ってみるのだって価値はあるわ」
「そう言い続けて何年になる。もう諦めをつける時だろう」


 魔力なんてなくたって生きていける。
 そう言ったじいちゃんに母は突然怒鳴り声をあげた。
 初めて聞いた母の本気の怒りに俺はどうしていいかわからず、二人の言い合いを見ていることしか出来なかった。俺のせいでじいちゃんと母が喧嘩をしているのだと思ったからだ。


 二人の言い合いは日付が変わるまで続いていた。それまでじっと見ていたのだが、母が俺の視線にやっと気づいて喧嘩が止まった。
 すごく申し訳なさそうな顔で謝る母と、居心地悪そうにしているじいちゃんの顔を見て、俺は自分がこの世に生まれたのは間違いだったのではないのかと、その時初めて思った。きっと、父も母とこんな喧嘩をして出ていってしまったんだなと。


 魔力を持っていないということがこんなにも辛いだなんて思ってもみなかった事だった。
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